行政書士 定年なく稼げる独立志向者向けの“資格の登竜門”――「社会に馴染めない人たち」の受け皿、人生のセーフティーネットにも
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「行政書士証票」を提示する中堅インタビュイー |
- Digest
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- 独立志向を胸にサラリーマンに
- 雇われ行政書士からスタート
- 4年目に「いけるな」と実感
- 開業前にやっておけばよかったこと
- 建設業のお客さんが8割
- 活動範囲は政治に左右される――市民目線なき縄張り争い
- 半年で836人が廃業
- 3人で約3千万円
- コストのほとんどは人件費
- 価格競争になりがち、能力の差が出にくい仕事
- 係長によって行政窓口のルールが変わる
- 売上の展開――同じ顧客にダブルライセンスで別サービス
- 雇用・職業としての安定性――世帯年収2千万はいる
- 外国人就労ビザ市場が拡大する可能性
- 建設許可系の行政書士、1日の流れ
- 進まぬIT化、長い待ち時間で「二度と嫌」
- デジタル化する=我々の仕事がなくなるとき
- 産廃業のヤバい客「どうやって断ろうか」
- 独立志向の人向き――職人、美容師、ミュージシャン出身…
- 「予備校産業の口車に乗るな」――新卒一括採用社会を補う

独立志向を胸にサラリーマンに
過去10年の行政書士試験:受験者、合格者、合格率 |
もともと大学生の頃から、独立志向がありました。でも、いきなり独立するわけにもいかず、まずは普通に就活して、誰もが知っている大手小売業に入社。6年間のサラリーマン時代に5つの店舗で店長を経験し、働きながら『ユーキャン』通信教育を9か月やって、行政書士に合格しました。
資格試験のなかでは、入門的な位置づけでもあり、それほど難易度は高くないです。当時の合格率は5~6%でした。
2017年1月31日に発表された2016年度の行政書士合格者数は4,084人で、合格率は9.9%だった。受験者数が6年連続で減少する一方、合格者数はあまり変わっていないため、近年では合格率が上昇傾向にあり、難易度は下がる傾向にある。司法書士の合格率が3%程度なのに対し、行政書士は10%くらいだ。
難易度は『公務員試験の地方上級と同じくらい』と言われる。つまり、国家Ⅱ種くらい。宅建と並び『資格の登竜門』とも言われ、最初が宅建で、次が行政書士。行政書士の勉強をすれば、自分が資格試験に向いているかがわかる。試験内容の多くは、司法試験とも被っている。
TACの通信講座(2~3万円)を受講して2013年に行政書士試験に合格、現在は司法書士を目指して勉強中というアラサーのKさん(慶大法学部卒)は、「行政書士は、半年の時間を費やせば、試験は通りやすい。採点基準が不明瞭な論文試験がないので、努力は報われやすい」という。
行政書士になる道としては、他の4つの資格保有者(弁護士・弁理士・公認会計士・税理士)は、登録するだけでなれる。また、公務員(行政職)を20年やった人も、行政書士登録が可能。この方法で、元財務官僚の片山さつき議員が、行政書士登録をしている。
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行政書士主要業務報酬額一覧表。東京都行政書士会が、報酬を掲示するよう指導している。行政書士の業務範囲が幅広いことが分かる。![]() |
雇われ行政書士からスタート
僕が受かった時点では29歳で、会社を辞めて1人でやる、と言っても両親が納得しませんでした。そこで、行政書士の求人が出ていた中堅の行政書士法人が1社あったので、まずは、そこに入社。1年ほどスタッフとして働きました。
その会社が建設業向けの許認可代行を中心にやっていたので、自分の専門も自然とそこになった、という経緯です。
その会社は40~50人の規模で、行政書士法人としては大規模であり、建設業の許認可を専門に手掛け、分業制でした。①営業、②書類作成、③許可/経営事項審査(入札)④入札参加資格(2年に1回のプロジェクト的なもので、どの自治体に出すか)⑤企画部(社長直轄)、の5つほどの部署がありました。
自分は「営業」「入札参加資格」「企画部」に所属。肝心の、申請書類を作る経験は積めませんでした。はやく一通りの業務を覚えたかったのと、もともと独立志向があったのとで、1年足らずで辞めました。
機会があって(募集自体がほとんどない)、小規模な事務所で、一通りを経験できるなら、教えて貰えるので、勤め人から始めるのもよいと思います。
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上:行政書士関係法規集を提示する若手行政書士 下:行政書士の紋章であるコスモスマーク ![]() |
行政書士は、設備投資が不要な仕事で、資格さえあれば机ひとつでできてしまうため、大規模化するメリットといえば、分業によって業務を効率化するくらいしかありません。ゼネコンなど大企業になると社内の専門部署が自前で申請業務を行いますから、大企業からの継続案件もあまりなく、こちらが大規模化する必要がないのです。
逆に、大企業になると、社員が顧客を持ったまま独立してしまうなどのデメリットがあります。その最初に入った会社も、過去に顧客リストを持ち出されたり、お客さんをそのまま持っていかれたりした苦い経験がありました。
したがって大規模な行政書士法人が、ほとんどありません。資格をとったら、いきなり自分1人でやり始めるケースが、業界では圧倒的に多いです。ほとんどの人は、教育係のような上司や先輩がいないなかで、お客さんに迷惑をかけながら覚えていくのが実態です。
建設業向けだと、お客さんのところに行くばかりなので、自宅に打ち合わせスペースはいりません。産廃や運輸、パチンコ店といった法人相手でも同じ。一方で、NPОの設立登記代行やビザの取得代行といった個人向けになると、打ち合せスペースが必要なので、事務所はあったほうがよいです。
4年目に「いけるな」と実感
勤め人を辞め、30歳で、自宅を事務所兼用にして、個人で開業しました。まずは、お客さんを開拓しなければいけません。僕が、試行錯誤を繰り返して「何とか食べていけるな」と思えるようになったのは、4年目くらいのことです。
今は手一杯でこなせないくらい仕事がきていますが、当時はゼロからのスタートで、最初は苦しみました。今思えば、集客のためにもっとこうすべきだった、という反省もありますので、どうやって今に至ったか、詳しくお伝えしようと思います。
まず、最初の2年くらいは、自学自習でネットの勉強をしながら、検索からの流入を促すSEO対策を地道に続け、ウェブサイトに改良を重ねつつ、サイト経由での集客を試行錯誤しました。最初は、うまくいきませんでした。
紙のチラシについては、
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行政書士登録通知書。登録すると維持費が年10万円ほどかかる。登録しないと仕事をしてはいけないことになっている。
損益計算書、販管費内訳、貸借対照表(フルタイム行政書士3人体制)。仕入れがなく、大半を人件費にできる。広告宣伝費も多め。
職務上請求書ガイドライン。資格を悪用して個人情報を探偵や情報屋に売る事件が発生し、行政書士から職務上請求の権限を剥奪しようという議論がある。
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