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三井物産 ケース面接と自分史で問う「答えのない問題」の解決を前進させる力

論理的思考力&課題解決コンピテンシー

情報提供
自分史の提出
採用プロセスで「自分史」を書かせる点に特徴がある三井物産

「感覚的に、仕事の7割以上が投資になっていて、トレーディングは3割未満と、減る傾向にあります。ジョイントベンチャー立ち上げるなど、新規案件は投資ばかりです」(社員)。総合商社はビジネスモデルを、「モノの輸出入貿易」で稼ぐトレーディングから、ビジネスモデル自体を世界の成長市場に輸出したり、資源の権益獲得に投資して長い年月をかけて回収するといった「投資ビジネス」へと、モデルチェンジしてきた。

Digest
  • 投資ビジネス「7割以上」で業務職の役割は減少
  • 「人の三井」長文の自分史を書かせて面接
  • 16本部&115海外拠点に総合職4461人を配置
  • プラント会社との違い「契約とりまとめ役」
  • PEファンドとの違い「アンフェアーアドバンテージ」
  • ベンチャーと真逆な「本部長以下、全員合議制」
  • 常時4人に1人が海外駐在、MBAは廃止
  • 辞める理由がなくなっていくアラフォー以降

投資ビジネス「7割以上」で業務職の役割は減少

典型的な投資ビジネスとして、《世界中の地域》×《商品・サービス》のマトリクスで、日本国内の成功モデルを、グローバルに展開するパターンがある。たとえば、ココイチのカレーを、カレーの本場であるインドで展開しているのも、三井物産である。出資比率は三井物産60%、壱番屋 40%と、三井物産の現地子会社がリードする。壱番屋は1994年からハワイ、アジア、アメリカ、イギリスなど海外12カ国・地域で180店舗(2019年6月末時点)展開するが、インドでは三井物産をフランチャイザー会社に選定した。

比率が減っている3割のほうのトレーディングは、たとえば、コモディティといわれる原料関連の、海外からの輸入。コーヒー豆、油、小麦粉、砂糖原料などを輸入販売し、差益で稼ぐ。それも、たとえばブラジルなど現地の精製工場のほうにも投資して人を送り込み、現地の投資先会社からも配当で儲かるよう、投資を絡めていく。ブラジルから日本に輸入する際の手続き事務や確認作業があるため、「業務職」の出番となる。

伝統的なトレーディング業務としては、帳合ビジネスがある。たとえば、食品メーカーUCCとの間に、三井物産が「帳合」を持ち、卸機能の役割を任せてもらう。UCCがコンビニや量販店で缶コーヒーを売る際には、必ず三井物産を通すことになり、利ざやを得られる。商社は、数量や価格を管理し、需給調整する。こうした帳合ビジネスでは、その手続きの管理やモニタリングで事務作業が発生するため、やはり国内に「業務職」が必要となる。

このように、商社の業務職は、トレーディングビジネスでは必須となる。伝票作成などの単純事務は子会社へ移管するが、責任ある立場で、その管理やモニタリングをする必要はある。一方で、投資ビジネスでは日々のルーティンとしての事務作業は、あまり発生しない。インドでココイチ事業を展開する際に、日本国内の業務職が日々の事務作業をこなすことはない。

三井物産組織2023
三井物産の現場組織図

「1つの部のなかに数十人の社員がいて、そのうち業務職は数人だけ。あとは嘱託の非正規がいたり、いなかったり。2000年前後だと、5~6人に1人という割合で業務職がいたけれど、トレーディング比率が下がるにつれて、必要な頭数が減ってきました。一番少ない事業分野だと、『2つの部で業務職が1人だけ』というケースもあります」(社員)

かつて、都銀と総合商社の一般職(業務職)は、女子大卒の就職先となっていた。早慶卒が就くケースも珍しくないほど人気があった。それが、銀行は支店の統廃合でリストラが進み、窓口からATMへと置き換わり、対面で紙作業を担当する一般職の採用数は激減。商社のほうは、ビジネスモデルの変化でトレーディング比率が減って、伝票管理やモニタリングといった輸出入事務が減り、事務を担当する業務職も減った。女性事務員は、もはや産業界でニーズ自体が激減している。(※三菱商事は2020年度以降、一般職採用を見送っている)

「人の三井」長文の自分史を書かせて面接

投資ビジネスが圧倒的な事業の中心になってくると、必要な人材も変わってくる。入社試験も、論理的にビジネスモデルを考え、ディスカッションし、多数のステークホルダーと利害調整しながら事業を前に進めていける人物、を見極める内容へと、変化した。

一次面接は、面接官2人1組で、学生1人と面談する。時間は30分。面接官は主に課長(M2)である。

「内容は、ロジカルに考えられる人物か、を問うもの。まずは、大前提として、論理的思考力のベースがないと、ビジネスでは話にならない、ということです。コンサルの面接みたいなフェルミ推定のケース面接で、お題を与えて、3分考えさせ、プレゼンさせて、そこに面接官がツッコミを入れて、質疑応答します。もとから『答えのない問題』なので内容はどうでもよくて、受けごたえの仕方が論理的であるか、で判定します。これは、ずいぶん面接官をやったけど、1日7~8人やって、通るのは1人か、多くて2人だけ」(同)

答えのない問題が対象なので、日本国内で、時代遅れな昭和の義務教育(答えがある問題を解く偏差値教育)を学んできた日本人には不利だ。別途、対策が必要だろう。日本の教育制度が、世界で活躍する商社マンにとって、いかに不適合であるかが、よくわかる。

お題は、ご丁寧に、公式サイトで例が挙げられていた。かつての商社ではありえないような学生フレンドリーさである。

ケース例:あなたは三井物産の社員として、「日本にEV車を普及させる」ミッションを担っています。施政方針である「2035年までに新車販売で電動車100%の実現」にも向けて、三井物産として大規模投資を実行したいと考えています。そんな中、投資の協力を得るために「EVを普及するためのボトルネック」と「三井物産として取り組む理由」を説明することになりました。あなたなら、どのような提案を行いますか。

普段から社会問題に関心を持ち、前向きに解決策を考えていないと、なかなか3分ではまともな説明ができなさそうな内容である。体育会活動だけに専念していた脳筋系は、ここで固まって終わる。投資ビジネスの時代となり、もはや接待や裸踊りは武器にならない。

実際、どのように合否を判定するのか。

「絶対評価です。5段階評価で、◎—〇—〇△—△—×をつけます。2人とも◎か〇なら、通過。2人のうち1人が『〇△』だと、リマークつきで通過。1人でも△がついたらアウトで、終わり。全体では、10人に1人くらいじゃないかな」(同)

通過率1割は、なかなかの厳しさであるが、面接する側としても1日7~8人やるわけで、なかなかの負荷である。学生は、人生がかかっているのでもちろん真剣だ。

次の二次面接では、「人の三井」というだけあって、人間性がじっくり見られる。面接官2人が、1人の学生に、約30分かけて、「自分史」をもとに、面接する(冒頭画像参照)。

「二次では、人物を見ます。

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16本部&115海外拠点

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