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女性差別賃金ワースト5のメガバンク3行、慌てて“ジェンダーアパルトヘイト”撤廃し運用でごまかす

「賃金格差の情報開示義務」効果てきめん

情報提供
男女賃金格差をリードするメガ3行
ワースト5にメガ3行が全てランクイン。なかでも、みずほ銀行は、当初、格差の要因分析を公表しなかった。

宮本徹衆院議員(共産党)が2023年10月30日の予算委員会で、経団連役員企業の男女賃金格差について質問した際のパネルには、男性100に対して女性の平均賃金がOECD平均(88.1%)を大きく割り込む惨憺たる実態が示されていた。なかでもメガバンク3行は、いずれもワースト5にランクイン。業界をあげて、女性賃金を押さえつけ、女性の能力活用と社会進出を妨害し、日本人の賃金が30年上がらない病巣となっていたことが、数字で示された。20年前、経営の失敗で巨額の不良債権を抱え倒産状態となった際に、「Too big to fail」で潰すべきものを潰さず、3行で計6.7兆円もの公的資金を注入して救ってしまった結果が、この時代錯誤な“昭和の性別アパルトヘイト放置”だった。

Digest
  • 徹底した女性差別がバレて慌てている
  • 第一の要因:出世させない女性専用コースで差別
  • 特定総合職と一般職を廃止する流れ
  • 女性課長を増やす流れ「業務知らない男性課長がバカにされ…」
  • 第二の要因:「辞令1週間転勤」で女性を退職に追い込む
  • 都市部の既婚女性を動かせない!未婚女性が地方巡業に
  • 無意味なメガ3行のブロック選択制
  • 解決策は転勤NG選択制&カネで解決
  • 第三の要因:柔軟性のない長時間ロケーション貼りつけ型勤務
  • 昭和の「鍵ロッカー保存規制」が現存している
  • Teams、Webex…意外にも会議が劇的変化
  • 「電卓があるのにそろばん」な地方企業
  • 令和の時代に昭和の価値観で接しなきゃいけない
  • 支店が変わらないとジェンダー統合は進まない

※資料は末尾にてダウンロード可

徹底した女性差別がバレて慌てている

みずほ銀41.8%、三井住友銀45.4%、三菱UFJ銀49.6%——。メガバンクが、女性の仕事上の付加価値を、男性の半分以下と考えている証拠の数字である。みずほの41%に至っては、OECD平均88.1%の半分にも満たない、とんでもない差別主義的賃金であるが、スポンサータブーもあってマスコミの報道テーマにすらのぼらない点に日本社会の闇がある。

しかも、このみずほ銀行は、高い水準で社員の子育てサポートを行っている企業として、厚生労働大臣より、「プラチナくるみん認定」を受けている(2015年)。国を挙げて、このような巨大性差別企業グループを表彰しているのだから、ブラックジョークである。本当に子育てと仕事を両立できているのなら、女性が男性と同じように昇進し、同じ職務を担い、賃金差が出ないはずだからだ。

正社員、5千人以上、女性賃金ワーストランキング
「正社員」の性別格差ワーストランキングでもメガ3行は上位30に入る(従業員5千人以上)。生保損保とともに、日本の金融業界はジェンダーアパルトヘイトが放置されている。(→末尾より4万7031社データエクセルダウンロード)

いったいどれほどの差別的運用を行うと、ここまでになるのか。みずほ銀の有報によると、「処遇決定方法」について、こう説明している。

「<みずほ>では、これまでも、性別とは関係なく1人ひとりの職責や職務の内容等に応じて処遇を決定しております」

開き直った説明である。つまり、性別と関係のない処遇決定をした結果、たまたま偶然、女性の賃金が男性の41%になっていた、女性は能力が低いんだから当然だろ——というわけだ。現状認識から間違っている。

まるで自然現象であるかのようだが、これを素直に解釈するなら、《女性は職責を果たせない、重要な職務を任せられる能力もない、つまり仕事ができないから、自然と低賃金になっただけ》と言っているに等しく、とんでもない上から目線の差別主義者たちで、たちが悪すぎる。反省のない組織は、改善も期待できない。

賃金差異の要因
賃金差異と要因(みずほ銀の有価証券報告書より)

みずほ銀は「賃金差異の要因」として3つ挙げているが、いずれも間違っている。これらは「要因」ではなく、恣意的な人事運用の結果として発生した「現象」だ。現象と要因の区別をつけられていない。ロジカルシンキングができないダメ就活生みたいである。正しくは以下。

