ほとんど報じられないトヨタのセクハラ問題
- Digest
-
- アリバイ作り程度の日経
さすがトヨタだけあって、マスコミ対策は万全だ。ほぼすべての主要メディアに「口止め料」を含めて、継続的に広告費を投じることにより、スキャンダルが出ても、記事を大きく扱わせない、調査報道をさせない、という構造を作り上げている。
このセクハラ215億円訴訟を、そのニュースの重みどおりに大きく扱ったのは、夕刊フジくらいのものだ。AFP BB も広告モデルなので、完全に黙殺しており、ニュース媒体としては失格だった。
新聞は、さすがに辞任に追い込まれてから、それなりに記事にせざるを得なかったが、本来、提訴の時点で、しっかり背景を取材して特集記事にするくらいの大きな話だ。だからこそ、社長は辞任したのである。
朝日新聞が辞任前に書いたのは一回だけで、5月4日、社会面の、ほとんどベタ扱いだった。文字数283という短い記事で(下記)、事実関係を淡々と伝えただけであった。
北米トヨタ社長らをセクハラ提訴 元秘書、215億円賠償求め
【ニューヨーク=渡辺知二】北米トヨタの大高英昭社長(65)の元秘書だった日本人女性社員(42)が、社長から繰り返しセクハラ(性的いやがらせ)を受けたとして、社長と同社、親会社のトヨタ自動車を相手取り、精神的な苦痛への損害賠償など計1億9千万ドル(約215億円)の支払いを求めてニューヨーク州地裁に提訴した。 |
辞任発表後も、5月9日の夕刊で、「北米トヨタ・大高社長が辞任 セクハラ提訴、実質更迭」という見出しの記事を492字で書いただけだ。超トップクラスの広告主の悪口は、書けるわけがない。
アリバイ作り程度の日経
日経は、日本の経済紙でありながら、驚くべきことに、AP通信の報道を引用した(下記)。まさにアリバイ作りである。これ以上に広告主に優しい書き方はありえない。
「我々自身としては取材はしないけど、APが書いちゃったから一応、載せざるを得ないんですよ」という電通とトヨタ広告部門への言い訳が聞こえてきそうだ。文字数も朝日より100文字少ないベタ記事扱いで、目立たないように頑張っている姿を懸命に見せていた。日経にとって、顧客とは読者ではなく、広告を出してくれる大企業なのである。
北米トヨタ社長、セクハラで提訴日本人の元女性秘書 2006/05/03,日本経済新聞 朝刊,38ページ,186文字
【ニューヨーク=武類雅典】AP通信によると、トヨタ自動車の米国持ち株会社、北米トヨタの大高英昭社長からセクハラ(性的嫌がらせ)を受けたとして、日本人の元女性秘書(42)がトヨタ自動車本社、北米トヨタと同社長を相手取って損害賠償請求訴訟をニューヨーク州の裁判所に起こしたことが二日、わかった。 |
その後も、奥田会長が会見でセクハラ訴訟について「米国サイドでどう処理するか検討している」というコメントを報じただけ。
朝日同様、辞任に追い込まれて、はじめて書いた。というか、利益1兆円企業のスキャンダルなのだから、書かざるを得なくなったといえる。米自動車大手の経営危機が続いており、日米摩擦にも影響があるような問題で、更迭されるのは当然だった。それほど重大な問題だ。
しかし、更迭を迫るような記事は、更迭前には、絶対に書かない。
週刊誌も同様で、この先は会員限定です。
会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。
- ・本文文字数:残り348字/全文1,843字
Twitterコメント
はてなブックマークコメント
facebookコメント
読者コメント
今セクハラ・パワハラ問題と直面しています。相手と会社の両方と戦わなければならない セカンドセクシャルハラスメントも受けている事を感じています。大規模の会社を相手にするという事の難しさを知り これからも精神的に追込まれる状況を想定しながら戦わなければいけないんですね。
