ウェザーニューズ 過労自殺事件後に労組結成も、“組合潰し”で委員長は解雇、組合員は「追い出し部屋」に
原告でウェザーニューズ労組委員長のディビットソン・ケイン氏(39歳) |
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- ただただ泣いていた過労自殺社員の友人
- 「仕事には愛がある」社内資料
- 労組結成直後、狙い撃ちされる組合員
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- だだっ広いフロアに組合員2人だけ配置してパワハラ
- 一審判決では組合潰しには一切触れず原告敗訴
ただただ泣いていた過労自殺社員の友人
原告のディビットソン・ケイン氏(実名、39歳)によると、ケイン氏が訴える事件の筋は二つある。一つは「組合潰し」、もう一つは「詐欺的な労働契約」である。まず、「組合潰し」とは、次のようなものだったという。
ケイン氏の出身はイギリス。同国で日本人と結婚して、子どもが一人いる。職歴は、イギリスでシティバンク、ドイツ銀行の社員として期限の定めのない契約で働いた後、03年から、日本の文科省の「JETプログラム」(外国語指導助手などを招致する事業)に採用されて、福島県で公立中高の英語教師を4年間務めた。
その後、東京に転居し、英語講師などを派遣するタイムライフ(現リンケージ)に就職し、都内の竹橋にある国際協力銀行で、英語講師をした。ケイン氏の当時の収入は、派遣で月約35万円程度。さらにここの労働時間は短かったため、ほかの英会話教室でもアルバイトをしており、その収入が月8万程度。当時の収入は月40万円を下ることはなかった。
その後、08年7月14日に、ウェザーニューズに入社した。賃金は月額36万円だった。(始業時間は8時半から18時半。休憩時間120分。休日は土日祝。年次有給休暇11日など。詳細は後述する)
ケイン氏の勤務先は、千葉県・幕張の「グローバルセンター」で、部署は「VPショップ」という組織内の、「OPA」というチーム。業務内容は、船舶走行のレポート作成や、顧客に対するQ&A業務などだった。主にケイン氏は、英語の顧客へのQ&A業務や、競業他社の情報収集を担当した。
ケイン氏の勤務時間は、常態的に、8時半から20時半ごろまでの約12時間。しかし、タイムカード上は、定時に退社しているように“偽造”して記録するよう、指示されていた。
ウェザーニューズでは、12時間労働という「短い時間」で仕事を切り上げる社員はほとんどいなかったという。「この会社は、UKでは考えられないような長時間労働が恒常的に行われており、時間外賃金も払われない。肉体的にも精神的にも、身体に不調をきたす従業員が続出している」。ケイン氏はそう疑問を持ち始めた。
そのさなかの08年10月2日、新入社員のA氏(25歳)が会社近くの自宅で自殺する事件が起きた。その後、千葉労働基準監督署は「過労自殺」と認定した。
だが、このような事件が起きてもなお、会社は、一向に労働環境を改めなかった。当時の情景を、ケイン氏はこう語る。
「新入社員の自殺が発覚した1日後、社内でそのことについて話すことは禁止されました。その社員がウェザーニューズで働いていた、という職歴や経歴はすべて抹消されて、まるで今までいなかったかのような対応を会社はとりました。亡くなったその社員と仲が良かった同僚は、机に座って、ただただ泣いていました」
「仕事には愛がある」社内資料
過労自殺事件から約半年後に作成した社内資料 |
会社は、A氏の過労自殺の約半年後の09年5月21日付で、超過勤務に対する言い訳めいた社内資料を作成し、社員に提示している(左記参照)。
それは
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上はウェザーニューズの求人画面。「正社員」募集とある。下は会社が内定直後に送った文書
入社から3年後に突然、会社が示したケイン氏の契約書の別紙。別紙は当の本人も見たことがなかった
湯川副社長が指し示したハンドブックのページ。雇用形態は「Unlimited」と記載
上は雇い止めの翌日出社すると会社に通報されて警察が来た時の様子。下は組合員2人をパワハラするための追い出し部屋
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読者コメント
労働事件なのに一審判決敗訴なんて、労働法に守られていはずおかしい。ケイン氏だけが解雇、そのほかの方々はいかがになったのでしょうか。ほかのマスメデアを検索したのですが労働組合系のものしか出て来ないよです、公正な立場で報道してほしいと強く思います。
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