甘い残留農薬基準、現状でも危険な野菜果物はこれだ!――子どもはイチゴ1個、レタス1枚で急性中毒リスクも
1月24日に群馬県で残留基準違反が見つかった農薬「トルフェンピラド」。イチゴに許されている残留基準値では、大サイズ1個食べただけで子どもの急性中毒のリスクが発生するが、野放し。農家の回収コストを配慮して残留基準値が緩くなっているためだ。 |
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- 群馬県で残留基準値違反で回収された春菊
- 同じ残留量でも回収されないイチゴ・夏みかん・グレープフルーツ
- 急性参照用量を超えた場合のリスクとは
- 急性参照用量を導入したら、イチゴの残留基準は3分の1になる
- 自己防衛には使用農薬の表示が必須、新鮮野菜ほど危険
- 厚生労働省もようやく「急性参照用量」設定へ
群馬県で残留基準値違反で回収された春菊
1月24日の群馬県による報道発表によると、回収命令が出た春菊は、JA邑楽館林管内の農家が1月20~23日に出荷した10箱(200袋)。
そもそもこの農薬「トルフェンピラド」は春菊への使用は認められておらず、残留しないことを前提にした一律基準の、0.01ppmが残留基準値だった。その320倍もの農薬が検出された。
JA邑楽館林では、回収対象品が特定できないため、同時期に出荷した全ての春菊について自主回収することを決定したという。
その3.2ppm(春菊1㎏あたり3.2㎎)でどれくらい危険なのかについては、群馬県の資料の中に言及されている。
今回の残留基準違反は、事故的なものであるため、残留した春菊を食べ続けるということは考えられない。そのためここでは、慢性中毒のリスクを評価した1日許容摂取量(ADI)ではなく、急性中毒のリスクの目安となる「急性参照用量(ARfD)」と比較してある。
発表資料では、「トルフェンピラドの急性参照用量は、体重1㎏あたり0.01㎎で、体重50㎏の大人に換算すると0.5㎎になります。今回の春菊の検出値は3.2ppm(作物1㎏あたり3.2㎎)なので、これは体重50㎏の人が、春菊を1日に156g(一束すべて)食べる量に相当します。急性参照用量は、安全率を見込んで設定されており、通常の食生活で食べる量では、健康に影響を及ぼす量ではありません」とある。
確かに、1回の食事で春菊一束食べるというのは、あまりないだろう。しかし、厚生労働省が1~6歳児のモデルとして使っている体重15.8㎏で適用すると、52.6g(3分の1束)になる。
ぺろりと食べる量ではないかもしれないが、まったくありえない量でもない。しかも後述のとおり、イチゴやレモン、オレンジ、レタス、ニラといったお馴染みの果物や野菜では使用が認められ、農家の利益を考慮してか、かなりの量が残留していても合法となっているのだ
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農薬「トルフェンピラド」の残留基準で、子どもの急性中毒のリスクがある野菜と果物一覧。筆者作成
果物と野菜で子どもに急性中毒のリスクが発生する量
残留基準値設定の流れ。厚生労働省ホームページより。
作物残留試験値と残留基準値の関係
農薬「トルフェンピラド」の推定摂取量
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読者コメント
下記の点、記事の有料部分の中で考察しておりますので、もしよろしかったらご購読ください。
大変興味深いので、急性中毒リスクとは具体的に何%なのか是非ご教示頂きたいです。例えば交通事故で死亡する確率が0.0034%というように。
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