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インバウンド連続赤字のJTB 遅れるグローバル対応、硬直的な組織・人事

情報提供
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赤線:日本人の出国者数推移。棒グラフ:インバウンド(訪日外国人)人数推移
 4年で3倍の急伸を見せるインバウンドだが、旅行最大手JTBは需要増を取り込めず、2018年3月期も、訪日客向け「グローバル事業」が2年連続の営業赤字に沈没。利益の6割を稼ぐ主力の国内法人事業は人口減で先を期待できず、出国人口も2012年の1,849万人が歴史上のピークとなりそう。同社は海外赴任数を年々増やすなど慌てて国際化を進めているが、執行役員以上の61人は全員が日本人(うち60人が男性)で、その出自からドメドメな国鉄カルチャーが色濃く、硬直的な組織・人事で、急速な変化に追いつけていない。新事業提案制度もなく、定期異動ばかりだという。「インバウンド増の影響で、ここ数年に入ってきた人は優秀な人が多い印象で中途社員も増えていますが、オンライン勢に持っていかれている」「機動的で柔軟なプロジェクトベースの組織・人事運営が必要」――そう語る複数の30代中堅社員に、現場の実情を聞いた。
Digest
  • 対グローバルOTAで15社統合
  • 人気の就活――法政・明治など目立つ
  • 年3~4億円の販売ノルマ
  • 竹刀を振り回す上司もいた時代
  • 強みは在庫力、ブランド力、営業力
  • 「感動プロデュース業」というやりがい
  • 増える海外経験チャンス、安定志向の社員たち
  • 離職率10年で5割、新事業提案制度ナシ
  • 代理店マージン10~15%を打ち破れるか
  • インバウンド販促プロモーション
  • 「課長の女性比率4割」その実情
  • 最終退社時刻21時厳守
  • 煩わしい手続きの代行業
  • 旅行は、確かに行きやすい
  • 「ジョッキに靴下入れて飲ませる」時代も
  • 年収800万円までは稼ぎやすい会社
  • 支店長・部長クラスは10人に1人くらい
  • 「リーマンショック」「大震災」…“波”をまともに受ける業界

対グローバルOTAで15社統合

訪日客が予想外の急増を始めたのが、2014年。日本の歴史上、はじめて訪日客数が出国日本人数(1621万人)を超える逆転を見せたのは、その翌年の2015年だった。2017年は2,869万人となり、4年で3倍という異常な伸びを見せ、ホテルや外食・小売など国内の旅行関連業界は潤った。2020年には4千万人超も予想されている。

だが訪日客の多くがグローバルOTA(Online Travel Agent=ネット旅行代理店)を利用し、JTBは仕事にできていない。2018年3月期のグローバル事業は、39億7500万円の営業赤字だった(前年度は1400万円の営業赤字)。

一方の日本人海外出国数は1700~1800万人で成熟しきっているため、成長市場であるインバウンドの収益化は課題だったが、取り込めないまま4年が過ぎ、その間にJTBがやっていたのは「大枠のグループ組織いじり」という、あまり本質的ではない、内向きな仕事だった。いったん分解した組織の再統合という、穴を掘って埋めるような作業で、経営陣の見通しの甘さは否めない。

JTBは12年前の2006年4月より、地域や機能(法人、個人、ネット…)の専門家を育成する名目で、JTB首都圏、JTB西日本、i.JTBなど、事業会社を独立させる戦略をとった。そのうち、沖縄を除く国内10の地域会社(JTB北海道、JTB東北…)と、法人向け販売会社(JTBコーポレートセールス)など機能特化会社の、計15社を再統合し、2018年4月、社名をカタカナからアルファベットに変えて(株)JTBとした。

今後は「国内個人」「国内法人」「グローバル」の3つのビジネスユニット(BU)が中心となるが、稼ぎ頭の「国内法人」事業は、すなわち旧JTBコーポレートセールスを中心とした事業を指し、現場の仕事も変わらない。15人いた「社長」が1人になり、その肩書が社長→本部長以下に変わるだけ、ともいえる。

※旧JTBコーポレートセールスは、首都圏における法人事業会社だった。全国各地の事業会社(JTB西日本、JTB中部…)にも法人事業の事業部や支店があり、それが今回、1つのBUに統合された。

これまで、社員が使うスマホの回線や機種、ノートPCに至るまで、15社ごとに契約が異なるため、同期入社でも、所属する会社によって異なるデバイスを使っていた。当然、スケールメリットを生かせない。同じ旅行業で使用するスマホやノートに地域特性があるはずもない。単なる無駄なコスト高を、経営陣が放置していたわけである。

電電公社をはじめ、強すぎる独占企業が分社化や分割を迫られる例(マイクロソフト、フェイスブック…)は多いが、シナジーがある同じ事業内容において、自ら進んでコア事業を地域分社した例は珍しい。そもそも、遠出せず地域内で完結する旅など面白くないので、代理店の社員は他の土地を経験しているほうが、顧客メリットがある。

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JTB発表の新組織図(2018年4月~)

実際、エクスペディア、アゴダ、ブッキングドットコムといったグローバルサービスがこの10年で強くなり、「このままではグローバルOTA(Online Travel Agent=ネット旅行代理店)に対抗できない」ことを統合の理由にあげている。事業環境が変わったというが、インバウンドは予想できなくとも、グローバルOTAの台頭くらいは予想できなかったのか――との疑問はある。

JTBは訪日外国人客向けサイト「JAPANiCAN.com」を2007年に立ち上げ、同名の専業会社も設立したが、市場の伸びより低成長にとどまり、振るわず。その後、株式会社i.JTB によって吸収され、さらにこの4月、(株)JTBに統合された。

JTBは、日本人は全員が知っている会社だが、海外でのブランド認知度は、ほとんどゼロに近い。「日本人が海外旅行する際に現地の旅行会社のサイトを見に行かないのと同じで、外国人が日本を旅行するときは母国の代理店かグローバルOTAを使う

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就職人気は相変わらず1位(2017年、文系)。学生は旅行が楽しいことと仕事が楽しいことの区別がつかない。別名「情弱ホイホイランキング」。2012年、リクルートは価値観の多様化等を理由にランキング公表を廃止済。

JTB社員が逮捕、懲戒解雇となった“狂言”事件

JTBは女性の管理職比率1位だという(2018年5月発表、『日経ウーマン』調べ)

JTBのキャリアパスと報酬水準(グローバル総合職、2018年)

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社員逮捕2018/08/09 17:17会員
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