破産免責でも構わず延滞金つけて猛烈回収する日本学生支援機構、内部記録に不実記載の疑い
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- 雪の日にやってきた債権回収会社
- 延滞金にこだわる日本学生支援機構
- 自力ではじめた裁判
- 手書きの準備書面
- 破産法253条1項
- 奨学金業務システムに疑問
- 自力で裁判やって全面勝訴の快挙
雪の日にやってきた債権回収会社
北海道在住の女性Aさん(30歳代)の自宅に突然見知らぬ男が訪ねてきたのは2010年2月、雪の降る寒い日のことだった。コートを羽織った男は債権回収会社の社員だった。
A子さんが高校在学中に借りた日本育英会(日本学生支援機構)の「奨学金」が返済できていない。延滞金と併せて払ってほしい――男はそういう趣旨のことを言った。
元金26万円に延滞金10数万円。併せて40万円近くの借金があるという。寝耳に水の話だったので、A子さんは正直に言った。
「奨学金のことは知りませんでした」
親に確かめて事情が判明した。15年前、A子さんが高校に入学したとき、子どもの名義を使って、親が「奨学金」を借りていた。通学の交通費にあてるためである。借りた金額は3年間で48万円。返済は月々4000円あまりを9年かけて返す計画で、これも親がやるつもりだった。だが4年ほど払った後、2004年9月以降、払えなくなってしまった。後述するとおり、家庭内の問題や多額の借金に追われるうちに「奨学金」どころではなくなり、すっかり忘れられていた。
その払い残しが、時間を置いて延滞金とともにA子さんに回ってきたのだ。
債権回収会社の男に対してA子さんは、「知らなかった」という事実とともに、こうも伝えた。
「2007年に自己破産しているんです」
自己破産――A子さんにとっては辛い過去だった。父母は幼いときに離婚し、母親に引き取られた。やがて再婚したが、養父となった男はギャンブルにのめり込み、多額の借金をつくって家族を不安に陥れた。母親とともに、A子さんは借金の肩代わりをさせられた。
高校を卒業すると母親は離婚し、A子さんも養父と離縁した。肩代わりした借金は、消費者金融などに500万円以上。A子さんは働き始めた
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A子さんは「元本を分割で払いたい」と繰り返し訴えた。「奨学金」の債務があることを知らなかった期間の延滞金13万円あまりを払うことには納得がいかなかったからだ。だが日本学生支援機構はあくまで延滞金の取り立ていに固執し、とうとう支払督促(訴訟)を起こした。A子さんが自己破産していることを知った上での猛烈回収だった。
自己破産したA子さんに対し、高校のときに親がかりた奨学金について延滞金と元本の一括弁済を求める裁判を起こした日本学生支援機構北海道支部(札幌市)。
一審の札幌簡裁でA子さんは勝訴した。親としか連絡はとっていなかったという機構職員の証言で、A子さんが「奨学金」のことを知らなかったことを認定したのだ。だが支援機構はこれを不服として控訴した。偶然傍聴した北海道新聞の記者が縁で、北海道奨学金問題対策弁護団の弁護士が代理人につき、徹底的に争うことになった。判決を控えて法廷に入る弁護団(2014年4月15日、札幌地裁)。
控訴審勝訴判決の後、記者会見するA子さん。「私のように裁判所から支払督促がきても、あきらめずにがんばってほしい。ひとりで悩まず、周りに相談して戦ってほしい」と語った。また、元金を払うと言っているにもかかわらず延滞金にこだわる機構の姿勢に疑問を感じたと話した(2014年4月15日、札幌市)。
控訴審勝訴を受けて記者会見する弁護団。「奨学金業務システム」の正確性に疑義が指摘された点について、「実務改善に強く期待する」と述べ、日本学生支援機構のずさんな運営を批判した(2014年4月15日、札幌市)。
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読者コメント
昭和42~44年まで、当時の日本育英会から毎月3000円を無利子で借りて年に5000円ずつ返済しました。有利子の奨学金はローンと同じで意味がない。ましてや、高額の延滞金などは、奨学金の趣旨からの逸脱もはなはだしいだ。
過去に踏み倒してきた人間たちのせいで今の若い世代は奨学金でも苦労する。
記者からの追加情報
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