Ba:普通の職業
(仕事4.0、生活2.7、対価3.2)
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2002年から男女ともに看護婦→「看護師」に呼び名は統一されたが、いまだ9割強を女性が占める看護師。職種別では、航空会社CAや化粧品会社販売員と並んで、女性が現場を仕切る数少ない“アマゾネス職場”である。その報酬は、命を縮める夜勤が必須の激務をこなしてもなお、「ヘロヘロになって働いて年収500万円前後」、大学病院で管理職(看護師長)になって600~700万円が相場で、スキルの専門化やキャリアパスの多様化はまだ発展途上。女性が差別を受けることなく社会的・経済的に独り立ちできる数少ない職種である一方、1人で家族を養うほどの給料ではなく、生きる世界は狭い、仕事のハードさ・重さにはかなりの覚悟が必要――そんな看護師の実情をレポートする。
【Digest】
◇夜勤手当で最初から高め
◇師長で600~700万、部長で1千万
◇激増する看護学部、上智大まで新設
◇「幼少期の入院」と「親や家庭の影響」
◇就活で苦労することはない
◇診療科による幅広い特徴
◇入職20年、残っているのは1割だけ
◇仕事に就いていない看護職が70万人も
◇「ありがとう」はほんのちょっと
◇「患者さんと話す時間がほしい」――機械化で時間は作れるか
◇看護師は生き残れるのか?進む役割分担
◇「同じように見えても、あの人の場合は、今はいいのよ」
◇師長になると経営側との板挟みも
◇1日最大8軒まわる、訪問看護の仕事
◇「役割が明確ならラク」、老人ホームの看護師
◇命を削る夜勤が必須
◇毎回、2~3時間ずつサービス残業も
◇1割くらいが医師と職場結婚
◇NICUのトリアージ的ジレンマ
◇夜勤手当で最初から高め
2015年の、厚労省による賃金構造基本統計調査結果では、従業員10人以上の事業所に勤務する看護師(全64万人、平均38.2歳、勤続7.8年)の平均年収は、月収32万9千円、賞与83万2千円の、計478万円だった。従業員数が多い事業所ほど給料が高いのは民間企業と同じだ。※同じ調査で、6年間(看護師の2倍)の教育を受けて資格取得する薬剤師は533万円だった。
大規模事業所の代表である大学病院の場合、看護師は概ね、ヒラ→(チームリーダー)→主任→師長補佐→看護師長(師長)→副部長→看護部長といったキャリアを歩む。人材の流動性が高めな職種でもあり、病院によって給与水準に大差がつくことはない。
ある私大病院(1千床クラス)では、新卒者は約21万円の基本給からスタート。主な構成は、「基本給(≒経験年数給)+役職手当+夜勤手当+残業手当」だ。看護師の給与体系は、業務経験年数に応じた年功給(≒年齢給)をメインとしている病院が多く、スキルと経験年数は概ね比例することから、納得感も高い。
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ある私大病院のキャリアパスと報酬水準 |
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この私大病院は、昼夜の2交代制シフト管理で、夜勤に月6~7回入るのが必須となるため、1日6千円ほどの夜勤手当がついて、残業代がつき、月収は最初から26~30万円ほど。
2年目からは、ボーナス4~5か月分を含め、年収400万円ほどになる。
最初の昇格にあたる「主任」になるためには、ナース経験5年で、主任試験を受ける。内容は、一般常識、論文、医療法学などの知識を問う筆記試験。これに受かったうえで、チームメンバーや上司の推薦を得て、正式に主任となる。通常は6~8年目くらいに主任となる。
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看護師8年目の給与(月ごとに支払われた給与額が記された「雇用保険被保険者離職票」) |
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「主任になると、通常の病棟(または外来)での看護業務に加えて、病棟外での会議も増え、組織の問題点を見直す業務や、看護学部の学生や新人を指導するなど教育にも関与します。主任が一番、忙しくて大変なポジションです」(看護師歴20年ほどになる師長)
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看護師・准看護士の就業場所別人数(2014年末時点)
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夜勤は乳がん発生リスクを上昇させる(NHKスペシャルより) |
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「看護師」の評価詳細と根拠 |
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