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サントリー「パワハラうつ病」事件 東京高裁が上司と会社の不法行為を認定し損害賠償165万円支払命令、復職プログラム開始

情報提供
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上司からパワハラを受けてうつ病に罹り、長期休養を余儀なくされたサントリー社員の大森栄さん(仮名・43歳)は、東京地裁に元上司と会社を提訴。地裁につづき東京高裁でも勝訴。その後何度も会社と交渉した結果、今月中(2016年9月)にも復職プログラムスタートの見通しがたったという。
 「降格人事にしてやる」「アホ、ボケ!お前バカか!」「その服と靴は何だ!」。上司の罵声に1日4時間さらされたこともあるサントリーの社員・大森栄さん(仮名・当時34歳)は重度の鬱病に罹り、07年7月に休職、翌年に復帰した。その後コンプライアンス室に訴えたがパワハラとは認められず、12年6月、加害N部長とコンプライアンス室長、会社を相手取って東京地裁に提訴。裁判の心労もあり14年2月に二度目の長期休養に入り現在に至る。14年7月の一審判決、15年1月の東京高裁判決ともにN部長と会社の不法行為を認定し、165万円の損害賠償支払いで確定した。ところが、判決確定後も復職できず会社の謝罪もないため、大森さんは東京管理職ユニオンに加入して交渉。その結果、今年9月中にも復職プログラムを開始することが決まった。ここに至る経過を本人に詳しく聞いた。(記事末尾で判決文など3資料ダウンロード可)
Digest
  • きっかけは有給休暇の取得
  • 「おい、お前な!その服と靴は何だ!」ヒステリー3時間
  • 「不幸そうな顔をするなよ、不幸そうな顔を」
  • 「休職したら異動させない」とパワハラ部長が恫喝
  • 東京高裁が不法行為認定、賠償金支払い決定
  • 裁判で勝ったのに復職は難航、労基署決定の労災も認めず

きっかけは有給休暇の取得

私大の文系学部を卒業した大森栄(仮名)さんが、就職先として人気が高いサントリー株式会社(現サントリーホールディングス)に入社したのは、1997年4月。配属先の業務内容は、清涼飲料水の製造需給(製造依頼作成)だった。

その後も製造依頼の元になるデータの販売予測などの業務に携わり、原材料調達から製品の在庫計画まで、サントリーのSCM (supply chain management、供給連鎖管理)業務のほぼ大半の知識と経験を持つようになった。

同時に、それらを合理化・システム化する仕事では、システムの基本ロジックのすべてに大森さんが独自開発したものが採用された。しっかり会社に貢献してきたと言えるだろう。

社内資格も取得して昇格し、客観的にも、今後が楽しみな社員だったと言える。ところが、有給休暇の取得をきっかけに事態は急変した。大森さん自身に語ってもらう。

「2006年の4月に調査開発部に配属されました。ちょうど第一子が生まれたころで、のちに問題となるパワハラ上司(N部長)とも良好な関係だったと思います。部長を含めてはじめは4人の小さなグループでした。

N部長のもと、夏休み返上で働いていたので、年末の休みに有休を取得してくれ、と部長も同意していたのです。

その部長の言葉どうり、その年のクリスマスから4日間の有給休暇を取得し、郷里の広島に帰省。翌年(07年)の1月4日まで休み、翌日の1月5日に出社しました。これがパワハラのきっかけです。

しかし部長は、12月に入ってすぐ、私に25日からの休みを取り下げるよう、要求してきました。理由は、その部長が12月18日から22日まで上海に出張しており、私が25日から休みを取得すると(23日24日は土日)、18日以降、年内に顔を合わせる事が無くなるからという事でした。

しかし私は既に新幹線のチケットなども用意していたたこともあり、夏休み返上を年末の有給取得にあてる約束もあったため、応じたくない旨を伝えました。

もし応じようと思えば、チケットの取り直しをするのか、わずかな打ち合わせのために広島から飛行機か新幹線で東京に戻って来いということになります。私は行けませんと答えました。

休みに入る前にN部長は、タスクリストという書類を提出しろと命令してきました。この書類は、自身の業務を棚卸しするためのものですが、業務は取引先とも連携して行うものも含まれているため、相手方の都合もあり、年末に出しても仕方がなかったのです」

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東京都労働委員会に対し、大森さんが加入している東京管理職ユニオンは15年10月20日、「不当労働行為救済申立書」を提出している。掲載した画像は、その申立書の2ページ。パワハラ加害上司の処分や、社内の労災規約をすぐに実行に移さないことなどに対しての謝罪文を要求した。その後、交渉を重ねたりサントリー側の担当者の交代もあり、復帰へ向けての話し合いが進められるようになった。

「おい、お前な!その服と靴は何だ!」ヒステリー3時間

有給休暇を取得して大森さんが出社したのは2007年1月5日。この日から運命が変わっていく。

「出社すると会議室に呼ばれ、叱責が始まったんです。それも叱責というより怒鳴っているだけで、その激しさに恐怖心を抱きました。

おい、お前な! とN部長の声が裏返り、その服と靴は何だ!? そういえばあのとき、と過去の話が出てきたり、止まりませんでした」

10分、20分、40分・・・。裏返った声での叱責はいつまでも終わらず「3時間近くつづいた」(大森さん)という。涙をにじませると、ようやく収まり、会議室から解放された。

「2007年には、新たなシステム開発を命じられていました。原材料の購買予算と実績との比較をしますが、実績・結果が違うと購買部門は原因を探らなければなりません。

そのために、予算と実績の乖離を毎日解析できるようなシステムを開発するタスクを、私は負わされていたのです。このタスクは2月にスタートし、6月に出来上がる予定でした。

しかしこの仕事が私のところにきたのは3月の頭だったのに、急遽4月7日完成と締切が早められました。ということは、実質3月末までに仕上げなければなりません。

細かな作業が続きました

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連日、上司から怒鳴られ叱責され、うつ病を発し、働けなくなった。

三田労働基準監督署(東京都港区)は、大森さんのうつ病を労働災害として認定した。サントリーに対して社内規約の労災規約を適用することを要求している。本サイトの質問に対し、同社広報部は、「2007年から2008年にかけての休職(注:1回目の休職)については、高裁判決に従い、業務上災害における会社制度の適用を前提に交渉を進めています」と回答している。大森さんは14年2月からの2度目の休職についても同様の扱いをするように求めている。労基署は、1回目・2回目の休みも一体の労働災害としている。

東京管理職ユニオンへの加入通知。サントリー内の労働組合では会社との交渉が進まなかったから一人でも加入できるユニオンに入った。

サントリー・パワハラ事件の解決を求めるビラが、同社のある東京都港区台場で配布された。(2016年3月17日)

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読者コメント

 2016/09/11 09:12
通り風2016/09/10 13:59
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記者からの追加情報

加害上司の退職年月日と彼に対する処分についてサントリーが答えないのは不可解である。仮にまったく処分していないとすれば、パワーハラスメントに対する会社の姿勢が問われるだろう。
本文:全約6800字のうち約5100字が
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