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実名手記・僕が『秋田魁新報』入社7年目にブラック労働環境を告発し、労災認定を受けて退職に追い込まれるまで〈下〉

情報提供
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筆者近影(本稿は実名手記である)
 筆者は2008年4月、秋田魁新報社に新卒入社し、社会部に配属となったが、過労死水準の長時間・パワハラ環境で、うつ病を発症。社内のパワハラ相談窓口へ相談するも解決せず、労組も動かないことから、労災認定を求め労基署へ告発するに至った。その裏では、どのような経緯があったのか。なぜ会社は、明らかなコンプライアンス違反を指摘する記者を守れないのか。告発者本人が、実体験を報告する。
Digest
  • 是正勧告が報じられる
  • 原稿全差し替え事件
  • パワハラ相談「利用者第一号だよ」
  • 弁護士に相談すると…
  • 労基署「相談コーナー」へ足を運ぶ
  • 労基署の臨検と会社側の対応
  • 労組に労災を訴えてからの会社の対応
  • 機能しない労組「お前のために労組が存在しているのではない」
  • 退職したら嘘のように体調回復

是正勧告が報じられる

2014年6月、秋田労働基準監督署の捜査が入り、10月30日付で会社が是正勧告を受けた。その時の様子を2014年11月6日付『産経新聞』は以下のように報じている。

地元紙「秋田魁新報」を発行する秋田魁新報社(秋田市、小笠原直樹社長)が、秋田労働基準監督署から労働基準法違反に当たるとして未払い残業代などを支払うよう是正勧告を受けていたことが5日、分かった。同社は編集局の記者を中心に約220人の1~6月の未払い残業代と深夜割増賃金計約7500万円を支払うと明らかにした。

 同社によると、部署によって固定の残業代を定める定額残業制をとっているが、規定の残業時間を超えたときの残業代を支払うよう、秋田労働基準監督署から7月に改善指導があり、10月30日に是正勧告を受けた。(後略)

この告発者が、在職中だった私である。

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労基署が会社に対して行った是正勧告書の控え

当時、「告発者は誰か」と騒ぎになったが、特に隠すつもりもなかったので、私であることはすぐに判明した。ちなみに同年6月の同社労組組合報によると、4月16日から1カ月の残業時間は、記者職で16人が80時間を超え、最長は145時間だった、と同社は団体交渉の中で話している。

過労死ラインとされる残業時間は月80時間だが、同社の佐川博之編集局長は労組に対し「体調不良と長時間労働の関係性は推し量れない」と答えている。

以下、どうやって労基署への告発に至ったのか、告発の数か月前から振り返ってみよう。なお、入社からの経緯は以下のとおり。

【時系列】

2003年 3月:同志社大学卒業、零細出版社に就職。
2007年 7月:7月まで『FLASH』等で契約記者。家庭の事情でUターン就職へ。
2008年 4月:秋田魁新報社へ新卒採用の枠で入社。社会部へ配属。警察担当
2009年 4月:司法サブキャップに昇格
2009年10月:整理部へ異動。体調不良で通院開始。
2010年 4月:再び社会部へ異動。
2011年 6月:デジタル戦略室へ異動。主に記事のデータベース化を行う。
2011年12月:労組を介して会社に一度目の抗議。
2012年   :デジタル戦略室にて耐え忍ぶ日々。
2013年 4月:会社へ労組を通じて二度目の抗議。
2013年10月:出版部へ異動。
2014年 6月:秋田労働基準監督署へ労災申請。
2014年12月:秋田労基署より労災認定を受ける。退職。

原稿全差し替え事件

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「2014年10月30日付の秋田魁新報社への是正勧告書」開示を請求した。労働局の企業利益中心主義がよくわかる。

2014年4月、在籍していた出版部を統括する所属長が交代。東京支社から異動してきた佐藤典専任局長が、その任についた。

その頃は、ムックの工程を都度で佐藤専任局長に伝え、許可をもらって、作業を行っていた。しかし5月中旬ごろにムックの原稿のほぼ全てを入稿した際、突如、佐藤専任局長より「文字が小さいから直して」と言われた。

レイアウトデザインを提出した上で作業を進めていたのに、入稿作業が終わった後に言われても、それは無理な話である。

結局、原稿は全て差し替えとなり、レイアウトデザインを請け負った外注先と私は、恐慌状態に陥った。

雑誌であれ書籍であれ、出版で発売日を動かすなんて、常識的にあり得ない。また、外注先へはムックが完成してから外注費を支払うことで合意している。すべてをやり直すことになれば発売日は延期し、それに合わせて外注費の支払いも延びる。

外注先は、自らに過失がないのに支払いを延期される覚えもない。また、業務が延長するのに支払い額が変わらないのはおかしい、と暗に言われた。当然だ。私が向こうの立場なら、同じことを言う。

上記のことを佐藤専任局長へ説明したが、考えを改める気配はなかった。こちらが話せば話すほど、佐藤専任局長の態度は硬直化していった。

パワハラ相談「利用者第一号だよ」

労組委員長であった泉孝樹次長に話をしても、「自分が世話になった人だからな」と埒が明かず、人事部のパワハラ相談窓口へ、メールを出した。数日後、「利用者第1号だよ」と人事部の人間が苦笑いして、案内された部屋に向かうと、そこには佐藤専任局長が、不快そうに眉間にしわを寄せて座っていた

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報道される前日に、社内向けの説明会で社長が話した書き起こし記録

労組報。泉委員長は「お前のために労組は存在しているのではない」と吐き捨てた。

2013年2月の給与明細

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2019/04/22 21:50
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