「大東建託のアパート建設はやめたほうがいい」 築10年で一方的に家賃下げられたオーナーが怒りの告白
大東建託でアパートを建てるのは「やめたほうがいい」と忠告するオーナーのAさん。銀行に借金をさせてアパートを建てまくる一方で、すでに建てたオーナーに対しては、客付けは不熱心で、挙句には家賃の引き下げを求めてくるやり方に不信を抱いている。 |
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- 大東との縁はCM
- 「通帳みていればいい」と大東社員
- 安普請でも魅力があった訳
- なんの心配もなかったが…
- リスク説明なし
- 家賃引き下げ作戦か?
- 疑惑の空室率
大東との縁はCM
俳優の津川雅彦が雨傘をかついで笑うCMの場面が、新潟市のAさんの目にはいまもはっきりと焼きついている。つぎつぎに開く青い傘の表面に、白抜きのキャッチコピーが流れる。
「30年一括借り上げ」
「借り上げ賃料長期固定」
「原状回復費負担なし」
「修繕費負担なし」
東証一部上場企業の良いイメージも加わって、Aさんの目に大東建託は信用できる会社に映った。そればかりか、頼もしい存在に見えたという。いまから10年前、2005年ごろのことである。
当時、Aさんは家業の木材製材業が経営不信に陥り、苦しんでいた。不景気で売り上げは伸びない。毎月100万円から200万円の赤字が生まれる。創業100年を超す老舗だったが、もはや限界だった。商売をやめて事業を切り替えるしかないと家族で話し合った。スーパーはどうか、葬祭場はどうか。いろいろ意見が出た結果、決まったのが、Aさんが好印象を持っていた大東の「アパート経営」だった。
大東新潟支店に電話をかけるとすぐに支店長が見に来た。予定地は作業場の跡地。「5棟ほど建てられますね」と支店長はうれしそうだった。いまになって振り返れば、アパート新築の契約をとれば高額のインセンティブ(報奨金)が得られるので喜ぶのは当然である。だが、このときは自営業の苦境から脱出したい一心で、そんなことを考えるゆとりはなかった。
10年前、アパート建築を計画していた際、大東新潟支店の社員がもってきた試算表。銀行の借金を返す30年間、家賃はずっと横ばいとなっている。家賃が下がるリスクについて社員はいっさい説明しなかったという。 |
「通帳みていればいい」と大東社員
電話をして以降、支店長ら大東の社員らは毎日のようにくるようになった。製材所はまだ縮小しながらも稼働していた。仕事をとってきたり、現場作業に出たりとAさんは多忙だったが、そのつかの間の空き時間を狙ってはやってきた。計画と試算書が出来上がるまでに2週間もかからなかった。
「私は忙しかったのでおまかせにしていた。信用していましたから」とAさんはいう。大東が作ってきた計画は、5棟36戸のアパートを建てる内容でした。予算は3億円。
すぐに部屋は埋まる。空室率は3%程度であると説明しながら、社員は収入と返済のシミュレーション表を出してきた。売り上げは年間2千数百万円。管理費や返済分を差し引いて700万円あまりが手取りとして残る。家賃は下がることなく30年間一定額で続き、返済が終われば手取り所得は年間2000万円を超す。
「通帳だけ見ていればいいんですよ」
夢のような話だった。
3億円の見積もりは、やがて2億5000万円に圧縮された。「安くなったからいいじゃないか」とAさんは大東にますます好印象を持った。そして契約書に署名・捺印した。製材所の整理に追われるAさんに、契約内容を詳細に検討するゆとりはなかった。製材所の赤字をこれ以上増やしてはいけないという思いで、頭のなかはいっぱいだった。
「着工に備えて、追加工費がかからないよう自分でいっしょうけんめい予定地のゴミを拾って整地しました。これで苦境から脱出できる。私にとって、大東は希望でした」
Aさんが所有する大東建託のアパート。大東建託(子会社の大東建物管理)が一括借り上げする格好で経営している。10年目で1000万円をかけて大規模修繕を行った。この工事も大東の指定業者でやらないと借り上げを打ち切られる。新築のようにきれいになったがその直後、家賃引き下げを宣告された。 |
安普請でも魅力があった訳
やがて工事がはじまった。自分で選んだ道でありながら、Aさんは複雑な気持ちに駆られた。というのも、大東が建てているアパートが、いかにも安っぽく見えたからだ。柱がなく、壁板を組み合わせただけの「2×4」(ツーバイフォー)と呼ばれる工法。建材も若い輸入材を、薄く剥がして接着剤で貼りあわせた合板だ。
老舗の材木製材業としてAさんが手がけてきたのは伝統的な日本建築だった。厳選した材木を丁寧に加工して、100年でもゆうに持つ建物にかかわり、それを誇りとしてきた。大東の建築とは、大きな違いがあった。
複雑な気持ちだったのはAさんの妻も同じだ。大東の工事を見るのが苦痛だった、という。
「大東の建物はまるでおもちゃ箱のようで、おもしろくなくて仕方ありませんでした。だから、できるだけ見ないようにしたんです。見たくない。職人のプライドが傷ついた」(妻)
せめて材木だけでも自分たちで調達させてもらえないか。見かねて、Aさんは大東建託にかけあった。そのほうが工費が安くなるし、ものが良い。だが大東は、即座に提案を拒否した。大東が指定する業者の建材で建てなければ借り上げできない、客付けもできないというのだ。Aさんは黙るしかなかった。
