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動物実験で立証済みの危険な遺伝子組み換え食品、表示ラベルは抜け道だらけ――食用油、豆腐、発泡酒などに要注意

情報提供
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遺伝子組み換えトウモロコシを食べて乳腺の腫瘍を発症した実験用のラット。(出典:カーン大学の論文)
 仏カーン大学が遺伝子組み換えトウモロコシの安全性を検証するラットを使った動物実験を実施したところ、腫瘍の発症・肝臓や腎臓の障害などが高い割合で確認され、メスの約70%、オスの約50%が「普通のトウモロコシ」を食したラットの平均寿命よりも早く死んだ。その遺伝子組み換え作物は大量に日本へ輸入されているが、食品ラベルの表示方法に抜け道があるため、用途は不明だ。たとえば食用油の場合、原産地表示も、遺伝子組み換え作物を原料に使っているか否かも、表示する義務がない(EUは遺伝子組み換えモノ混入率が0.9%超で表示義務がある)。豆腐は表示が義務づけられているが、全体の5%までの混入は許容範囲とされ、「国産」と表示できてしまう。だが、実験では極めて微量でも、疾病を引き起こしていた。この3月で、日本の種子法が撤廃され、モンサント社など遺伝子組み換え技術を戦略とする企業が日本に乗り込んでくる可能性もある。消費者は、なぜ選べないのか。「食の安全」を商品表示の観点から検証した。
Digest
  • カーン大学のラットを使った実験
  • 多国籍企業の誘致と規制緩和の中で
  • 除草剤をかけても枯れない作物
  • 動物実験で設定された10のグループ
  • 除草剤と環境ホルモンも関係
  • リスクのあるマーガリン、マヨネーズ、ドレッシング・・・
  • 輸入作物でも「国内製造」で承知
  • 危ない豆腐の表示
  • 化学物質の逆襲
  • 日清オイリオグループ(株)の見解
  • (株)J-オイルミルズの見解

今年3月末で種子法(主要農作物種子法)が廃止され、新しいタイプの公害が海外から到来しようとしている。この法律の下でこれまで、日本の主要な農作物(具体的には、稲、大麦、はだか麦、小麦及び大豆)は、国の管理下で品種改良などを行い、種の保存と普及が推進されてきたが、グローバリゼーションとそれに伴う規制緩和の中で、遺伝子組み換え種子を売り物にした多国籍企業に、その役割をゆだねる流れが、本格化しはじめているのだ。

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遺伝子組み換え作物の使われる米国モンサント社の除草剤「ランドアップ」。微量でも毒性がある環境ホルモンである。 (出典:INDEPENDENT)

他の関連法の「改正」が進めば、多国籍企業に日本の農地を開くことにもなり、その結果、すでにわれわれの食卓にあふれている遺伝子組み換え食品が、これまでとは比較にならない規模で広がりかねない状況だ。

その遺伝子組み換え食品は、果たして安全なのか。問題があるとしたら、その使用実態は消費者に分かりやすく表示され、遺伝子組み換え食を避けたい人は、選ぶことができる制度になっているのか。

カーン大学のラットを使った実験

2012年にフランス・カーン大学のセラリーニ教授らが行った遺伝子組み換え食品の安全性を検証する動物実験の結果は、世界に衝撃を与えた。ラットに遺伝子組み換えトウモロコシなどが混じった飼料を与える実験で、開始4カ月目から腫瘍を発症するラットが現れた。そのほか、さまざまな病変が現れ、最終的にメスの約70%、オスの約50%が、比較対照とした「普通のトウモロコシ」を食べたラットよりも、早期に死亡した。

この実験は、2年という、ほぼラットの寿命にあたる長い期間を設定して行われた。それより前に、米国モンサント社が同じ類型の実験を実施していたが、期間はたった3カ月で、しかも、安全性に問題はないという結論を出していた。これは、自社が開発した遺伝子組み換えトウモロコシを使って行われた実験であるため、安全性のアリバイづくりが目的と言っても過言ではない。

これに対し、カーン大学の実験は、遺伝子組み換え作物の真実を検証するために実施された。実際、セラリーニ教授らは、企業からの資金援助を受けないことで、実験の公平性を担保した。そして、遺伝子組み換えトウモロコシの危険性を示唆する実験結果が出たのである。

もちろんラットと人間は別種で、寿命にも大きな差があるが、生物学的な観点からすると、実験結果は、人類に災いしかねない食の悲劇に対して警鐘を鳴らすことになった。

多国籍企業の誘致と規制緩和の中で

食糧自給率が低い日本では、消費者が知らないだけで、すでに多量の遺伝子組み換え作物が輸入されている。そして、さまざな加工品に化けて食卓の中にまで入り込んでいる。

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2012年の日本の主要農産物の国別輸入割合。大豆の場合、最大相手国である米国はいうまでもなく、2位のブラジルと3位のカナダでも遺伝子組み換え作物が栽培されている。(出典:農林水産省)

しかも、その中には原材料などの表示義務が免除されているものが多数含まれている。そのため、消費者は遺伝子組み換え食品を食べていることを認識できない。知らないうちに多量の“毒”を体内に取り込んでいる可能性が高いわけである。

たとえば食用油は、遺伝子組み換え作物を原料としているかどうかの表示義務が、免除されている。国内で生産されるコーン油と菜種オイルの大半は、その原料を、海外からの輸入に頼っている。

国内大手のJ-オイルミルズに、同社の商品『コクとうまみの大豆の油』について聞くと、「わたしどもの原料は不分別の品でして、遺伝子組み換え作物が混じっている作物でございますが、割合についてはご案内させていただいておりません」と、混入はあっさり認めるものの、その比率が5割なのか9割なのか、比率は開示しない(詳細は後述)。

この対応はどの大手メーカーも同様で、消費者は混入の有無も比率も、何らの情報も食品表示から知ることができない仕組みだ。6年前の状況から何ら変わっていない。

これは、グローバリゼーションの中で、日本政府が、モンサント社などの遺伝子組み換え技術が使用された海外産の安価な農作物を輸入しやすくする政策を取っているためだ。国民の健康リスクをかえりみず、規制を緩くしている。今年4月に予定される種子法の廃止も、こうした流れの中で取られた措置にほかならない。

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日本の食料自給率の変遷。カロリーベースで38%しかない。(出典:農林水産省)

除草剤をかけても枯れない作物

まずは、遺伝子組み換え作物の毒性の根拠を、カーン大学の動物実験を踏まえて詳しく説明しておこう

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安田節子さんの著書、『消費者のための食品表示の読み方―毎日何を食べているのか』(岩波ブックレット)。

スーパーの食用油売り場。さまざまな食用油が販売されている。(撮影:黒薮哲哉)

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ナカボウ コウヘイ2019/06/04 19:56
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