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順天堂医院精神科閉鎖病棟で安全管理ミス、患者が飛び降り自殺――初歩的な医療過誤で人命失うも隠ぺい

情報提供
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メンタルクリニック閉鎖病棟はこの建物8F
「うつ病、自殺防止は今の社会問題だと思います。その問題を助ける側の病院で、この様な事があってはならないはずです。この点を一番の社会問題として皆さんに知って欲しいです」(遺族)。順天堂大学医学部付属順天堂医院(東京都文京区・髙橋和久院長)で2017年10月、メンタルクリニック閉鎖病棟の安全管理ミスで入院患者の飛び降り自殺を引き起こすという医療事故が発生した。病院側は当初、謝罪もなくもみ消しを図り、その不誠実な隠ぺい体質が“余罪”の多さを物語る。病院は人命を扱うにもかかわらず、国民に対して情報開示義務はない。医療事故調への報告を隠ぺいしても罰則はなく、調査強制力も存在しないため、「闇から闇へ」が実態。医療ミスが国策で隠ぺいされ、外部と情報共有されない結果、再発防止策も講じられず次の類似医療事故が起きる、という負のサイクルが放置されている。
Digest
  • “医療ミス”で死亡させる
  • 際立つ順天堂の傲岸不遜ぶり
  • 鍵は「命の鍵」なのに…安全管理意識の低い病院
  • 抜け穴だらけの医療事故調査制度
  • 8割がた隠ぺいされる医療死亡事故
  • 厚労省も東京都も「お役所仕事」に終始
  • 民事訴訟しか解決方法がない闇
  • 社会を悪化させる利己主義的な弁護士
  • 過労死事件と同じ構図
  • 順天堂の閉鎖病棟を訪問してみた
  • 病院の閉鎖的体質

“医療ミス”で死亡させる

最初の情報提供は、2017年の12月16日。長文のしっかりした文章だ。「夫が入院先で離院し病院裏のビルから飛び降り自殺をしました。天皇陛下の心臓手術を執刀した天野医師が院長を務める順天堂医院で、安全管理の不祥事がありました」――。要約すると、話は実にシンプルで、以下の通りである。(注:院長は今月から高橋和久氏)

・会社勤めの夫(昭和40年代生れ)が、勤務先の職場環境の問題等で、うつ病を患い、飛び降り自殺の恐れがあったため、自殺防止と休養を兼ねて、9月19日に順天堂医院のメンタルクリニック閉鎖病棟に任意入院させた。

・入院二週間後の10月上旬、厳重に鍵の開け閉めを管理してあるはずの閉鎖病棟で、病院スタッフが病棟出入口のロックの確認をし忘れ、夫がその隙に離院し、院外で飛び降り自殺をしてしまった。

・病院側は安全管理が不十分だったと認めているが、謝罪がない。責任の所在が曖昧なままで、このままもみ消される感じ。

なんとも、やるせない話である。会社のパワハラで精神を病み、自殺念慮を持ってしまう。安全であるはずの病棟に保護され、これでひと安心と思ったら、こんどは病院の管理ミスによって、わずか2週間で死に追いやられてしまう。救いがない。いったい、何のための閉鎖病棟なのか。

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天野篤院長(事故発生当時)

しかも、順天堂にかかっている患者、これから診療を受けようと検討している国民は、こうした事実すら知ることができず、日々、発生する医療ミスによる死亡事故は、闇から闇へと隠され、国が病院を守る。病院側に情報開示義務は課されていない。

病院にとっては、日々、亡くなる命の1つに過ぎないのだろうが、本人や遺族にとってはかけがえのない命である。薬害エイズ問題等でも明らかな通り、人命が軽く、受益者(患者)よりも提供者(病院)の利益を重視する日本国のカタチがよく表れている。

際立つ順天堂の傲岸不遜ぶり

実際に患者が亡くなり、業務上過失致死傷(刑法)も疑われる内容であるが、病院側の不誠実な対応は、目に浮かぶようだ。なぜなら、近年、順天堂医院は非常識な対応を連発し、その傲岸不遜ぶりが世間を呆れさせているからだ。昨年だけでも、以下が報道されている。

新生児取り違え事件で、順天堂医院が被害者を恫喝(2018年4月19日『週刊新潮』)

「これって恫喝じゃないですか? ホームページでは〈心よりお詫び〉と言って世間体を取り繕って裏で恫喝する。どういう病院でしょう」(被害者)。病院側が口封じを図った事実も発覚している。

順天堂医院提訴 原告男性「死の恐怖感じた」病院の説明に不信感(2018年7月10日『産経新聞』)

「ミスがあったのなら、原因を検証し、患者に説明するのが医者の務め。病院には医療機関としてのあり方を見直してもらいたい」(被害者)。被害者の歯科医が、同じ医療従事者として憤りをあらわにしている。

順天堂大も入試不正 言い訳の非常識さに驚く(2018年12月12日『毎日新聞』社説)

 順天堂大医学部は、過去6年間の入試の平均合格率が男子9・2%に対し、女子5・5%で、全国81大学で最も格差が大きかった。女子と浪人生を不利に扱った理由について、「女子はコミュニケーション能力が高い」ことをあげ、その意味不明で自己中な言い訳ぶりが、世間を驚かせた。

いずれの事件も、事後対応の非常識さが際立っており、世間とのコミュニケーションが成立していない。「裸の王様」を彷彿とさせる。常識が通用しない、堅気ではない組織、という印象だ。

鍵は「命の鍵」なのに…安全管理意識の低い病院

2018年5月、編集部は、喫茶店個室を予約して遺族に会って本人確認を行い事情を聞いた。メールのやりとりも繰り返した。遺族が報告する内容に真実性は極めて高く、核心的な事実について嘘を言う動機も見当たらない。

直接的な原因は鍵の閉め忘れだが、閉め忘れが発生しうる管理体制を敷いていた病院のマネジメントに原因と責任があるのは明らかだ。根底にあるのは、組織的な、患者に対する安全管理意識の低さである。

「ロックを確認し忘れたのは、ハウスキーパーの人、とのことです。掃除の人に、命に関わる大事な鍵を預ける危機管理の無さに驚きました。閉鎖病棟とは特別な病棟で、色々な精神疾患の患者が入院しているため、鍵は、命の鍵です

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「医療事故調査・支援センター」(医療事故調)の対象範囲

医療事故発生報告件数の推移。報告されないままの“隠された”発生件数が多いことは、関係者全員の共通認識。

安全管理ミスで患者を死亡させてしまう順天堂医院メンタルクリニック

8Fの閉鎖病棟。受付を済ませた関係者が、専用の緑のシールを貼って、病室のあるエリアへの侵入を許される仕組みだが、このフロアまでは簡単にシールなしで来れてしまう。管理は甘く、脱走者の突破は可能、という印象。

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新生児取り違え事件の2021/02/04 15:59会員
2019/04/26 13:29
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