大王製紙 内部告発で懲戒解雇になった社員の裁判があぶり出す「井川家VS現社長」の泥沼権力闘争
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原告伊香田氏(仮名)が金融庁、東京証券取引所、大王製紙の監査法人などに送付した告発文書(紙業新報13年2月1日号より) |
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訴状や準備書面、証拠書類などによると、原告の伊香田泰雄氏(仮名、50歳)は、1986年に大王製紙に入社。以後、秘書室秘書課、総務課課長代理などを経て、2000年以降は、グループ会社の「エリエールテクセル」取締役総務部長、中国の「全王衛星用品」の総務部課長、ベトナムの「サイゴンペーパー」の経理部長代理などに出向。
そして、3代目・井川意高が逮捕された翌年にあたる12年9月、東京本社に戻り、経営企画部課長に就任した。事件はそこで起こった。
原告準備書面によると、同月の取締役会で、タイ子会社であるエクセル・インターナショナル・タイ(以下、ETI)に対する投融資を決議したが、その後、井川英高専務(2代目の弟)から、伊香田氏のいる経営企画部に対して、こう指示があった。
「タイ国を含め、海外事業の状況を調査しろ」
翌10月3日、伊香田氏は、西川経営企画部長(当時の執行役員)らと調査し、報告書を作成。報告書の要点は、以下のものだった。
2 12年6月に10,000千枚/月超の販売量になったが、7月以降、従来の6,000千枚/月に戻った。
3 テレビCMの効果で、9月は7,400千枚/月に伸びたが、月末在庫は約31,000千枚と約4か月分に膨れ上がった状態。
10月14日、伊香田氏は、西川部長らとともに、そのことを井川英高専務に報告。すると井川氏は「さらに詳しく調べるとともに、(大王製紙本体の)佐光社長にも報告しろ」と命じた。
10月11日、伊香田氏は、海外営業部部長代理のО氏からメールで、「ETIは販促費、広告宣伝費を発生主義でなく、現金主義で費用計上している。また、販売管理費の計上誤りが多発している」と連絡を受けていた。
(企業会計は発生主義が原則。参考:記帳代行サービス)
そして10月25日、取締役会で伊香田氏は、H&PC事業部のF副事業部長から、こう言われた。
「ETIは証憑書類紛失のため、11年12月期決算で監査法人の適正意見を行っていない」
「また、製造・販売は、12年2月だが、棚卸資産の実地棚卸をしていないため、12年決算には大問題がある」
翌10月26日、伊香田氏は、井川専務にそのことを説明したところ、井川氏は、こう言った。
「11月の、次回の経営企画会議に、改善策を提示させることにしよう」
11月14日、その経営企画会議があった。そのとき伊香田氏は、ベトナム出張で欠席し、同月26日に帰国。会議の内容がどうだったのか社員に聞いたところ、ETIについては、さしたる進展がなかったことを知った。
12月7日、伊香田氏は、経営企画部部長代理のK氏とともに、ETIの松島社長らとテレビ会議を行った。そこで、以下の事実が明らかになった。
2 ETIは、販促活動の活動実績、費用請求、支払いを十分に管理できておらず、現地の小売店が思い出した頃に行う、販促費の請求に対して、支払い対応をしており、財務管理に問題があること。
3 ETIの過年度である11年12月期決算については、現地監査法人から「70%適正との意見」を12月12日までにもらうようにすること。
4 ETIでは、紙おむつの製造機械を、株式会社瑞光に対し、12年2月に発注内示していたが、その支払いは一部猶予してもらっていること。
5 ETIの大王製紙における連結決算への組み入れは、14年12月期からにすること。
12月10日、伊香田氏は、これらを報告書にして、井川専務に提出したところ、こう指示された。
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上:エリエール 下:佐光正義社長(11年6月29日に就任)同社HPより ![]() |
「12月17日の週に、伊香田を含む4、5名のメンバーでETIに出張し、実態調査をするので準備しろ」
だが12月12日、伊香田氏は、井川専務からこう言われた。
「タイでのETIの調査は、来年1月に延期することになった。そのときは自分も行く」
井川専務自身も行く、との言葉に、伊香田氏は、改善を期待した。
そして12月14日、伊香田氏は、「ETIの調査に先立って、紙おむつの原価計算を理解するため、エリエールペーパーテックの工場で研修すること」と井川氏から指示を受け、同月17~20日まで、同社の喜連川工場、富士北山工場に出張して研修を受けた。
その後、伊香田氏は、ETIの調査に向け、資料整理などの準備を進めた。
しかし12月26日、突如、伊香田氏は、西川部長から「ハリマペーパーテック株式会社の、経理部門の強化のために、1月1日付で、取締役総務部長兼総務課長として出向してもらうことになった」と命じられてしまったのである。(※ハリマペーパーテックとは、大王製紙のグループ会社で兵庫県加古川市にある)
有価証券報告書に虚偽報告の疑い
伊香田氏は、この人事に不審感を抱いた。しかも、会社の疑問点は、ETIの不正経理以外にもあったのだ。それは次の経緯で知ることになった
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上は24年度第2四半期決算短信(連結)。下は25年3月期決算短信(連結)。同社HPより
井川高雄氏と、伊香田氏の告発全文(紙業新報13年1月11・21日号、2月1日号、2月11日号より)
伊香田氏の内部告発について記載した、北越紀州製紙と大王製紙のプレスリリース
降格処分、懲戒解雇の処分書の概要(※筆者が裁判資料をメモして作成したもの=コピーや撮影はできないため)
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読者コメント
出向、左遷・・・この前最終回を放送した半沢直樹の世界みたい。
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