三井住友海上の不正鑑定疑惑 社員がコンプライアンス求め内部告発→左遷・パワハラ→定年後に提訴
今から四半世紀前に内部告発して以来、定年まで社内の不正を告発し続けた西野大翔氏(61歳、仮名)。都内にて撮影 |
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- 傍若無人なデタラメ鑑定人との出会い
- 告発した途端、四国へ異動「お前を抹殺してやる」上司
- 同業者の株主総会で告発→「定員外社員」→万年最低評価
- 監視、暴行、仕事取り上げ…パワハラの日々
- 「回答は控える」三井住友海上火災保険、「無回答」三和鑑定
傍若無人なデタラメ鑑定人との出会い
原告の西野大翔氏(61歳、仮名)は、1975年に首都圏の国立大学の工学部を卒業後、三井系列の大正海上火災保険(現在の三井住友海上火災保険)に入社した。配属部署は本社損害調査部・火災課だった。
もともと火災保険会社を希望していた西野氏は、使命感をもって働いていた。そんな西野氏は88年4月、大阪の関西損害調査部・火災新種1課に課長代理として赴任。そこで、異様な風景を目の当たりにした。
取引業者である三和鑑定の鐘ヶ江という鑑定人が、机付きで社内に常駐しており、若手社員に傲慢な態度で威張り散らしたり、名前を呼び捨てにしたり、時々頭をひっぱたいたりしていたのだ。
そもそも鑑定人とは、損害保険会社から委託を受けて、損害保険に関わる財物(建物・家財等)の損害額算定、事故原因の調査などを行うのが仕事だ。いわば保険会社にとって、鑑定業者は下請けの立場。本来なら鑑定人の鐘ヶ江氏は、保険会社と対等か、むしろ腰が低い立場なのだが、傍若無人に振舞っていた。
さらに、唖然とする事態に遭遇した。
西野氏が大阪に転勤して数か月後、山陰地方で洪水があり、東芝系列の企業の倉庫の電化製品が水漏れ事故に遭い、数千万円の被害を出した。その査定のため、西野氏は、鐘ヶ江鑑定人と一緒に事故現場に行った。
通常、鑑定人は、事故現場では、現場の図面を書き、どこがどんな損害を受けたのか、査定していく。しかし、鐘ヶ江鑑定人は、図面も書かず、手を後ろ手に組み、ぶらぶらと現場を歩きまわるだけだった。
後日、鐘ヶ江鑑定人が提出した鑑定書は、保険契約者の東芝系企業が出した修理見積書や損害明細書を、丸写ししただけのものだった。
しかもその鑑定書をよく見ると、水漏れした商品の損害額は、小売価格で算定されていた。この東芝系の企業は小売店に卸す問屋なので、仕入価格で算定する必要があるにもかかわらずだ。
そこで西野氏は、再度調査するよう言った。すると鐘ヶ江鑑定人は、「こんなもんだ」と言うばかりだった。最終的には、顧客から「保険金が高すぎるのではないか」と指摘され、鐘ヶ江氏は鑑定書を改めていたという。
告発した途端、四国へ異動「お前を抹殺してやる」上司
さらに同年6月14日には、栃木県矢板市のシャープの工場で、雹(ひょう)により被害額10億円の水漏れ事故が発生した。こうした保険金額の大きい契約は経営に影響を及ぼすため、複数の保険会社が分担する「共同保険」の形をとるケースが多い。
このシャープの事故も共同保険で、大正火災保険が幹事社になっていたため、西野氏と鐘ヶ江氏が、損害調査に赴いた。そのとき、現地で、共同保険会社の1つ安田火災(現在の損保ジャパン)の担当者と会った際、西野氏はこう言われた。
「鑑定人が鐘ヶ江鑑定人だとしたら、当社は鑑定料を分担しないかもしれない」
上司に提出した告発書 |
この発言は、要するに、幹事社が不適切な査定をしそうなので、自社の引き受け分は独自に損害調査をする、という意味だ。
通常、共同保険は、幹事社が代表して損害調査をするので、このようなことは言わない。つまり、こんな言葉が出てくるくらいに、鐘ヶ江鑑定人のずさんな仕事ぶりに対する不信は、業界内に広く浸透していた。
その後も、損害額の大きな事故になると、必ずといっていいほど鐘ヶ江鑑定人に発注が集中した。少額事故の場合は、どの鑑定人を依頼するかは担当者が決めていたが、大型事故が起きると、決まって上司が鐘ヶ江氏を指定したためだ。
