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実名手記・僕が『秋田魁新報』入社7年目にブラック労働環境を労基署に告発し、労災認定を受けて退職に追い込まれるまで〈上〉

情報提供
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秋田魁新報社(本社)
「お前、社内で蛇蝎(だかつ)のように嫌われているよ」。新聞社を辞めて4年近くになる2018年11月、秋田市内での会合で、特に付き合いのなかった同社幹部とたまたま隣席になり、そう言われた。私は現在、会社を興し水産加工業を営んでいる。幹部がどういう意図でそのような発言をしたのかは知らない。だが、私が法を犯して、同社が責を負った訳ではない。自業自得を、他者に責任転嫁して恥じない姿勢に、呆れ果て、手記という形で筆を執ることにした次第だ。私が体験した事実を、私の視点から正確に記述した。どう判断するかは、読者の皆様にお任せしたいと思う。
Digest
  • 27歳で地元にUターン就職
  • 警察担当に配属
  • 週刊誌と新聞の違い
  • 全く眠れなくなり人事部へ
  • 「俺は独自取材なんて評価しない」
  • 文章をどこで区切れば分からなくなり…
  • 怒鳴り声が響く職場
  • 出版部でパワハラ、引き金が引かれる
※編集部注:本稿は実名手記です。筆者は、過労死水準の長時間・パワハラ環境で、うつ病を発症。社内のパワハラ相談窓口へ相談するも解決せず、労組も動かないことから、労災認定を求め労基署へ告発。臨検を経て、会社に半年分の未払い残業代(記者職など約220人に計約7500万円)の支払いを命じる是正勧告が出て実際に支払われる。だが、公益通報者は保護されず、陰険な嫌がらせがエスカレート。病状は悪化し、2014年12月、労災認定と同時に退職へと追い込まれていった――。

27歳で地元にUターン就職

「週刊誌は嘘ばかり書いているんでしょ?新聞は事実しか書いちゃいけないけど、大丈夫?」

秋田魁新報社の採用面接(2008年度・秋採用新卒枠)で、そう言われたことが印象に残っている。2007年7月まで、私が週刊誌『FLASH』(光文社)で記者をしていたゆえの質問だった。前職を全否定する言葉ではあるが、椅子を蹴って帰る訳にもいかない。家庭の都合で帰郷したのだ、まずは職に就かなければならない――。その場は反論することもなく受け流し、内定を得た。

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在籍当時の給与明細(2012年12月)

同社は秋田県内で24万部近く(2013年)発行する地方紙で、県内シェアは6割を超える。

新聞不況と言われながらも、毎年、春・夏・秋・冬、と4回も手当が出る。正確には、賞与が年2回(6、12月。額面の2カ月半程度)、春季(3月)と秋季(9月)に、額面で10万円ほどの手当が出ていた。

毎月の給与自体はマスコミ業界では低いほうだが、年収ベースだと1年目から500万円ほどになり、地元にある企業では給与がトップクラス。とりあえず、生活の基盤を確保できたことに安堵した。

多くのマスコミがそうであるように、新卒中心の定期採用において、年齢上限は緩い。私も定期採用枠での入社となり、同期は自分も含め、5人。筆記試験と2度の面接で内定だった。新聞社らしく、年齢は新卒から自分と同じ年齢の27歳までさまざまだったが、社会人経験があるのは、私と営業職で入社した1人だけだった。

公式発表によると、直近では2017年度入社7人(男4、女3)、2016年度8人(男4、女4)、2015年度8人(男6、女2)、2014年度4人(男性3、女性1)。全従業員が256人(2017年10月現在)なので、新規採用は例年、1ケタである。

同志社大学を2003年3月に卒業し、東京の小さな出版社に就職。その後、フリーで編集やライターをしていたところ、週刊誌で仕事をしていたライターに誘われ、『FLASH』と業務委託契約を結んだ。同誌ではグラビアを中心にディレクションをしていたが、時折、芸能の取材も行った。グラビアの撮影に同行し、打合せ、取材…と目も回る忙しさで、仮眠室が家と化していたが、特段、気にはならなかった。

長時間労働どころの騒ぎではなかったが、好き勝手に取材して歩く生活に、ストレスは皆無。そうした自分が、まさか長時間労働で潰れ、体がまともに動かなくなるとは、入社前には想像もしていなかった。

警察担当に配属

秋田魁新報に入社した2008年4月、記者として社会部の警察担当に配属された。警察担当は読んで字のごとく、事件事故の取材だ。担当は、キャップを筆頭に、サブキャップ、裁判取材担当、それに新人3人の、計6人だった

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公式サイトの採用ページ。労基署から是正勧告を受けた件は、なかったことになっている。ブラック労働環境や、改善の取り組みについても一切、触れておらず、反省は見られない。

出版部時代に編集した書籍『あきたの寺』(発売は2014年9月にずれ込んだ)

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