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〝クラッシャー上司〟がどんどん昇格しちゃう!中小企業『上司ガチャ』リスク(上)

エピソード1,2――加賀電子EMS事業部パワハラ被害者4人の告発

情報提供
岡部のスカイダイビング
この映像が入ったUSBをめぐるパワハラで、社員は転職を決意した。岡部剛男・中国子会社会長。(=本人FBより)

歴史の短いベンチャー企業なら、創業社長をみれば社風はわかる。だが、そこそこ歴史のある中小企業には〝モンスター役員〟が人知れずパワハラの猛威を振るっていることがあり、外からはわかりにくい。そして、社員は上司を選べないのでガチャに外れると予定していたキャリアが狂う。以下は、社員数549人(単体)のエレクトロニクス商社・加賀電子(東証プライム上場、創業56年)で起きた、〝クラッシャー上司〟に当たってしまった社員たちの体験談だ。

Digest
  • 〝クラッシャー上司〟を昇格させるガバナンス不全
  • エピソード1:深圳USBメモリ事件
  • 「おもちゃを決めて遊ぶ」パワハラ
  • 「自ら察してやれ」の理不尽
  • 「アイツが目安箱にいれてきた。くだらん」
  • エピソード2:暴力・説教・反省文の上海
  • 5分遅れで「生まれ育ったバックボーンから反省文を書け」

取材に応じた4人は会社を辞めざるを得なくなるなど、人生を変えられてしまった。一方の加害上司は昨年、事業部長(上級執行役員)の地位に出世を果たした。ガバナンスが機能している大企業であれば、部下を潰して業績を上げるタイプは、部長にすら昇格させない。パワハラ防止法など完全無視の現場実態を、被害者の視点で報告する。

〝クラッシャー上司〟を昇格させるガバナンス不全

舞台は、加賀電子のEMS事業部※。現在、約70人が所属、うち20人弱が海外駐在する。電子基板メーカーに対し、必要な部品を、協力会社から調達または自社製造して(深圳、蘇州、タイに工場を持つ)、まとめて供給する。最終製品は、多い順に自動車、空調機、産業機器、医療機器である。

※EMS=Electronics Manufacturing Services(電子機器の受託製造サービス)の略。最終製品の組立メーカーは、たとえばキヤノンやダイキンで、プリンターなら、その内部にある電子基盤を製造する部品メーカーが、ティア1。加賀電子は、ティア2として、その電子基板に入っている数百の部品を買い揃え、または自社工場で生産し、納期や金額の条件どおり提供する。メーカー機能(受託生産)まで併せ持つのがEMS事業部で、主力工場は中国。

このEMS事業部で、岡部剛男氏(現・事業部長)の部下だった4人が、それぞれ別個に、取材に応じた。全員が新卒入社組の総合職である。

岡部の写真2
2023年4月にEMS事業部長への昇進を果たした岡部剛男・上級執行役員(中国子会社の現地董事長を兼務)。パワハラで部下を潰しまくったと少なくとも4人から告発されている。

岡部氏は、中国・深圳にある「港加賀電子有限公司」(全体で約1千人、うち日本人は本体からの出向者7人)の董事長(会長)など、中国でのEMS事業トップを約20年間、勤め続けている。中国の現地法人では、この岡部会長と須田社長ら幹部による独裁体制で、独自カルチャーが形成されているという。

エピソード1:深圳USBメモリ事件

Aさん=20代後半(当時)。2017年10月、深圳へ長期出張。半年の予定だったが、パワハラ被害にあって4ヶ月で帰国し、退職を決意。大手SIerに転職した。

追記:USB事件の掲載用
当時のやりとりは今もそのまま残っている

私がこの会社を辞めるきっかけになったのが、このUSBメモリ事件です(右記参照)。担当ビジネスの顧客にあたる社内の別事業部、関連会社の社長や事業部長らが深圳に視察に来ることになり、自分が、そのアテンドで、ベンダーや工場を案内することになりました。

その際に、顧客である別事業部メンバーからUSBメモリを預かり、ハンドキャリーで岡部氏(以下、敬称略)にわたすというミッションがありました。1日目に受け取って、2日目に渡す予定でした。

スケジュールに余裕がなかったため、1日目に工場をアテンドして、翌日も仕入れ先の工場をアテンドすることになりました。そこで、オフィスに出社する先輩社員に、代わりに渡してもらおうと考えました。

その当日の朝になって、岡部から連絡が来ました。まず、チャットじゃなくて電話だろう、ということで怒られ、「おまえが今から届けにこい」とのこと。

さすがに顧客を優先せねばならないという使命感がありましたので、岡部に謝罪をした上で顧客アテンド後に渡そうと考えました。しかし、電話に一切応答せず、「お前が今から届けに来い」の一点張りでどうにもならない状況となったため、渋々「わかりました」と答え、アテンドはローカルスタッフに任せることにしました。

仕入れ先の工場に向かった社用車がありましたので、それに乗ってすぐに会社に戻ろうとしましたが、「会社のクルマは使わずに自分の力で来い」と命令されました。『お前のミスなんだから会社の経費は断じて使わせない』という理屈です。命令には絶対服従しなければ、更なる叱責が待っており、業務に時間を割けなくなるため、従わざるを得ません。

命令に従い、仕入れ先の工場から、バイドゥーマップを見て、気温30度超、高湿度の炎天下のなか、1時間くらいかけて走って会社に戻らされました。汗だくになり、やっとの思いでオフィスに到着したら、すかさず激怒され、説教が始まりました。

1本目反省文掲載用
反省文。カレンダーは営業が使うのだから社長に渡すな、連絡が遅い、など異様に細かい。

この件で、岡部から反省文を書けと言われ、7回ほど、書き直しをさせられました。午前10時から始まり、夕方の5時までかかりました。「おれのこの指摘が入ってない」などと、繰り返しダメ出し。そのたびに叱責、説教。

最後は、何も修正すべき点がなくなっても、まだ「書き直せ」というので、バージョン6の内容を、そのままバージョン8に差し替えて出したら、「よく書けてる」とOKが出ました。

内容など、一切見ていないのです。

ひたすらに叱責・説教をし続け、定時で退社していきました。そこから、関係各所に謝り倒す仕事が始まりました。そのような環境ですので、どんなに時間があっても仕事は終わりません。

そのUSBメモリの中身が何だったかというと、岡部が、自分の個人的なグアム旅行の際にやったスカイダイビングの動画だったんです。「上映しながら、駐在組を集めて飲み会するぞ!」と。

実際、スクリーンに映して、飲み会が開かれました。心の底からバカだな、と思いました。その写真がこれです(記事冒頭画像)。

「おもちゃを決めて遊ぶ」パワハラ

この話をすると、なぜそんな命令に従って反省文を書くのか、と思われるかもしれませんが、「とは言ってもね」なんです。自分は、洗脳されていました。

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「ちょっと来て手伝ってください」に対する、求められる返信

麻雀に遅刻して反省文を書かされた際の証拠

責任が重い門良一社長。「サステナビリティ中長期経営計画」を建てているが、社員の労働環境に持続可能性がみられない。

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