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ソニー(2004)

情報提供
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Baa:優良企業予備軍
(仕事5.0、生活2.3、対価4.8)
 新機種が華々しく発売されていく裏で、開発現場の労働実態は厳しさを増している。2003年3月、ソニーの独身寮で、携帯電話の開発を進めていた若手社員が亡くなっているのが発見された。外部の人間が入れない状況での、首吊り自殺だったという。

まだ20代半ば、入社2年目を迎えようかという時期だった。生前の彼を知る社員は、「普通に明るいヤツだったので意外だった」と驚きながらも「精神的に追い詰められていたのだろう」と一定の理解を示す。

(2.3 :悪い)

別の社員も、入社当時、「ウチは、自殺は多いよ」と先輩から聞かされたが、事業部で製品化プロセスを担当している開発者の激務を知り、あってもおかしくないな、と思ったという。

ソニーが手がけるパソコン、デジカメ、携帯電話といった分野は、次から次へと新機能が盛り込まれ、製品サイクルも短くなる一方だ。3ヶ月ごとに新機種の発売を求められるなか、必然的に、スケジュールが最優先事項となる。製品の発売日は決まっているから、現場の個人の事情など考慮していられない。時間のプレッシャーは、とにかく強い。

新製品の設計から工場で量産体制を構築するまでの、R&Dの最終プロセスを担当する開発者は、忙しいときは朝8時半から深夜0時くらいまでの長時間勤務が連日続き、深夜3時まで勤務することも珍しくない。しかも、実験が中心なので、基本的に「立ち仕事」が多く、体力的にも限界に近づく。

独身寮に入る若手社員は、寮と会社の往復だけで毎日が過ぎ、外の世界とも遮断される。時間に迫られる精神的プレッシャーと長時間勤務による肉体的な限界、そして、プライベートな時間も十分に持てず、ストレスが積もり積もって、追い詰められていく。

自分で生活をコントロールできないため、家庭が崩壊している人は多く、離婚者も実際に多いという。現場の労働環境と自殺者の実態については、会社側としては社員に対して事実は公表しておらず、同僚など身近な人を通して流れるだけなので、本当のところがつかめない不安感もある。本来、社員の立場で実態を明らかにすべき労組も、そもそも同社では労組への加入が自由のため組織率が低いこともあり、機能していないようだ。

会社としては、残業が月60時間以上になった社員に月ごとに健康診断を受けさせるなど、健康管理を支援してはいるが、過労死の防止効果はあっても、メンタル面に起因する自殺の場合は健康診断では表面化しづらい。「自殺しそうな人の場合、そもそも健康診断に出向かないはず」(若手社員)と、あまり歯止めになっていない模様だ。

    ◇    ◇    ◇

残業は、だいたい20代後半まで(職級が「グレード3」と「グレード2」)の若手社員のうちはつけられ、月35時間までは上司の許可なくつけられる。申請すれば、それを超えて月65~90時間までつけられるなど、部によって申請できる上限が決まっている。ただ開発現場では、実際には多くの社員が、100時間は残業をしている。

もちろん、1年中、忙しい訳ではなく、繁閑はある。開発フェーズごとに、忙しさの波(ピーク)がやってくる。波がない時期ならば、夏休みを2週間とる人も普通にいるし、暇な時期は昼から出勤してくるなど、自由さもある。自分の仕事さえこなしていれば、休むことを悪とするカルチャーはない。とはいえ、やはり全体で見れば、有給休暇は消化し切れないのが一般的という。

連続休暇については、フレックスホリデー制(皆が一斉に休むのではなく、各自が都合の良い時期を選ぶ)で「連続2週間取得を推奨」とされている。しかし、結局とれないことのほうが多い。12月中旬からオフィスの人が少なくなることもある。開発の場合、販売とは異なり、年末が特に忙しいという事情はないため、年末年始にまとめてとるのだ。

    ◇    ◇    ◇

カンパニー(事業部)の開発者が製品化スケジュールによるプレッシャーにさらされるのに対し、カンパニーに所属しない研究所(北品川に集積する「ソニーR&Dラボラトリーズ」)の研究者は、自発的に何かを生み出さねばならないプレッシャーを受ける。大枠の研究領域は決まっているが、その中で自分が何を研究するかは自分次第である面が強い。時間をかければ生み出せる訳でもないので、研究者としてのセンスが問われる。