鐘ヶ江鑑定人の目に余る所行をみて、西野氏は、これ以上看過できない、と考えるようになっていった。
「もともと損害保険業は、事故に遭った被災者の生活の安定に寄与することが、社会的使命です。そのため、保険業法には、健全で公平な運営をするよう定められています。このような準公益的な仕事なのに、鐘ヶ江氏は、ずさんな査定によって高額な保険金を支払わせて、会社に損害を与えています。私は会社の利益を守るべく、告発に踏み切りました」(西野氏)
西野氏は、鐘ヶ江氏の不正をなんとかしてほしい、と上司に訴えた。
すると、直接の上司だった久保田課長は、こう罵倒したという。
「お前を査定部門から抹殺してやる」「一生昇進できないようにしてやる」
本社の損害調査部門の管理職に電話すると、こう言われた。
「お前は組織と組織の付き合いというものを知らない」
そこで西野氏は90年10月ごろ、損害調査部の高品部長、高田副部長に対し、意見書(左記画像)を提出して改善を訴えた。その後、高品部長が、三和鑑定事務所と協議をした。しかし、結局、「これからもお互い協力し合って一緒にやっていきましょう」ということになり、現状維持となったという。
91年2月末、西野氏は、四国損害調査部・火災新種課(香川県高松市)に異動が決まった。異動発表の後、西野氏は高品部長に別室に呼ばれ、こう告げられたという。
「君を守ってやりたかったが、本社の意向に逆らうことはできなかった」
同業者の株主総会で告発→「定員外社員」→万年最低評価
高松市に赴任後、西野氏は93年4月1日付で、今度は、本社の東京損害調査部・火災新種課の課長代理に任命された。
そして94年に入り、西野氏は、複数の同業他社の株主となり、株主の権利を行使して、各社に対し、鐘ヶ江鑑定人の杜撰な仕事により、各保険会社も共同保険で莫大な損害を被ることがある点を指摘した質問状を送付し始めた。
株主の立場で同業他社に送付した告発書。タイトルは「悪質鑑定人業務依頼の差止請求の要求」 |
すると95年春に、西野氏は仲山課長に呼ばれて、こう聞かれたという
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三井住友海上火災保険本社(〒104-8252東京都中央区新川2-27-2)
訴状。全文は記事末尾からダウンロード可
三井住友海上のCM(同社HPより)
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ただ単にいい加減なだけなのか?保険多く払って鑑定人個人にメリットあるんだろうか?出た保険金が上層部の特定の個人に還元される仕組みが会社自体にあったんかね?
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読者コメント
匿名希望さんへ 本件訴訟および三井住友海上のコンプライアンス違反に関する『三井住友海上はコンプライアンス・ブラック企業か?』というホームページを立ち上げました。この題名で検索すると、詳しい訴訟内容や三井住友海上の数々のコンプライアンス違反、さらに原告関係者と連絡のできるメールアドレス『contact@compliance55.com』が、そのホームページからわかりますので、そちらにメールください。メールですので、他の人間に知られることが無く、当事者間のみで会話ができます。
匿名希望さんへ こちらの訴訟の事件番号は、「平成24年(ワ)第36778号 損害賠償請求事件」です。そちらの訴訟の事件番号を至急教えてください。これをもとに裁判所で訴状を閲覧してお互いの連絡先を確認して連絡を取り合うことができます。
保険業違反した社員が合法だと言う証拠として今月「陳述書」を裁判所に提出する予定だそうです。保険業法違反しているのに 何を陳述するのか?意味が分かりません。
わかります。こちらの裁判でも 三井住友海上が保険業法違反を社員がしていて 裁判所に証拠も提出しているのに「違法では無い。合法だ」と言っています。現在 金融庁にも告発もしております。証拠もあり 認めなければ行けない 反省しなければ行けない案件を必死になり 会社ぐるみで 隠蔽しようとしています。保険は安心を売る会社です。こんな会社 社会的に必要のない会社だと 私は思います
