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大和ハウスよお前もか 20年一括借り上げで「大丈夫」だったはずのアパート経営、築7年で一方的に契約解除の無責任

情報提供
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「重たいものをしょっただけ。アパート経営などやるんじゃなかった」と大和ハウスでアパートを建てたことを後悔するAさん。希望退職に応じ、退職金を大和ハウスのアパート経営につぎ込んだ結果、窮地に陥ってしまった。
 管理戸数54万戸という、大東建託に次ぐ規模のアパート建設管理業部門を持つ大和ハウス工業(樋口武男会長、芳井敬一同社長・本社大阪市)が、「大丈夫」と安心させて販売したアパートの20年一括借り上げ契約を、経営が苦しくなったとみるや、わずか7年目にして、オーナーとろくに話し合いをすることもなく一方的に解除していた事実が判明した。男性は、契約解除の無効を訴えて裁判を起こし、一審・釧路地裁は、オーナーの一部勝訴を言い渡した。大和ハウス側は控訴し、なおも争っている。「建てるときは“大丈夫です”と繰り返した営業マンは、苦境に陥ったとたんに手の平を返したように冷淡になりました。建築費用も割高だった、と後から知りました」と男性は憤る。借金をさせて建てさせ、利益を出したら、あとは野となれ山となれ、借金返済に窮したオーナーなど見捨ててしまえばよい――そういわんばかりの冷酷な企業体質が浮き彫りになった。
Digest
  • 「重たいものしょっただけ」と後悔
  • Uターンして脱サラ計画
  • 土地を買ってアパート
  • 手取り月7万円に不安
  • 甘かった試算
  • 大和ハウスが一括借り上げを一方的に解約
  • 「借り上げ契約解除は無効」判決
  • 相場よりも何倍も高額だった建築費

「重たいものしょっただけ」と後悔

「やる必要はなかった。重たいものしょっただけ。一つ間違えば破産しなきゃならない」

そう嘆くのは、北海道の自営業者Aさん(52歳)だ。事務機関連の自営業を切り盛りする傍らで、1棟6戸(1LDK)のアパートを経営している。

「やる必要がなかった」と後悔しているのは、賃貸アパート経営のことだ。釧路にわざわざ土地を買い、7年前に、大和ハウスで建てた。建設費は5500万円。銀行とノンバンクから借りた。実家の建物と土地を担保にした。ほかに土地の購入費が数百万円かかったが、これは自分の貯えから出した。

大和ハウスが20年間の一括借り上げをする、空室時には家賃保証をする。だから大丈夫――と言う営業マンらの話を真に受け、全財産をかけた事業に踏み出した。土地も大和側の斡旋だった。

しかし、次々に発生する予想しなかった出費や、2倍になる固定資産税など、大和ハウスから事前に聞かされていなかったことが続発。利益は予想したよりも薄く、5年をすぎたあたりから資金のやりくりが苦しくなる。

もはやこのままでは無理だと判断して、金利の高いノンバンクと返済条件をめぐって交渉を試みる。その交渉がうまくいかず、仮差し押さえの登記をされてしまう。すぐに交渉を再開して差し押さえは解除となったものの、大和ハウスはこれを機に、態度を一変させる。一括借り上げ契約と管理契約を一方的に破棄してきたのだ。

我が社に任せておけば大丈夫――という話が、一転して、「勝手にやれ」と言わんばかりに突き放してきたのである。契約書の「特約」を根拠に、突然、家賃支払いを停止されたのだ。これも、大和ハウスから事前に聞かされていなかったことだった。

やむなくAさんは、自力で客付けをやり、別の不動産会社に管理を委託した。幸い客がついて、現在は経営を維持できている。しかし、将来、空室が出て返済できなくなるのではないか、と不安を抱えている。借金が払えなくなれば破産せざるを得ない。担保である実家を失うことにもなりかねない。綱渡りのような毎日を送っている。

もともと、アパートなどに興味はなかった。脱サラをして起業することを考えていたところ、異業種の自営業者団体を通じて、ある人物と知り合い、大和ハウスの営業マンを紹介された。それが、すべてのはじまりだった。

以下は、Aさんが語る顛末詳細と、裁判所の判断である。

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大和ハウス工業東京本社。賃貸アパート経営部門は好業績だと伝えられる。

Uターンして脱サラ計画

Aさんは地元北海道の文房具メーカーのサラリーマンだった。23年務めた。年収は約800万円。

「新しい事務所とかに、机とかいすをレイアウトして納品するような仕事です。デザイナーとレイアウトすることもありました」

やがて東京に転勤したが、40歳を過ぎたころから、故郷の北海道に戻りたいと考えるようになった。東京で一生を終わりたくなかった。

そんな折りに希望退職の募集があった。Aさんは思い切って退職する決心をする。北海道にもどって商売をやろう。北海道勤務のときの人脈がある。それを使えばなんとかできそうだ、と思った。2009年のことだった。

会社を退職したAさんがまず頼ったのが、かつてサラリーマン時代に所属していた札幌の異業種の経営者団体だった。そこで知り合った男が接近してきて、食事に招かれた。彼は愛想よくこんなことを言った。

「商売もすぐにはうまくいくとは限りません。副収入があったほうがいいですよ」

なるほどと納得した。男の言う「副収入」とはアパート経営のことだった

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大和ハウス工業の賃貸アパート管理戸数は、2018年3月末時点で、約54万戸、オーナー会会員約3万5000人、一括借り上げ入居数97・3%という(同社HPより。一部画像処理で強調)。

大和リビングの一括借り上げ契約書。仮差押、仮処分、強制執行、競売、滞納処分による差し押さえの申し立てがあった場合は、無催告で契約解除できるとの特約がある。しかし、釧路地裁はこの特約について「信頼関係が破壊されている」場合に限り有効だとの判断を示した。

Aさんのアパートに仮差し押えがされたことを理由に一方的に借り上げ契約を解除したことについて、解除は無効だと判断した釧路地裁の判決。仮差し押さえをめぐる事情をろくに調べようともしなかった大和ハウス(大和リビング)の姿勢を問題視した。

大和ハウスが管理する賃貸アパートの入居者募集状況(北海道都市部)。築10年をすぎた物件は家賃が下落しているようにみえる(大和ハウスのHPより)。

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etokoro2018/09/24 08:37

“アパートの20年一括借り上げ契約を、経営が苦しくなったとみるや、わずか7年目にして、オーナーとろくに話し合いをすることもなく一方的に解除していた”【アパートは供給過剰!建築の規制が必要ですね。】

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読者コメント

  2018/08/15 23:39
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