×①男性のほうが上位役職者が多いこと
〇男性しか上位役職者に登用しない「ポストの性別アパルトヘイト」を行ってきたこと

×②給与水準が高い全国転勤有の区分の社員が多いこと
〇全国転勤有の社員は9割男性、転勤ナシの社員は9割女性、という「人事管理区分の性別アパルトヘイト」を行ってきたこと

×③勤務時間が長いこと
〇男性前提のワークスタイルとし、子育てと両立できるリモートワークやフレックス勤務の導入を進めていないこと

すべて、制度設計とその運用において、差別意識に基づいて行われており、銀行経営陣および人事部に100%の責任があるが、結果だけを述べており、要因分析に至っていないことがわかるだろう。

これはメガバンクの対顧客サービスでも常に感じてきたことだが、「世界は独善的な銀行本部を中心に回っている」と思い込む「自己中」病なので、矯正治療が必要なレベルである。人権やSDGsの概念が存在しない組織なので、そのあたりが気になる人はメガバンクには絶対に入社してはならない。

第一の要因:出世させない女性専用コースで差別

賃金格差の要因ははっきりしており、大きく3つある。

第一に、性別コース別人事。欧州なら犯罪とされるような、「男女雇用機会均等法」違反の人事運用を、メガバンクは堂々とやってきた。女性については、転勤ナシで平均年収が総合職の半分未満しかない「一般職(または特定総合職)」コースで採用し、男性については全世界転勤アリで給料が一般職平均の2倍超となる「総合職(基幹職)」として採用。

一般職は女性100%、特定総合職も女性が95%超、一方の総合職は女性20%程度(意に沿わない全国転勤と8~20時ロケーション張り付け型労働によって10年以内に8割辞めざるを得ない状況に追い込み、中途で補填)という、極端な性別コース別管理。いわば、「昇進がない女性専用コース」に女性を押し込み内勤事務作業をやらせ、男性は外勤営業で稼ぐという、父権主義(パターナリズム)に基づく、あからさまな性別採用である。

女性のみのBS&特定総合職
三菱UFJ銀の特定総合職とBS職は、女性専門の「転勤ナシ&低賃金コース」

メガバンク各行には、「特定総合職」という、一般職と総合職の中間的な存在の社員がいる。保険商品の銀行窓口販売の全面解禁(2007年)に合せて大量採用を始め、当初は男性も少数混じっていたが、今では、ほぼ100%を女性が占めている。主に個人向けに窓口販売を行うが、外回り営業も行う。総合職との決定的な違いは、「転勤がないこと」だけだ。

三菱UFJ銀の特定総合職社員の女性は、こう言っていた。「総合職と一般職という分け方ではなく、男か女か、で対応が変わります。残業が必要でも、『女の子は帰りな』と言われます。車で営業に出る際は、女には運転させない。飲み物や食べ物は、女に選ばせる」。そういう「女の子」扱いする父権主義カルチャーが、メガバンクには根付いている。

三菱UFJ銀は、この特定総合職の新規採用を、2017年を最後に停止中(上記表参照)。一般職にあたるBS職(ビジネススペシャリスト)も減らしつつあり、2022年には新卒53人。「これは、支店を減らし、業務のDXを進めた結果、事務職が必要なくなってきた、ということです」(三菱UFJ銀・総合職社員)

特定総合職と一般職を廃止する流れ

この一般職(BS職)や特定総合職といった女性限定のコースが性別賃金格差を拡大している元凶となっているのは明らかなので、各行とも、廃止の流れにある。情報開示の効果てきめん、だ。いかに情報公開で事実を白日の下に晒すことが重要か、がよくわかる。

「今後、2024年度に予定している「Ex制度」(特定の業務領域で専門性を追求可能な制度)の導入に加え、2025年度には総合職とBS職のコースの垣根を解消し、「プロフェッショナル職」を新設するなど、人事制度の改訂を予定しています」(三菱UFJ銀サステナビリティーレポート2023より)

とりあえず2025年度に、入口からの差別をやめるそうである。2023年からの男女賃金格差開示義務化によって、事実が明らかとなり、改革に着手せざるを得なくなった格好だ。みずほ銀行も

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メガバンク3行の「働く」データ。商社はこの項目を全開示している。非開示が多すぎ、反省がない。やはり性別格差に特徴。三井住友銀のみ海外赴任者数を開示し、海外人材獲得を重視している模様。

みずほ銀行の支店組織図(準大規模店)

みずほ銀行法人専門支店の組織図

三菱UFJ銀の勤務地区分選択制(2024年採用)

みずほ銀の勤務地区分。首都圏から出たくない人向けに「エリア型」があるが、給与と昇進で差別を受け出世コースから外れるのは確実。

三井住友銀の勤務地は、どこでも飛ばす気満々で昭和のまま(総合職リテールコース)

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