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「フルーツ健康神話」を作れるか――果物消費量が先進国最下位の日本で挑むイノセントのチルドジュース

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「飲む生フルーツ」をどう伝えるかのコピー案。下はマーケ担当のkato aikoさん、真ん中がデジタル担当の佐藤さん。
 米国には『Naked』(ペプシコ傘下)、欧州には『Innocent』(コカコーラ傘下)。日本以外の先進諸国では、ごく身近なスーパーで、製造~販売までチルド(冷蔵)の濃縮還元ではないストレートスムージーを入手できる。両社とも数人のベンチャーから始まり、巨大な砂糖水グループに買収され勢力を拡大した。だが、四季折々のフルーツがおいしい日本には同種のベンチャーは誕生せず、カゴメや伊藤園の“濃縮還元野菜常温ジュース”の支配が続く。2019年夏、ついにイノセント社が「チルドジュース完全空白地帯」の日本に参入。撤退されたら冬の時代に逆戻りだ。1年半を経た現在の進捗について、同社マーケティングのトップ・加藤さんに聞いた。
Digest
  • コーラの孫会社なのにベンチャー的な入り方
  • 「フルーツ神話」を作れるか
  • 先進国最下位のフルーツ消費量
  • 意外に影響力がないHIKAKIN
  • “キッチン”が欧州にしかない
  • チルドの成功「中期的なコミットあるはず」

■社会派ブランド「おいしくて、いいこと」

 イノセントは実にエッジの効いたブランドで、『ビッグニットプロジェクト』に代表されるように、遊び心満載で温かい面白カルチャーを前面に押し出した、社会起業家風の意識高い系。利益の1割をチャリティーに寄付すると公言し、「おいしくて、いいこと」を掲げる。パタゴニアを柔らかくしたイメージだ。“ドリンカー”との1:1のコミュニケーションを重視し、フレンドリーでオープンなカルチャーを打ち出す。今回はコロナ禍ということで、部門責任者がZOOMインタビューに応じた。イノセント本体のダグラス・ラモントCEOは、日本市場への参入時に「5年間は重要な投資期間」と語っているが、果たして2024年までに日本に浸透するのか。

コーラの孫会社なのにベンチャー的な入り方

――日本での組織体制は?

「イノセントジャパン合同会社(本社・渋谷区恵比寿)は、The Coca-Cola Companyの子会社であるInnocent Drinksの子会社なので、コーラから見たら実質的に孫会社です。日本ローカルで15~17人+UK本社からのエクスパッド3~4人の、計20人程度。オフィスも最初は『WE WORK』で2018年に2~3人から始め、チルドの工場を探すところから、でした。ベンチャー的な参入の仕方です」

――巨大市場の中国は参入しないのですか。富裕層が爆買いしそうですが。

「日本から少し遅れて参入しました。香港にアジアを統括する形式だけの会社があって、日本と中国のローカルオペレーションをみています。中国市場は、上海に日本と同規模のオフィスを立ち上げ、ローカルの生産体制を構築し、昨年(2020年)、コロナ禍で売り始めたところで、これからです。中国のチルドジュース市場は、日本以上にぜんぜん普及していません」

――中国でも日本でも、現地生産(ブレンディング・ボトリング)するのはなぜ?

「イノセントは、クオリティー基準として鮮度を重視しているので、賞味期限が60日と短い。欧州からの船便だと時間がかかってダメで、空輸はコスト高のうえに少量だと輸送頻度が不安定になります。アジアでは、日本は日本国内で、中国は中国国内で、という方針です」

■賞味期限=クオリティーである

 同じストレート果汁商品であっても、賞味期限が長い商品は、殺菌・充填の温度が高い傾向があり、常温保存も可となる一方で、クオリティーは低くなる。つまり、賞味期限が短いほど、そして要冷蔵(チルド)商品であるほど、殺菌・充填の温度が低く、新鮮でフルーツそのままの味に近づくことになる。同じチルドのストレート果汁商品で並べると、香港製造で低温殺菌・低温充填の『shine &shine』は賞味期限45日と1位。一方、オーストラリア製造の『WOWフード』商品は、賞味期限が270日もある。60日のイノセントは、その中間である。

――どういう層をターゲットにしているのか。年齢、性別、所得層、住む場所など…。

「イノセントは単なる果汁商品という以上の面白いブランドです。自然のなかでのキャンプを企画したり、音楽のバンドのイベントをやったり、自分らしく毎日を楽しもうという、ライフスタイル提案型。だから、デモグラフィー(男女年齢層)では区切れません。

 外交的で情報感度が高く、正しいことを自らとりに行き発信するタイプで、所得は高め。独自調査では、『人生を積極的に楽しみ味わう人』(12%)というセグメントをメインに設定し、この周辺にいる『節度ある人生の満喫派』(16%)、『バランスのとれた一般人』(18%)、『認められたいフォロワー』(11%)、の計57%がブランドターゲットです」

※マクロミル、2019年3月、一都三県調査

――他業種でいうと、パタゴニアみたいな位置づけですか。

「少し価格が高いですが『ルルレモン(lululemon)』、『いろはす』、クラフトビールの『yonayona』、『スノーピーク』、『パタゴニア』などです」

――販路をセブンイレブンに選定した理由は。今後はどうするのか。

「セブンは

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試飲で使ったという250ml税込429円の商品。この異様に高い金額を伝えたあとで「いくらなら買いますか?」と質問すれば、当然、(400円は無理だけど)300円くらいなら、という答えが返ってきやすい。世論調査と同様、調査結果は誘導することができる。

上:1mlあたりの価格が最高値。しかも最も近いシャイン&シャインはセブンでは売っていない下:本来は競合ではない全く別の飲料なのに、どうしても同じ棚で横に並んでしまい、価格が2倍以上という苦しい状況

上:果物の摂取は各種ガンの予防に効くエビデンスがある下:1日200g食べると死亡リスク7%減少(200g推進全国協議会データブックより)

日本人の果物摂取量は世界平均の3分の2、北米の半分、オランダの3分の1と少ない。先進国最下位。

貧しくなって価格に敏感な日本人が、欧州の1.5倍の価格を払うわけがない。『イノセント』235mlはスーパーで税込151円と、半額で叩き売られている@『ライフ』

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