ＶＨＳから、DVD/HDDレコーダーに買い換えようと思っている。テレビで映画を見ていると、いいなと思うシーンからいきなりＣＭへ、そのＣＭも音が大きい、おまけに誇大ＣＭもあるから、うざったい。

　広告は目立つことが第一の使命なのはわかるが、録画後、見なくていいものはスキップ、スキップ。カット、カット。これが今回の商品購入の第一理由だ。

　ホリエモンことライブドア堀江貴文社長も、〔ＣＭを飛ばして録画した番組を見ることが技術的に可能になってきているから、近い将来は民放のＣＭなんて見ないのが当り前になる。だから民放のビジネスモデルは抜本的な修正を迫られる〕、なんてことを方々で言っていた（著書『稼ぐが勝ち』及び雑誌記事より）。

　「CMカット/スキップ」機能があるDVD/HDD商品のことをビックカメラで聞いてみた。

「お客様のご要望にそった、自動的に最初からＣＭをカットできるもの、完全にＣＭをカットできるものはないですね。いちばん近いかなと思うのは、ソニーのおまかせチャプター機能がついた商品です」

チャプターとは映像の区切りのこと。再生や編集で見たいシーンを呼び出すときに、そのチャプターごと飛ばせる。わたしにおすすめだといわれた『スゴ録』は、ソニー独自のシーン解析アルゴリズムを採用。おまかせチャプターは、無音・モノラル・ステレオなど音の切り替わり、場面が大きく変化する映像の切り替わりを自動的に検出し、チャプターを作成してくれる。見たいシーンだけ残し、ＣＭをカットした編集も簡単にできる。

　「お客様のようにＣＭはいらないといったご要望も多いですが、逆に、このタレントのこのＣＭだけは残したいという人もいます。わたしの経験だと、だいたい４時間の特番でＣＭをカットすると、３時間半くらいになりますね」と売り場の人は言っていた。

　そもそも、最初から自動でＣＭをカットした状態で録画してくれる機能がついたDVD/HDDレコーダーが発売されても、全然おかしくはない。

ソニーにも聞いてみた。

－－ソニーのおまかせチャプターをビックカメラの人にすすめられたんですが、最初からＣＭをカットできるものがあればいいかなと。今後、出ないんですか？

「そういった新機種の情報は入ってきていません」

－－でも、そんな商品が出たらソニーのＣＭまでとばされてしまって困りますね。
　この問いかけには笑われてしまった。

　スキップ機能は“想定内”であるホリエモン。

それに対して、「ハードディスクレコーダーが普及しており、“ＣＭスキップ”は今より激しく行われると思うが、どうしたらＣＭを見てもらえるかを民放連で話し合っているか」の質問に、日枝久（フジテレビ会長）は、日本民間放送連盟会長の立場でこう答えている。

　「著作権と著作隣接権を有しているから、放送されたものと録画されたものは同じであることを求めており、録画する際に、機械がＣＭを自動的に飛ばし、放送内容と変えてしまうことは、いかがなものかという意見もある」（民放連の定例記者会見、2004年11月12日）。

想定外のことに、対抗手段をがんばって考えるタイプの日枝会長だが、この発言は「スキップ機能は著作権侵害だから、とにかく外してほしい」と聞こえるし、ＣＭを自動的にカット録画できるDVD/HDDレコーダーの技術革新を妨げているのではないか。

　そういえば、おまかせチャプターがついた「スゴ録」を田村正和を使ってばんばん宣伝していたのは昨年11月頃。この発言、 ソニー への圧力だったのか？と勘ぐりたくなる。

　著作権侵害の問題については「CMカットがメーカーとして違法であるかどうかコメントする立場にない」とソニーが答えていた（『ASAHIパソコン』2004年12月15日号）。

　旧来型のＣＭ収入によるビジネスモデルを守りたい日枝会長、根本的なビジネスモデルの変革を迫りたいホリエモン。ここでも両者の意見はわかれるようだ。

　わたしのような、ＣＭはいらないや、という利用者のニーズがもっと増え、儲かると分かったら、メーカーも動き出すのだろうか？