欧州から参入のナチュラルジュース『イノセント』、販売目標の3分の1に留まり出直し――チルド市場は成長続く
2020年4月に、298円→277円(税抜)に値下げ。1サイズ(235ml)×3種を販売中。常温保存不可のチルド商品。 |
コカ・コーラ傘下で「チルド」市場※のフルーツスムージーブランド「イノセント」が、2019年7月に参入した日本市場で苦戦し、当初目標だった初年度250万本に対して3分の1程度の販売にとどまっていたことが分かった。累計では2020年末までに約400万本に終わり、設立から日本法人社長を務めた内野正仁氏は2020年12月14日付で退職。トップが実質空席のまま、戦略の立て直しを進めている。日本の、非「濃縮還元」冷蔵ジュース市場※は米欧に比べ圧倒的に未成熟で、ポテンシャルは高い。消費者の健康志向を背景に成長が続く見通し。
- Digest
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- チルド↔常温、ストレート↔濃縮還元
- 英国は濃縮還元=1割だけ、ストレート&スムージー=7割
- 日本は3.8%→4年で11.9%に急増見通し
- 高すぎる価格、安い競合、消費者の無知
チルド↔常温、ストレート↔濃縮還元
イノセントが参入したナチュラルジュース市場とは、「チルド(冷蔵)の非濃縮還元」で、米欧と日本のスーパーとで、もっとも品揃えのギャップが大きいマーケットの1つ。この「冷蔵」と「濃縮還元」については、消費者がラベル表示から、概ね見分けることが可能である(※ミックスジュースは難易度が高い)。
わかりやすいよう、代表的な製品名を図にプロットしたのが以下だ。1~4の番号順に、おいしくて安全で健康的で栄養素も自然のままだが、その分、コストがかかるため、価格帯も同じ順番に高い。だが日本の消費者はこの知識がないため、真面目にコストをかけてよい商品を提供しているメーカーが損をしているのが実情だ。
※チルド(冷蔵)=製造・流通・販売の全過程が0℃~10℃の冷蔵状態で管理されねばならない飲料分野。「65℃10分以上相当」という法定基準をギリギリ満たす低温殺菌とすることで、味・香り・栄養素が壊れにくいが、常温保存できない。逆に、常温保存とするには、高温殺菌・高温充填が必須となる。
チルド品は購入後も劣化が速く、賞味期限が短い。温度が下(冷凍)でも上(常温)でも品質が維持できないため、同じコーラ社でも、常温のまま長期保存が可能なアクエリアス・爽健美茶・コーヒー・コーラ等より、格段にコストが高い。消費者は、保存方法が「要冷蔵」の製品と、「直射日光や高温多湿の場所を避けて保存」の製品では、まったくコストも品質も異なることを学ばなければいけない。
※濃縮還元=日本のジュース市場の9割超をずっと占有してきた「濃縮還元」製品は、まず加熱して果汁から水分を飛ばし、ペースト状にして、冷凍保存のうえ海外から輸送し(体積が7分の1程度になるため保存も輸送も低コスト)、製造工場で、カルピスのように水で薄めてジュースに戻してパッケージングする。加熱圧縮の過程で栄養素は破壊され、味も香りも逃げるため、水で戻す際に、香料・甘味料・保存料等の添加物を加え補うのが一般的。要は、不健康で人工的で水っぽくてまずいが、価格は安く日持ちする“工業製品”である。
高温で濃縮しドロドロのペースト状にする過程で栄養素は破壊され、味も香りも劣化する(画像は日本ジュース・ターミナル公式サイトより) |
逆にストレート品は濃縮しないため味香り栄養素が自然の状態に近いが、輸送コストがかかる。
1種類の100%果汁の場合、「濃縮果汁」か否かはラベル表示義務があるが、2種類以上の混合飲料になると、表示義務から逃れてしまうためストレートだけの複合飲料との判別が難しい。
消費者は、濃縮還元ジュースと非濃縮還元ジュースの違い(味、香り、栄養素)を学ばなければならない。
英国は濃縮還元=1割だけ、ストレート&スムージー=7割
チルド市場は、技術進歩と市場ニーズの拡大によって、米欧で急成長した
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英国の冷蔵ジュースにおける、ストレートジュース、スムージー、濃縮還元果汁のシェア(2020年)と今後の見通し
これまで存在しなかった「オールナチュラルジュース」(高圧・低温殺菌)セグメント
今後の市場全体とオールナチュラルジュースの成長見通し(富士経済調べ)
セブンイレブンの棚。いきなり価格が2倍も違うと、無知な消費者には理由がわからず、戸惑ってしまい、「高い」という印象ばかりが残る。日本でブランドが確立していない無名のイノセントと、日本人全員が知っているカゴメでは、勝負にならない。ただ、このコーナーに並ぶことは事前に分かっており、KAGOME製品は2016年に発売済み。
ストレート果汁と濃縮還元果汁の違いについて、調査では60.8%の消費者が、「分からない」と答えたという
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