「今の濃縮還元ばかりのジュース売り場は、30年前の欧州と同じ」イノセント・オペレーションヘッドに聞く日本市場の未来
オペレーションヘッドのRichard Collierさん(Head of Operations, Asia)。12年超在籍する古参で、3年前まで欧州サプライチェーン戦略のトップに就いていた人物。 |
- Digest
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- イギリスでは5~6年かかった
- 日本製品の原料は欧州品と違うのか
- 日欧のラベル法令の違い
- 「日欧の違い」を知ったら、「欧州内の違い」はなきに等しい
- 異なるテキスチャー、「つぶつぶ」が好きな日本人
- 日本国内の果物を使っていない理由
- シェルフライフ問題で輸入できない
- 日本のマーケットは改善の余地がある
- 冷凍/冷蔵、解凍温度、時間、タイミングがノウハウ
Rotterdam blender plant |
■欧州最大拠点はオランダ
イノセントは2億5000万ユーロを投資し、オランダ・ロッテルダム港のビジネスパーク内に、「CO2ニュートラル」の新工場を建設、北欧からイタリアまでヨーロッパ17カ国向けに、「毎年約4億本のチルドジュースとスムージーを生産する」計画を発表している。この新工場は2021年夏に稼働し、同社総生産量の6割程度が、この工場でボトル詰めされるという。アジアにも、この規模の拠点がほしい。
イギリスでは5~6年かかった
――日本市場のローンチは厳しいものでした。イノセントのオペ―レーション上の特徴は?
「イノセントの難しいところは、ほかのブランドと異なり、非常に幅広く深みのあるブランドだ、ということです。なかなかシンプルなブランドコミュニケーションが難しいので、時間がかかる。欧州でも育成が難しくて、調査を重ねました。
特徴は、ドリンカーとのエンゲージメント(関係性)を強め、“ロイヤルドリンカー”を作って行くのが目標であること。そのために、ベストなプロダクト、最良の味を持つフルーツジュースを作り、日本の皆さんに新しい発見を届け、知って貰う。ブランドとしての深みが、息の長さにつながると思っています。日本では、長くやっていきたい。
だから、時間はかかります。もともと3人の創業者がイギリスでローンチして、黎明期はカフェや小さいレストランを回って地道にブランドを育成し、主要な小売店に入るまで5~6年かかっています。ほかの欧州の国では、もう少し速かったですが」
日本製品の原料は欧州品と違うのか
――原料となる果物は、欧州に流通するイノセント製品と日本のイノセント製品とでは、異なるのでしょうか?農薬や有機栽培など、基準があったら教えてください。
日本向け「やんちゃなキウイ」の法定ラベル表示。欧州品にない「クエン酸」が気になる。 |
「原材料は、欧州もアジアも同じ。社内で『フルーツチーム』と呼ぶ、フルーツ専門家で構成するチームがあるのですが、その調達本部の人間が、世界各地の畑に行って、プラクティスを確認させてもらい、基準を満たした契約農園からのみ果物を買います。実際にチームメンバーが畑に出入りできないところとは、契約しません。
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ドイツで販売中のイノセント「キウイワンダー」(真ん中)の法定ラベル表示と日本語訳。すべてが%表示されている。日本の消費者は各成分の内容量を知ることができず、選択基準となる情報すらない。
左:カゴメGREENSマンゴーアセロラスムージー210ml(税込み213円)、右:カゴメGREENSケールグリーンスムージー210ml(税込み192円)。原材料名だけ見ると区別がつかないが、最大量(%は不明)の輸入ニンジンをはじめ、ほとんどが濃縮還元モノで、どれがストレートかもわからないから買えない。ストレートと濃縮還元の区別がつかない点も、消費者から見たラベル表示の問題点である
欧州向けのイノセント・マンゴー250ml=税込み1.79ユーロ(約220円)@ドイツ『Rewe』(ミュンヘン郊外、人口2万人の小さな町)。「イノセントの900mlのオレンジジュースを2.79ユーロで、いつも妻のために買っています」――ドイツ在住の30代日本人は、欧州の豊かなジュースライフについて語る。大ボトルになると、日本と同じ価格で、約3倍の量を買えてしまう。
欧州は代表的な商品で250mlと750mlを展開。日本は235ml一択。
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