歳末越冬救援キャンプを襲撃し、重傷の生活困窮者を厳寒の路上に叩き出した「福祉のまち」シブヤの野蛮行政
渋谷区宮下公園に開設された生活困窮者救援キャンプからボランティアや路上生活者を強引に追い出す渋谷区土木清掃部職員と警官隊。頭の骨にヒビが入った重傷者もいた(上はVJU撮影映像より。下は楡原民佳さん撮影。2013年12月29日深夜)。 |
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- 大マスコミが黙殺した救援キャンプ「襲撃」
- 別の公園に「避難」した避難キャンプ
- 寝込みを襲った警官隊
- 行政がサボっているから救援活動しているのに
- 「強制排除」ではありません
- 「警察が実力を使ったこともない」
大マスコミが黙殺した救援キャンプ「襲撃」
昨年12月29日深夜10時半。渋谷区の宮下公園に開設されていた経済困窮者向けの救援キャンプに渋谷区職員と警官隊多数が襲い掛かり、支援者とともに避難者を寒空にたたき出した――この話を筆者が聞いたのは30日午後。新聞・テレビではなく口コミだった。ツイッターやブログ、インターネット中継で話題になっていると知人が教えてくれたのだ。
VJU(ビデオジャーナリストユニオン)の撮影した動画がネット上に公開されていた。――深夜の公園で数十人の炊き出しボランティアや支援者と警官隊・職員が激しくもみあっている。「人殺し」「暴力反対」。怒号と悲鳴。とうとう警官隊はボランティアたちを公園の外に押し出し、周りを囲んだフェンスの門を力づくで閉じ、かぎをかける。
大事件だ――映像を見て筆者は思った。「助け合い」の声が街角で聞かれる年の瀬に、路上生活者を救援しようとボランティアが設置した救援キャンプを暴力的にぶち壊す。しかも厳寒の深夜である。前代未聞の暴挙ではないか。
中米ニカラグアの首都マナグアで、貧民街を警官隊が取り壊した様子を伝えた写真(1993年、筆者撮影)。 |
似た光景を見たことがあった。20年前、北半球の最貧国といわれていた中米ニカラグアでのことである。
1993年、筆者はニカラグアを取材で訪れた。当時の同国は親米政権下にあった。社会主義国の支援を受けたサンディニスタ革命政権のオルテガ大統領が1990年の選挙で敗北、代わりに、親米チャモロ大統領が誕生した。貧困と内戦からの「変化」を望んだ国民の選択だった。結果、内戦は終わった。しかし貧困は相変わらずで格差が広がりつつあった。
このような庶民の窮状を首都マナグア市で取材していた筆者は、ある朝、現地新聞の一面記事と写真に目を奪われた。ダンボールや廃材、トタンで作った貧民街の家々を警官隊が壊している様子が衝撃的なトーンで伝えられていた。
現場に行くと、板切れやダンボール紙が散乱するなか、追い出された住民たちが鍋や食器などを拾い集めていた。地主の要請を受けて警官隊が追い払ったということだった。いったいどこに住めというのか、チャモロはやることがひどすぎる――悄然とした表情で住民たちは口々に嘆いた。
貧者の拠り所を力で壊したという点で、宮下公園の事件はニカラグアと一緒だ。だが決定的な違いがあった。ニカラグアでは現地の新聞が大きく報道した。マナグアで知らない者はまずいなかっただろう。一方、宮下公園の事件は大マスコミが無視を決めこんだ
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宮下公園から深夜追い出された救援キャンプのボランティアや避難者は、やむをえず近くの神宮通公園に移動した。厳しい冷え込みのなか、生活相談を行なう楡原民佳さん(上)。強制排除の一部始終を撮影したVJUの映像を鑑賞する路上生活者やボランティアたち(下)。
強制排除によって宮下公園から避難した神宮前公園。連日130人~140人が利用したという。
年明けの1月6日、救援キャンプの強制排除に抗議して、多くの支援者が渋谷区土木清掃部を訪れた。黒柳貴史部長は居留守を使って出てこようとしなかった。抗議する市民を監視する私服警察官(下)。
「福祉のまち」と渋谷区の区民憲章には書かれている。桑原敏武区長にコメントを求めたが回答はなかった(上)。渋谷区庁舎に向け、「強制排除」に対する抗議を行なう救援キャンプのボランティアたち(下)。
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いったい、自民党は何をしているのだ!。 (働ける人間は、ボランティアで働かせ、終身雇用制を無くし、低賃金にして、貧困になった人間は、殺す。) それが、自民党と公明党、創価学会がやること。
【渋谷区役所と渋谷警察の真冬の年末深夜、宮下公園からのホームレスたたき出し事件】...
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読者コメント
みんな大好きな住民投票で、排除の是非を決めよう
「襲撃」の映像です(VJU撮影・提供=救援キャンプで野外上映した際の様子)。
1宮下公園の越冬救援キャンプを「襲撃」する渋谷区職員と警視庁の警察官
http://www.mynewsjapan.com/static/extrapictures/Produce_6.wmv
2越冬救援キャンプ襲撃の現場責任者・黒柳貴史土木生活部長
http://www.mynewsjapan.com/static/extrapictures/Produce_7.wmv
ホームレス問題を解消させたければ、生活保護・公的な住宅補助(公営住宅の増設、家賃補助、借り上げ住宅)・職業訓練など総合的な社会保障を展開しないと。
それにしても、この手の野蛮な行為が発生するようでは日本も中国や北朝鮮などの野蛮国を笑える器ではないわw
地元住民からすればホームレス達に自分達の居住エリアの一部を無断で専有されたのでは堪らんだろうね。
ただし、セーフティーネットも用意しないまま、しかも真冬の時期に強制排除したのでは凍死者や餓死者を生みかねんし、強制排除されたホームレス達は別のエリアへ移動するだけだから、問題は堂々巡り。
東京新聞が1月7日に報道。見落としていましたが、NHKは1月9日の「ふとんプロジェクト」紹介番組のなかで宮下公園の炊き出しに触れ、「立ち退きを迫られた」と報じています。http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2014_0109.htm
渋谷区が用意した緊急宿泊施設はわずか1床(部屋ではありません)。しかも午後11時の門限つきでした。これでも何もなかった前年にくらべれば「1ミリ」前進だそうです。
ホームレス緊急一時宿泊施設とか入れば良いのに
難しい問題だ。地元住民的にはホームレスに公園を占拠されたくないから。地元住民の暗黙の支持を取っている限りはイタチごっとにならざるを得ない。日本人のホームレスへの考え方が変わらないと根本的には変わらないのかなと。
記者からの追加情報
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