さやかさん以前も以後も、そして正に今も、この日本でだって、壮絶な状況の中で闘っている人達は沢山います。セクハラ被害は、とても深刻なものです。事件の真実を、メディアはきちんと伝えて欲しいです。
「横浜セクハラ 裁判の記録」で検索をすると、「クラブA入口」があります。横浜セクハラ裁判の被告は、大手ゼネコン清水建設と、その子会社・上司でした。
巨大なとかげは誠実に振舞おうとしているが、頭を下げるたびにしっぽががんがん振れて多くの犠牲者を出している。「これだけいろいろやっているのに......」というのがインサイダーの正直な感想かもしれない。
まあトヨタに入るなら本社ってことだね。グループ会社にしかは入れなくて文句言っても自業自得じゃないの。もっとも根っからの車好きはホンダに決まりだよ。
よくもわるくも日本社会の縮図そのもののトヨタ。人材もいよいよ劣化が始まってきたということでしょうね。トヨタ車は昔から好きでなく買ったことはないけど、他社のパクリがこんなに上手な会社もないよなあと、新車が出るたび苦笑してしまいます。
マスコミもなんだかんだかっこいいこと言っても、単なる儲け主義のスグサマ尻尾を巻くご都合主義な商売人なんですね
陰湿な「下請けいじめ」についても、もっと厳しい目を向けてるべきです。トヨタ礼賛のマスコミ報道を「光」とすると、その「影」の部分も知ってほしいです。一般の市井の人たちは、マスコミ報道のみ耳に入り、影の部分を知らなすぎます。トヨタと取引のある大手企業に勤める友人の話では、やはりトヨタについての話はうかつにはできないとのことです。上司からもそう言われているとのことです。
として、恥ずかしい限りです。こういった問題以外に、三河地方の事件は何らかの形でトヨタもしくはトヨタグループ企業の社員(または家族)が関わっていることは珍しくないのですが、決して企業名は出ません。それが大企業の驕りを生んでいるのだと思います。
トヨタのセクハラ、パワハラ問題はホントに新聞等には出ませんね寮で自殺者が出ても新聞には少ししか出ませんし
その後が、全く報じられない・・
読んでみて「やはりそうか」と思える内容でした。そういえば、雇用主が残業手当を払わなくて済むホワイトカラーイグゼンプションも、殆どマスコミは取り上げないですよね。やはりこれもそういうことなのか?
昔、話題になった大貫さん1億円拾得事件のお金は、その昔に販売の神様と呼ばれた神谷氏の息子の事業失敗の穴埋めのお金だったと聞き増した。我社が報道規制したと聞きました。身近なところでは社員の起こした交通事故の報道規制みたいなことも行ってるようです。はずかしい。
主要メディアに「口止め料」はまさにその通りなのでしょう。国内で起こった件にも、かなり行なわれているのでは?「敵などの思惑がある場合」に問題を摩り替えてしまえば、思うつぼと言ったところでしょうか?マスコミの存在意義である「調査報道」、この件のみならず、国外・国内にかかわらず目を向けて取り組んでいただきたいものですね。
となると、何か罠でも仕掛けてくるのではないか?と容易に予想されます(妙なニュースの裏には、敵などの思惑がある場合も多いものです)。日本でなら膨大な額の訴訟費用が掛かりますが、お国が違えど、個人が215億円もの賠償を請求出来るものでしょうか?まあ、内部の権力闘争の可能性も残りますが・・。
論点が外れるかもしれませんが、別の疑惑を感じる事件でもありますね。昨今の北米市場でのトヨタを筆頭とする日系メーカーの躍進とGMなど米国資本であるビッグ3の凋落(トヨタ単独でビッグ3の一角であるクライスラーを追い抜いてしまってます)。80年代なら貿易摩擦となる状況ですが、現地生産化によってそれを回避する手立ても取られており、米国政府もビッグ3の自助努力を促すのみ。
記者からの追加情報