日の丸学生ローン「日本学生支援機構」、支払能力を無視した違法な「一括繰上げ請求」乱発を認める
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一括繰り上げ請求をする場合の必須条件である「支払能力」についていっさい審査をしていないことを認めた日本学生支援機構の回答書。同機構法施行令5条4項には「支払義務があるにもかかわらず」長期延滞した場合は一括繰上げ請求できるとあるが、実際には連絡が取れないことだけをもって支払能力がある旨みなしているという。なぜそういう判断になるのか、インタビューで尋ねたが納得できる説明はなかった。 |
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- 最大の問題は「延滞金」と「一括繰上げ請求」
- 「支払能力は審査していません」の怪
- 「まあ一括請求とかしたいわけじゃない…」
- 一括繰り上げ請求は撤回できるか
- 一括請求後の返還猶予についても即答できず
最大の問題は「延滞金」と「一括繰上げ請求」
インタビューは4月25日、日本学生支援機構市谷事務所で行なった。応対したのは、奨学金事業部奨学総務課の谷江徹司課長と課員2人。広報課の斎藤まり子課長補佐が同席した。
「奨学金」という名の官製学生ローンは、いまや大きな社会問題となっている。問題をただすため筆者は去る2月25日にインタビューの申し入れをしたが、1ヶ月以上にわたって放置された。そこで抗議したところ、4月25日にようやく取材が実現した。インタビューを望んだのは、特に「一括繰上げ請求」について機構の見解をただしたかったからである。
あらかじめ「一括繰上げ請求」について説明しておきたい。
日本学生支援機構による学生ローン(以下「奨学金ローン」と表記する)が持つ最大の問題は「延滞金」と「一括繰上げ請求」ではないか――数年来の取材を通じて筆者はそう考えるにいたった。
延滞金の悪質さについては言うまでもない。返済が滞ったとたん、年10%(4月以降は年5%)の利率で借金を増やしていく。利用者が懸命に弁済したお金は、元本よりもまず延滞金に吸い上げられる。延滞金を払い切るまでは元本は1円も減らない。わずかずつしか払えない場合は、最悪、死ぬまで延滞金を払っても元本がそっくり残るという悲劇が起こり得る。
機構がいくら「延滞金」の取り立てに励んだところで、国民にとってはいいことは何もない。「次世代の貸与原資」とは関係がない「雑収入」に計上され、債権管理回収業者(サービサー)などの懐を肥やすだけなのだ。
そして「一括繰上げ請求」にいたっては、〈「奨学金」という名の悪質公的学生ローン 施行規則も何のその、「支払い能力」無視して一括繰上げ請求しまくり〉で報告したとおり、その悪質さは犯罪的といっても言いすぎではない。
15年から20年の分割返済だったはずなのに、わずか2年か3年目で残元金すべてを請求してくる。300万円とか500万円を「耳をそろえて返せ」と取り立て裁判を起こす。一括で返せる者などまずいない。困惑する利用者に、支援機構は構わず年10%(5%)の延滞金をつける。裁判で和解が成立するその日まで延滞金を取り続ける。ビタ一文負けない強気の姿勢は往年の武富士よりもひどいかもしれない。
「支払能力は審査していません」の怪
大学を卒業したばかりの若者に対して何百万円も一度に請求するなどという乱暴なことがなぜできるのか。根拠は日本学生支援機構法施行令の5条4項だと機構は説明する。しかし条文をみると、ひっかかりを覚えてしまう。
学資金の貸与を受けた者が、支払能力があるにもかかわらず割賦金の返還を著しく怠ったと認められるときは、前三項の規定にかかわらず、その者は、機構の請求に基づき、その指定する日までに返還未済額の全部を返還しなければならない。
「支払い能力があるにもかかわらず」
条文にははっきりとそう書かれている。まとまった金を持っているというのが一括繰上げ請求できる条件なのだ。筆者が取材したケースはすべて支払い困難者だった。難病で働けないような人もいた。明らかに何百万円も払う経済力のない人たちばかりである。
経済的困窮者に対してなぜ「5条4項」が適用できるのかーー。
昨年8月、筆者は支援機構に質問状を送った。9月2日付で回答がきた。そこにはまずこうあった。
「(支払能力について)審査はしておりません」
驚いたことに、支払能力を調べていないというのだ。
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返済開始からものの2~3年で、経済苦の利用者から数百万円と延滞金を一括で請求するという乱暴な取り立てを行なっている日本学生支援機構。ひどい取り立てを防ぐための第三者によるチェック機能は皆無同然だ。写真は市ヶ谷事務所。
高額の延滞金や一括請求といったひどい取り立てを繰り返す日本学生支援機構の「奨学金」は、悪質な官製学生ローンというのがふさわしい。給付型の本来の「奨学金」の導入や、学費の値下げを訴える学生たち(文部科学省前)。
日本学生支援機構の所管官庁である文部科学省。下村博文大臣は国会答弁で「学生ローン」であることを認めた。
給付型奨学金の導入や大学の学費値下げ、返済困難者ブラックリスト化の中止を求めて文部科学省に申し入れをする「全国学費奨学金対策委員会」の若者たち(3月27日)。
日本学生支援機構の遠藤勝裕理事長。元日銀神戸支店長だ。
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奨学金返済は僕はそんなに苦じゃなかった。ちなみに1種2種同時返済。さらに入学金の奨学金も返済。しかし問題は親の借金だった(笑)親の借金のグレーゾーン利率に比べたら奨学金なんてステカセキングレベルの敵(笑
あきれた。何なの、延滞金て・・官製悪徳金融。
日本学生支援機構の奨学金がただの借金だなんて知ってて当然でしょうに。知らずに金借りて知らなかったと騒いでも共感は得られないだろう。
"支払能力がないことを知りながら一括繰上げ請求を乱発している。つまり、日本学生支援機構法施行令5条4項に反する違法行為を繰り返している疑い"
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読者コメント
中村淳彦氏の書いた「女子大生風俗嬢」においても日本学生支援機構の奨学金(借金)で苦しみ、已む無く風俗嬢になる女子大生、また男娼になり早稲田大学院に進学する男子学生を紹介していました。三宅勝久氏の指摘する「学生借金奴隷化機構」としか言えない現実にため息しか出ない。今の苦学生は昔とは比較にならない。
定員割れするような大学もあるが、そういった大学にも多額の補助金や助成金が使われている。また、外国からの留学生への給付金はどれだけだろうか。そして、大切なはずの国内の学生にはこの奨学金制度とはどういうことだろうか?
もう誰でも大学に進学するべきじゃない。学力うんぬんではなく経済的な意味で。なんとなく目的も無く文系の大学へ進学するというコースを考えなおす時期に来ている。
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