「アパートを建てるだけなら自分たちでできます。いいものをつくる自信がある。でも客付けはできない。アパート経営はできない。経営難に陥った製材所をどう整理するか、私の頭はその問題でいっぱいでした。在庫をどうさばくかとか、従業員をどう整理するか。機械をどう処分するか。やっぱり大東さまさまだったんです」(Aさん)
家賃引き下げに同意を求める書類。応じないと客付けしない、家賃保証も払えないと言われ、泣く泣く応じた。あまりにも悔しいので、納得したわけでない旨赤い蛍光ペンで書き込んだ。 |
なんの心配もなかったが…
やがて、5棟36戸のアパートが完成した。大東の子会社と「一括借り上げ」契約もした。大東側が入居者を募集し、毎月手数料を引いた残りを支払うという契約だ。空き室が出た場合は、家賃の9割を保証する、という内容だ。
順調に入居がきまり、入金もはじまった。
「やはりいい会社だ」
Aさんは、ますます大東建託を信用した。製材所を完全に廃業して「アパート経営」に完全に移行する決心をした。そうして、さらにアパートを5棟建てた。計11棟80戸となった。銀行の借金は5億円ほどに膨らんだが、不安はなかった。アパート建設にあたって、大東の営業社員が、例によって試算表をつくってきた。30年間同じ家賃、入居率もほぼ満室が続き、ちゃんと返済できるという内容だったからだ。
製材工場の主としての懸念は、雇っていた従業員の行き先だった。それも、無事きまった。肩の荷がおりた。もう資金繰りにあたふたする必要はない。妻とともにAさんは安堵した。
そして、10年近くが過ぎた2015年。借金は3億円ほどに減っていた。
「このまま返していけばよい」と、なんの心配もしていなかった。
最初に建てた5棟が「大規模修繕」の時期を迎えた。10年ごとに壁や屋根などを直さなければならない。総工費1000万円。それにそなえて積み立てをしてきた。修繕をやらないと「客付け」「家賃保証」はでない、という契約だった。割高感があったので他社でやりたかったが、やはり建築時と同様、大東の指定業者を使わなければならないという。
修繕の結果、アパートは新築のときのようにきれいになった。シミュレーションどおり、今後も同じ家賃で募集をかけ、入居者もきまるだろう。Aさんはそう考えていた。
リスク説明なし
様子がおかしいと感じはじめたのは
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2011年6月に大東建託新潟支店審査課がオーナー向けに作成した資料。東区の空室率は6・25%となっているが(左下の表参照)、管理戸数の816(左上の表参照)は2013年の推定値。じっさいは717だった。
2011年10月に新潟支店テナント営業課が作成した空室率の表。同年6月に審査課がつくった内容とまったくちがう。東区の管理戸数717は一致しているが、空室数は16〜22で、空室率は2・8〜3%と審査課算出の半分以下である。大東の空室率の信頼性には重大な疑問がある。
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読者コメント
30年一括借り上げが35年一括借り上げサブリースになって、最初の10年経過よりも、その後2年ごとの強制値下げのほうが酷いです。
施工から10年経過で皆経験する落とし穴。 そもそも主要駅から徒歩10分以上かかる「立地の悪い農地や空き地」にアパート建築すると、銀行融資抵当権設定された自宅までも家賃値下げで失う未来。 主要駅から徒歩10分圏外ではアパート建設しないのが鉄則。
かつて、大東建託の賃貸に入居中、買い置きの新品洗剤や、新品石鹸など、次々無くなっていた。留守の間に侵入していたのは、大東建託の社員だ。入居者が留守の間、勝手にお風呂も、トイレも、テレビも、エアコンも、使っていた。不法侵入、窃盗。大東建託の社員のしわざだ。
近くに新しい大東のアパートが建つと、全室に引っ越しを斡旋するチラシを巻かれます。
実際にあったのですが・・家賃を下げる要請に応じないと、契約時に見たこともないハガキが3回届き、家賃保証を止めると脅されます。
エグイ奴を向かわせますという脅しもあります。
書籍「大東建託の内幕」第9章掲載。 一括借り上げ(サブリース)の最大の問題点が、空室増加と借り上げ家賃の一方的な値下げ強要。 レオパレス問題も核心部分は「一括借り上げ(サブリース)」。サブリース業者とオーナーは運命共同体。 レオパレスのオーナーには、大東建託や東建コーポのオーナーも多いから、いづれかの建物で銀行融資返済不能に陥ると、ドミノ倒し他物件の融資返済も不可能になる。
うたい文句通りのおいしい話なら、大東の営業マン自身が借金してでもオーナーに転身するだろう。ノルマに追われる日常から一刻も早く足を洗いたいと願わない大東営業マンはいないはずだからだ。
大東建託がアパート建築提案時に出してくる試算表には、10年後の家賃減額は一切考慮されていない。当然、古いアパートは商品力低下する。この事例は、修繕費全額大東建託持ち「フルパッケージ」契約が出来る前の案件。フルパッケージ契約も開始して10年経過した。大東が毎月5%差っ引いている予算で「大規模修繕」を適切に施すか注視。まあ、契約書には「大東建物管理が必要と認めた場合」と大東の逃げ道が確保されている。
NHKで今やっていますが、内容そのものが大東建託のトラブルそのものです。
うまい話には気を付けよう。通帳だけ見ていれば良いような話が現実にあるはずはない。
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