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ボルボ子会社「UDトラックス」の退職強要手口を元社員が告発 「自分の意志で早期退職に応募なんて嘘っぱちだ!」

情報提供
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ボルボ・リクルート・オンライン(VRO=ボルボ・リクルートメント・オンライン、社内公募制度)について解説した内部文書の表紙。SCP(セカンドキャリアプログラム=早期退職制度)、PPI(Plan for Performance Improvement、PIPのこと)も含め、VOLVO本体では以前から実施されていた人事施策だという。
 かつて日産自動車傘下のトラックメーカーだった「日産ディーゼル工業」は、この10年でボルボに売却されて「UDトラックス」と名称変更し、2012年以降は過酷なリストラが行われた。その手法は、まず組織強化を口実に既存部署を消滅させ、新組織に定員を減らして業務を移管。次いで社内公募制度(VRO)に応募させ、合格しない人を社内失業者として追い込み「セカンドキャリアプラン(SCP)」と呼ばれる早期退職優遇制度に申し込ませる。別途、外資リストラでは定番のPIPも行う。これらはいずれもボルボ本体では以前から実施されていた人事施策だが、同社では、大手外資系企業を渡り歩いた人事担当幹部が入社した2013年暮れ以降に導入。やはり同様のキャリアを歩んだ外部招聘の「リストラのプロ」によってバンド型賃金制度も導入され、人件費抑制が進んだ。同社に将来はないと失望して辞めた元中堅社員が、一見リベラルなイメージもある北欧企業の、実はシビアなリストラの内幕を語った。(VRO=社内公募制度資料は全65ページPDFダウンロード可)
Digest
  • 「社内公募制度」をリストラの道具に
  • 面談に執拗に呼び出し、早期退職制度を“案内”
  • 「労基署に申告した」という理由で処分
  • 組合も問題視していたが…
  • 主導したのは「リストラのプロ」たち
  • バンド型賃金制度導入の主はすでに退社

「社内公募制度」をリストラの道具に

UDトラックスの主力商品であるトラック「Quon(クオン)」(画像は同社公式ホームページより)

「UDトラックス」という社名は知らなくても、「日産ディーゼル工業」ならば聞き覚えがある、という人は多いだろう。その名の通り、日産自動車の子会社としてトラックやバスなどの商用車を製造してきた同社は、2006年から07年にかけてスウェーデンの自動車メーカーであるボルボに売却され、10年2月1日に現在の社名に変更された。UDトラックスの「UD」とは、「Ultimate Dependability」つまり「究極の信頼性」の略だという。

同社に最近まで在籍していた(過去1年の間に退職)元中堅社員・風間光郎さん(仮名)によれば、ボルボ子会社となってからの同社では、09年に中規模の人員削減が行われたものの、その後の数年間、リストラは控えられていた。だが、12年以降に再び始まったリストラは、規模の面で09年をはるかに上回り、手法の面でも「社内から怨嗟の声が上がる」ほど強引なものになったという。

UDトラックスにおいては、ホワイトカラーの人事異動は「ボルボ・リクルートメント・オンライン」(VRO)と呼ばれる「社内公募制度」(フリーエージェント制度)に一本化されている。

この制度では、空席あるいは新規に必要になった役職・業務が社内のイントラネットに掲示され、社員たちはこれに自由に応募できる。その上で求人した部署の管理職(「ハイアリングマネージャー」)と人事担当者との2対1の面接が行なわれ、これに合格すれば、晴れて希望の部署に異動できる、というわけだ。

一見したところ従業員にとってもモチベーションの上がりやすい制度に見えるが、風間さんはこれが、リストラの道具としても利用されていた、と証言する。UDトラックスのリストラは、概ね以下のような順番で行われるという。

①:「組織強化」を名目にした「組織改編」で既存部署の人員を削減。
②:配属先を追われた社員を「社内公募制度」を利用して社内失業者にする。
③:②の社員に繰り返し面談を行い、そこで早期退職優遇制度を案内。自主退職へと誘導する

以下この手順を、風間さんの説明に基づき具体的に見ていこう。

「たとえばUDトラックスには、かつて10人の社員が在籍する品質管理のためのグループ(部署)があったのですが、それが15年4月に突然、新組織に移行する、と通達されました。新組織に残って働きたいなら、VROに応募し、合格せよ、というのです。一方で、新組織の募集人員が何人であるかは、事前には全く知らされませんでした。

実際にVROが行われると、合格したのは以前の半分の5名のみ。そのうち大半は賃金の安い若手社員でした。

しかも、新組織になって何か業務内容が変わったのかといえばそういうことは全くありません。単に10人でも大変だった業務を、半分の5人でやらなければならなくなっただけ。VROに合格できず、新組織に移れなかった人の中には退職を余儀なくされた人もいました」

面談に執拗に呼び出し、早期退職制度を“案内”

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風間さんの給与明細。決して高くはない割に、雇用は脆弱だ。

このようにして所属部署を追われ「社内失業」状態となった社員に、会社側が決まって提案してくるのが、③の早期退職者優遇制度であり、これは社内では「セカンドキャリアプラン(SCP)」と呼ばれていた。

世の通常の早期退職制度と同じく、UDトラックスの早期退職制度も、建前上は志願制だ。ただ同社のSCPの場合、長時間の、かつ執拗に繰り返される面談の中で“案内”されるがゆえに、これを事実上の退職勧奨と受け止める社員は少なくなかった。

「組織改編後、一定期間ポストが無い社員は管理職から面談に呼び出されて、SCPのことを“案内”されるのですが、面談が一度で終わることはまずありませんでした。ある社員などは、1週間(5営業日)で4度も面談に呼ばれ

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PPI(PlanforPerformanceImprovement=業績改善プラン)の適用対象となった社員に「退職勧奨する」と告げた通達文。退職勧奨に同意した場合の割増退職金額も記されている。

UDトラックス労働組合の会報「HOTLINE」

【上】浮田真理子氏がUDトラックスのヴァイスプレジデントに昇進した際の社内イントラネット画像。【下】同じく浮田氏が入社した際のもの

UDトラックスにバンド型賃金制を導入した発田聡バイスプレジデント(当時)はすでに同社を退社済み。今頃は別の企業で”辣腕”を振るっている可能性が高い。日本のボルボ・グループ従業員向けニュースレター「ジャパン・クロスロード」より

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2016/11/29 03:23
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