みずほ銀、社宅全廃で実質年収200万カットもーー不満を奏でる新人事制度『かなで』始動で〝働かないおじさん〟の給料カットへ
2024年7月、みずほフィナンシャルグループ共通の人事処遇制度として『CANADEかなで』が始動 |
「福利厚生の大幅カットと、銀行本位すぎる人事異動。この2つがなければ、まだ辞めてないと思います」――。そう話すのは、同期入社のトップ昇進組に残っていながら今年に入って転職を決意し会社を去った、みずほ銀行の元社員(30代半ば)だ。なかでも大きかったのが、13段階の役割給導入を打ち出した新人事処遇制度『かなで』によって、2025年3月で全廃されることが決まった社宅だった。家賃相場20万円は下らない23区内西部の一等地にある家族向け社宅に、月3万円の自己負担で住めていたため、待遇面の満足度は高かったという。
- Digest
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- 来年3月までに社宅全廃
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みずほ銀トップ昇進組(入社10年目で課長相当職に昇格)の年収=源泉徴収票 |
来年3月までに社宅全廃
給与明細や年収を示す源泉徴収票(右記)には出てこないが、実質17万円補助×12ヶ月で、年200万円ほどがカットされることになる。賃貸物件を借りた場合の住宅補助も廃止される。
「社宅全廃の代わりに、全員の給料に月2万円ずつ上乗せする――というのが会社側の説明ですが、釣り合っていません。社宅を追い出されるタイミングで転職を決めました」(同)
『かなで』で大きく変わる、みずほFGの住宅系福利厚生。相対的に自宅を買うほうがマシになり、「同じ社宅にいた社員の7割がたが、この1年余りで自宅を買った」という。 |
みずほFG(フィナンシャルグループ)では、住宅関連の福利厚生について、社宅と住宅補助を廃止したうえで、右記のように一本化される。ポイントは、
①社宅利用者・賃貸物件利用者・自宅購入者の間に存在している不公平感をなくす(自宅購入者には何の補助も出なかった)。
②キャリア的にも住環境的にも不人気な地方勤務者には「隔地間異動手当」を支給して調整を図る。
同じく社宅に住む現役の支店社員(40代前半)も、転職活動中だ。こちらは主に、2024年7月から移行した『かなで』による不安や不満が大きい。年功序列ではない「役割給」が前面に打ち出されているからだ。
首都圏以外への転勤者には新たに「隔地間異動手当」(新卒で3万円)を支給。ワイドエリア型とエリア型はそもそも出世競争の外にいる(ベース賃金が上がらない)。 |
「人事の説明を聞く限り、海外と大企業担当者は給料が上がりそうですが、国内の地方で中小含む法人を担当している私らは、役割給の導入で待遇が下がるんだな、と思いました。同僚たちは、M&A仲介会社やベンチャー企業などにどんどん転職し始めていて、辞める人が多すぎるので、支店の現場はむしろ人が足りなくなっています。コロナ明け以降の離職率は、年1割や2割じゃきかないです」(40代社員)
離職者が増えると〝穴埋め〟も必要となる。みずほFGは、ついに新卒採用数を上回る中途採用(2023年3月期679人と公表)を実施。新卒以上の中途数を採る事態は、新卒中心で回してきた都銀時代を含めて史上初となり、メガバンクの採用も歴史の転換点を迎えている。
『M職』は一律『MG5』スタート…一言でいうと「不評」です
みずほフィナンシャルグループの新人事処遇制度『かなで』のキャリアパスと報酬水準 |
新人事処遇制度『かなで』は、およそ2年前に骨子が発表され、1年半ほど前からウェブ中心に従業員向け説明会が人事部主導で断続的に開かれ、2024年7月に始動した。
「ジョブ型への移行」が肝で、特に管理職クラスについては、役割(ポスト=ジョブ)を『みずほグレード』(MG)でランク分けし、そこに社員をアサインする建てつけになっている(左記参照)。
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新卒から最短10年目に昇格する課長相当職(=旧M)の賞与支給明細書(冬と夏)
確定給付型→確定拠出型へ移行(『日本の年金制度』参照)
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