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化石的弾圧法「暴処法」に息を吹き込んだ法政大の愚行 「共謀して看板破壊」のでっち上げで学生5人の口封じ試みるも無罪確定

情報提供
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ポポロ事件以来、戦後約60年を経てはじめて暴処法を学生運動に適用した法政大学。防犯カメラが捕らえた不鮮明な映像が、「共謀して看板破壊」の証拠とされた。暴処法は、明治時代に盛り上がった自由民権運動を抑えるためにときの権力が作った治安立法にルーツを持つ。戦後も生き残った化石的な弾圧法だ。
 「モノ言えば唇寒し」の戦前日本を彷彿とさせる事件が法政大学(増田壽男総長・4月1日から田中優子総長)で進行中だ。2009年、「共謀して看板を壊した」という大学側がでっち上げた被害により、増井真琴氏ら学生5人が暴力行為等処罰ニ関スル法律(暴処法)違反の罪で起訴された。それから約5年を経て、さる2月12日、東京高裁は無罪を言い渡した。検察側は上告を断念し、判決は確定。無罪は幸いだが、大学が学生に「暴処法」を使った意味は重大で、法政大の体質を物語る。戦前の特高警察が小作争議や労組を弾圧した札付きの悪法で、そのルーツは明治時代の自由民権運動つぶしに使われた「集会及正社法」にさかのぼる。そのゾンビ法に、法政大が警察・検察とともに息を吹き込んだ。法政大の前身「東京法学社」が創立されたのは自由民権運動が高揚していた1880年。130年余を経て同大の「学問の自由」は自滅寸前だ。(高裁判決文はPDFダウンロード可)
Digest
  • 無罪確定――「人生を返せ」と法廷に怒号
  • でっち上げの「暴処法」
  • 2009年5月15日、11人一斉逮捕
  • 判別不能のビデオ映像が証拠
  • 拉致して16時間拘束、虚偽供述を強要
  • 法政大に反省なし

無罪確定――「人生を返せ」と法廷に怒号

東京地裁・高裁合同庁舎の4階に「429号法廷」という法廷がある。鉄柵で入口前の廊下を仕切り、金属探知機を使って傍聴人の身体検査を行ない、時として数十人の職員や法廷警備員が周囲を監視する。

安全靴に皮手袋をした屈強な警備員は法廷内にも多数いて、不規則発言をした傍聴人や当事者を力ずくで抱えあげて退廷させる。法廷外のロビーをみると、物陰に私服警官が何人も潜んでいて関係者を見張っている。およそ三権分立をうたう民主的社会とは思えない異常な光景をまぢかに見ることができる。一部の傍聴ファンを中心に、「429」は有名になりつつある場所だ。

増井真琴氏ら法政大学生5人に対する「暴力行為等処罰に関する法律」違反事件の控訴審は、この有名な429号法廷で行なわれた。一審東京地裁判決は、無罪。検察の控訴により審理は東京高裁に移された。訴訟指揮を執る井上弘通裁判長は、被告人が一言発言しただけで大声で「退廷!」を連発した。警備員と被告人がもみ合う荒れた光景が毎回のように繰り返された。

強権的――そういうほかない井上裁判長の訴訟指揮をみた増井氏らは、控訴審での逆転敗訴を覚悟した。したがって、2月12日の判決言い渡しで無罪判決を聞いたときは、一瞬あっけにとられた。そして判決朗読が終わって閉廷すると、裁判官に向けるつもりでいた抗議の声を、検察官にぶつけた。

「おい、謝れよ検事。人生めちゃくちゃにしやがって。いったいどうしてくれるんだよ!」

後に傍聴者が語ったところによれば、口ぐちに激しい抗議を受けた検事らは、血の気のうせた表情でうつむいていたという。その後、検察は上告を断念し、無罪は確定した。

「謝れよ検事」――増井氏らがそう怒鳴ったのは、彼らが警察や検察から受けた仕打ちのひどさをみれば納得がいく。

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名指しで入構禁止を告げる看板を大学の各所に掲示された増井真琴さん。なぜ名指しなのかと苦痛を覚えたという。共謀して看板を壊した暴処法違反という身に覚えのない罪で起訴され、無罪を勝ち取った(写真左は「3・14法大弾圧を許さない法大生の会」HPより)。

でっち上げの「暴処法」

起訴状に記載された検察側の主張は、次のとおりである。

〈被告人5人(当時法政大学生)は、共謀の上、共同して、平成21(2009)年2月19日午前零時13分ごろから同日午前零時19分ごろまでの間、東京都千代田区所在の学校法人法政大学市ヶ谷キャンパス外濠校舎北側出入り口付近ほか2ヶ所において、同出入口等に設置された同大学所有の看板合計12枚(損害額合計12万3000円)を引き剥がすなどして損壊し、もって数人共同して器物を損壊した〉

「共謀して看板を壊した」というわけだが、当人たちにとっては身に覚えのない話だった。

まず問題となった「看板」について説明しよう

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数年来、自治会活動に対して法政大当局は露骨な介入を繰り返してきた。大学当局の運営に抗議する学生を力づくで排除する通称「ジャージ部隊」と呼ばれる民間警備員(左・「3・14法大弾圧を許さない法大生の会」HPより)と市ヶ谷キャンパス前に立つ民間警備員。

増田壽男総長のメッセージ。「法政大学は1880年に東京法学社として創立されました。この時期は国会開設をめぐる自由民権運動の高揚期にあたっており、『自由と進歩』という学風の礎が築かれました」と述べている。皮肉なことに、創立から130年を経て、かつて自由民権運動を弾圧した治安立法の系譜を引く「暴処法」の封印を解いて学生を弾圧すべく、警察や検察に協力することになった。

法政大市ヶ谷キャンパスの門に掲げられた「入構禁止」の看板。

天を突くようにそびえる法政大学のボアソナード・タワー。学生運動の弾圧に暴処法を使うことに加担した法政大の行動に対して、フランスの法学者で「日本近代法の父」ボアソナードはなんと言うだろうか。

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模荷荷2014/03/20 11:29
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