「温厚で謙虚な人物だった」菅野薫までパワハラに走らせた電通の変わらぬ企業体質 元CDC同僚が解説する3つの背景
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パワハラの発覚で2020オリパラ演出を辞任した電通のクリエーティブ・ディレクター、菅野薫氏(電通報より) |
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- インターン採用の主役となるCDC
- データドリブンのイリュージョニスト
- 3つの背景
- パワハラ対策が機能し始めたのか
- パワハラ撲滅コミュニケーションでカンヌを
――辞任のニュースを聞いてどう思いましたか。
菅野薫氏がパワハラでオリパラ開閉会式の演出担当を辞任――という文字をテレビで観て、ビックリしました。私の知る菅野氏は、パワハラとは程遠い、温厚かつ謙虚なクリエイター、という印象だったからです。
菅野氏とは、クリエーティブのエリートが所属する「CDC」(コミュニケーションデザインセンター)という組織で、同じ時期を過ごしました。今からおよそ8年~10年前で、菅野氏が30代前半、私は40代半ばです。
もう1つ思ったのは、電通でパワハラ加害者の主流である「体育会系」ではない、クリエーティブのエグゼクティブによるパワハラ――という、新種のパワハラが発生したのか、という驚きもありました。
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CDCの組織上の位置づけ![]() |
――そのCDCとは、どういう組織なのでしょうか。
CDCは、クリエイターのエース級人材を集めた横断型の組織で、マス広告のクリエイターの重鎮から若手まで、さらには、WEB制作のディレクターから若手までといった、精鋭が集う組織です。
当時のCDCは100人前後の組織で、大きく分けると、「マス広告クリエイターの島」、「WEBクリエイターの島」、「それ以外のメディア横断型もしくは新規事業開発の島」といった、3つの違う島に分かれていました。
実績があり、特にカンヌなど海外の受賞歴がある者で占められたトップ集団ですから、若手で所属するのは、よほど社内で認められた実力や個性の持ち主でした。新入社員は、滅多に所属できません。
また、社外のプログラマーや事業開発系プロデューサーなども所属していて、革新的なビジネスを生み出す可能性のある、特異な部署でもありました。
インターン採用の主役となるCDC
電通は例年、インターン採用を行っている。これはクリエーティブの人材のみで、計10~15人。職種は、アートディレクター(デザイナー)と、コピーライターで、インターン採用組の大半は、花形部署であるCDCに配属される傾向がある。
「アートディレクター職」は、東京藝術大・多摩美・武蔵美が若干多め(といっても5人未満)で、金沢芸術工芸大と日大芸術学部から数人ずつ、というのが平均的だという。大学4年次の通常採用プロセスでも、アートディレクター職の採用が追加で行われる。
「コピーライター職」のほうは、美大に限らず、一般の大学出身者から「総合職」で採用されても、普通に配属となる職種である。
インターンの期間はのべ7日程度で、参加者は個人ワーク&グループワークをへて、各自がプレゼンを行う。「最後の発表で、順位付けされます。その上位の人が面談に呼び出され、内定。じっくり見られるので、ここで落ちたら、通常ルートでの採用で通る可能性は大きく下がることになります。同期ではクリエーティブ採用が30人くらいいて、そのうち10~15人が、インターンで決まった人たちでした」(若手社員)
――CDCでの仕事の流れは?
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採用に直結する2020年2月実施のインターンシップ![]() |
仕事の仕方としては、特にテレビCMに巨額を使うトップクライアントの、絶対に外してはいけないような重要プロジェクトは、営業サイドから真っ先にCDCに依頼が来て、そのプロジェクトに、トップクリエイターがアサインされるんです。
トップクリエイターは
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震災後の道路が復旧するさまを、実際の走行している車のデータから可視化した「CONECTINGLIFELINE」
管理職クラスから複線型となる電通の人事処遇。マス広告が衰え始めても、それと反比例するかのように、トップクリエイターの権威と報酬を、巨大なものにしていった。
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読者コメント
パワハラ、不倫をしているテレビ局員もたくさん居てて、何かしらの処分を受けている場合でも、このオリンピックに携わることが横行している。重大な問題。
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