匿名希望さんへ 都合の良い日時をいくつか教えてください。待ち合わせ場所をこれに書き込んで本件訴訟の原告を紹介します。匿名希望さんの書き込みに「三井住友海上は 支離滅裂 意味が分からない事ばかり言っています」と記述してありますが、こちらの裁判でも、「鐘ヶ江鑑定人はまともに仕事をしない」という原告の主張に対して、「火災鑑定人は、火災現場で特に詳しい損害調査はする必要は無い」と被告の三井住友海上は損害保険会社として自殺行為ともいえるとんでもない主張をしています。
有難うございます。是非力を合わせたいと思いますが 12月3日は都合が悪く申し訳ありません。現在 大手新聞社が興味を持って頂いています。
匿名希望さんへ 三井住友海上はこの訴訟の原告が加わったもうひとつの裁判「賃金搾取訴訟」を起こされています。その判決が12月3日午前10時に、東京地裁636号法廷で言い渡されます。その時に法廷に来れば、本件訴訟の原告にも会えます。是非来てください。情報交換を行いましょう。
行政には 受理されて 現在 調査中なのだが 握り潰されるのではないかと 心配しております。その 為にメディアが必要かと思う今日この頃です。皆さん お知恵を貸して下さい
裁判 やっていますよ。三井住友海上は 支離滅裂 意味が分からない事ばあり言っていますよ。法律違反を数々やってる事の証拠も持っていますよ。 嘘つき三井住友 弱い部下に罪を擦り付けて くびにされた 思い絶対に許さない。許さない。法律違反をしたのは 三井住友海上だ
その後どうなったのですか?気になります
私も社員です。有難うございます。
匿名希望さんへ マイニュースジャパンの会員になれば原告の告訴状が読めます。それにより原告が依頼した弁護士の連絡先がわかりますので、原告と連絡を取ることができます。匿名希望さんも、コンプライアンス・ブラック企業、三井住友海上と戦ってください。
株主有志より匿名希望さんへ コンプライアンス・ブラック企業、三井住友海上はまた人事に関するコンプライアンス違反の訴訟を元社員より提訴されました。
本件の悪質鑑定人問題とその新たに提訴された訴訟を逐一報告するホームページを株主総会前にアップする予定ですので、楽しみにしてください。
その後 どうなったのですか?三井住友海上火災保険は 酷い会社です。私も 三井住友海上火災保険と 今年から戦います。お互い 頑張りましょう
コンプライアンス・ブラック企業の三井住友海上は、この訴訟が提訴された後も下請けである悪質鑑定人、悪質鑑定事務所の鐘ヶ江鑑定人や三和鑑定事務所に仕事を依頼しているであろうか? まさかそんなことは無いと思うが?
インターネットにより鐘ヶ江鑑定人や三和鑑定事務所との異常な癒着をこれだけ世間に広く知られたにもかかわらず、もしまだ三井住友海上は業務を依頼しているとしたら、ますます何か表に出せない裏のやましい理由で異常に癒着していると誰でも思うだろう。
いずれにしても、三井住友海上の「半沢直樹」がんばれ!!
西野大翔氏は、まさに三井住友海上の「半沢直樹」。三井住友海上のコンプライアンス違反鑑定人との異常な癒着、三井住友海上の虐待人事と四半世紀も戦い続けたその不屈の闘志は、まさに実在の「半沢直樹」そのものである。悪質な鐘ヶ江鑑定人、三和鑑定事務所と異常な癒着を続け、英国子会社問題でも不祥事を隠蔽し続ける三井住友海上は、まさに「コンプライアンス・ブラック企業」である。がんばれ!三井住友海上の「半沢直樹」!
こんな悪質な鐘ケ江鑑定人と三和鑑定は、損害保険業界から即刻追放しろ!!
三井住友海上を利用する消費者にとっては糞鑑定人のためにお金を支払っているのでは断じて無い。このような対応を決定した人間たちを許してはいけない。
「どう考えてもその鑑定人はその会社の恥部を握っていたとしか思えない対応なんだよなぁ。気になる。」とのツイートが、えこりんさんからありましたが、確かに。もう一つの見立ては本文末尾の通りです。
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