勤務地は、やりたいことで、だいたい決まってくる。ソニーは営業・マーケティング機能を「ソニーマーケティング」として分社化し本体と切り離している。本体には地方支社が少ないため、勤務地は東京近辺、それもいわゆる「品川周り」が仕事場の中心。工場との行き来が多少あるくらいである。

文系出身の場合、海外生産や開発過程における提携などで、海外出張・海外勤務の機会が、若手でもある。理系出身の開発者の場合は、海外勤務はほとんどなく、したがって英語を使う機会もほとんどない。

社内の人間関係は、課長によっても異なるが、概ね良好。部下を呼ぶ際も「君付け」「さん付け」が基本。学閥もなく、そもそも出身大学などは皆が気にしていない。人間関係がフラットで、年齢に関係なくイニシアティブをとれる雰囲気がある。

日本的な「会社人間」は少なく、「社歌はあるらしいが、誰も聞いたことがない」といった感じ。毎日のように部長と部下が飲みに行く、といった純日本的な風景は見られない。

もともとドライなカルチャーであるため、会社としては制度的に社員間の交流促進を支援している。例えば、部内で一定以上の参加率のイベントを企画すれば、1人あたり15,000円程度の補助が出る。具体的には、部で「レク委員」が決められ、ホテルで食事をしたり、温泉旅行にいったり、といった企画を立てて実行される。

理系出身者が圧倒的に多いため、女性社員はそもそも少なく、女性は派遣社員が多い。「女性が係長になった」というのが社内でニュースになるくらいで、職場は男臭い。育児休職者はいるが、絶対数が少ないので目立たない。

自分のポリシーを持ち、能力があり、やりたいことを伝えられれば、「おおよそ、だいたい」やりたい仕事はできる。手を挙げれば、比較的受け入れやれやすいカルチャーだ。このため、個人のモチベーション(動機)という点では、精神的ストレスは溜まりにくい。

(4.8:非常に良い)

ソニーは2004年4月から、係長以下の一般社員約1万2,000人の家族手当や住宅手当を廃止し基本給に一本化した(約6,000人いる管理職については2000年に廃止済み)。具体的には、仕事の内容によって3つの「グレード」に再定義し、段階的に給与の差を付けた。

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20代後半の給与明細

高専卒・学部卒では、最も低い「グレード3」からスタートする。最も人数が多いマスター卒の場合、一応、「グレード3」スタートだが、2年目には「グレード2」に上がる。「グレード2」までは残業代が付くので、忙しい部署では基本給より残業代が多くなることもある。「マスター出で数年目にサラリーが月額50万円を超えてびっくりした」といった話はゴロゴロしており、「グレード2」で年収600万円を優に超える。

成果さえ認められれば、「グレード2」から「グレード1」へ、20代のうちに上がることも可能。「グレード1」社員は、完全に裁量労働制(部署によっては「グレード2」から)が適用され、時間の概念はなくなる。制度上は、1日15分会社にいれば良い。ベースとなる給与が一気に上がるため、年収は「グレード1」の最低水準でも800万円弱となる。

制度上は、毎年の査定次第では、1→2への降格もある厳しい仕組みとなっているので、気を抜くことは出来ない。ただ、まだ運用が始まったばかりなので、実際に降格があるかは分からない。

ある部門では今年1月後半、人事からの説明会が開かれ、3月初旬に課長が社員の自己申告シートをもとに面接をして、各自のグレードが決まっていった。自己申告シートの審査は、直属の上司(課長)だけでなく、その上部組織の上司(部長)、および人事部が絡むこともあったが、筆記試験の類は実施しない。

結果、20代の若手社員の多くが、4月から年収水準が1割程度上がり、「モチベーションが高まった」と概ね歓迎されている。一方、管理職リーチとなる「グレード1」の年齢層は、30歳前後から40歳前後までと幅広いため、30代半ば以降で管理職になっていない係長クラスの社員で、3月まで残業をたくさん付けられていた社員のなかには、年収ベースが1割下がった社員もいたようだ。

係長クラスだった地方出身の社員(30代半ば)は、福利厚生を含めた実質の年収ベースで約1割も減った。昨年度まで平均で月60時間は付いていた残業代が、裁量労働制の「グレード1」となったことで固定化(月15~20時間)され、月額約2万円貰っていた住宅手当も廃止

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