説明責任を果たさない東京女子医大〝疑惑の論文〟著者。佐藤康仁(筆頭著者・右上)、山口直人(最終著者・左)、小島原典子(共著者)。大学公式サイトより。
|
日本の20~30歳代で脳腫瘍が増えている。東京女子医科大学の研究グループが2016年の論文で指摘したもので、調査期間(1993年~2010年)の17年間は、携帯電話が普及した時期と重なる。だが論文は「携帯電話の使用によるリスクの上昇を大幅に超える増加なので、携帯電話が原因とは言えない」と奇妙な論理を展開し、因果関係を否定。となると原因不明の脳腫瘍が多発していることになるが、その考察はない。筆者がその後の2015年までの推移を調べると、20代30代とも、さらに増加が続いており、40代でも増加傾向だった。論文の筆頭著者・東京女子医大の佐藤康仁講師は取材依頼に対し「上司の了解が得られないので回答できない」、最終著者・山口直人氏は「佐藤氏に聞いてほしい」とたらい回し。この論文は厚労省でも環境省でも消費者庁でもなく、通信事業推進の立場である総務省の研究費による研究で、中立性が強く疑われる。
【Digest】
◇世界で脳腫瘍は増えているか?
◇日本の20~30歳代で増加中
◇「電磁波が原因でない」という奇妙な論理
◇「ケータイの使い始めが20歳未満でリスクが増加」ハーデル博士
◇1980年代生まれのリスクが高い可能性
◇2012年から40代でも脳腫瘍増加
◇東京女子医大グループは取材依頼に対し回答拒否
東京女子医大の研究チームが、公費で行われた研究結果の説明責任から逃げ回っている。〝疑惑の論文〟は、最初から忖度によって「携帯電話の影響なし」の結論ありきと思われても仕方がない奇妙な内容だ。携帯電話を使い始めた年齢が20歳未満の人は脳腫瘍リスクが高くなる、という研究事例は、海外からも出ている。将来の脳腫瘍リスクを減らすには「ケータイ・スマホは20歳を過ぎてから」が必要なのかもしれない。
◇世界で脳腫瘍は増えているか?
携帯電話が世界的にもほぼ100%普及した状況では、もしそれが脳腫瘍のリスクを高めるとすれば、世界各国のガン登録の脳腫瘍の罹患率のデータにも増加が発見されるに違いない。
|
WHOの2010年の高周波電磁界の研究アジェンダ。脳腫瘍罹患率のモニタリングを最優先研究課題(high priority)に指定 |
|
世界保健機関(WHO)も、各国のガン統計での脳腫瘍の罹患率モニタリングを、最優先研究課題に指定しているほどだ(左記)。
海外でも、そうした論文が出てきており、イギリスやスウェーデンで増加を指摘される一方、オーストラリアやカナダ・アメリカでは横ばいとなるなど、一致はしていない。
携帯を使い始めても、すぐ脳腫瘍になるわけではなく、潜伏期間が10~20年くらいある、と考えられている。
◇日本の20~30歳代では増加中
日本国内では、東京女子医大のグループが総務省の研究費で調査しており、2016年の論文で、国立がん研究センターの地域がん登録全国推計によるがん罹患データを元に20代と30代の若年層での脳・中枢神経のがんの発症率の推移を調べている。
注)国立がん研究センターの生データを、アメリカ国立がん研究所が開発した回帰分析ソフトにかけて罹患率の変化が統計的に有意かどうかを判断している。
|
|
|
日本の20歳代と30歳代で、1993年から2010年にかけて脳腫瘍の罹患率が増加している |
|
日本で携帯電話が普及し始めた1993年から2010年までの17年間で、20代、30代の若年層で脳腫瘍の罹患率が増加しており、統計的に有意な増加がみられた。
20代の男性では、年間3.9%の増加で、10万人当たりの罹患者数は、.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
|
携帯電話の使用によるリスクを前提にした予測値を大幅に超える罹患率の増加 |
|
|
出生年グループ別の携帯電話所有率の推移 |
|
|
2010年~2015年では40代男性でも脳腫瘍増加傾向が |
|
