My News Japan My News Japan ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

「こんなこと、よくあるだろ」会社ぐるみでパワハラ容認しちゃう中小企業『上司ガチャ』リスク(中)

エピソード3――加賀電子EMS事業部4人の告発

情報提供
2本目サムネ用
「パワハラカルチャーを改善する気が全くない会社でした」と語る加賀電子の元社員Cさん

田舎の中小企業では、しばしば目の前の業績が優先され、サステナビリティ―や人権は無視されるため、入社リスクが高い。金沢市出身の塚本勲会長が創業した加賀電子(東証プライム、社員549人)も、コンプライアンスやガバナンスが機能していない会社の1つで、「事業部の数字が上がっているのだから」と人材破壊的なパワハラが長らく続いている。被害者の1人Cさんは、繰り返されるパワハラに耐えかね、本社で3時間も直訴したが俊成伴伯(取締役EMS事業部長=当時)と筧新太郎(取締役専務)の2人に「よくあることだ」と受け流され、やむをえず退職を決意。エース的存在だったCさんの市場価値は高く、年収2倍強の待遇で転職した。

Digest
  • エピソード3:賭け麻雀強制参加で120万円被害の深圳
  • 接待費用を全額自費で払え事件
  • 「お前はここにいる意味あるのか?いらねーんだよ」
  • 「こんなこと、よくあるだろ」
  • コンプラ委員長がパワハラ容認しちゃう地獄
  • パワハラ防止法、公益通報者保護法
としなりが復帰
2025年1月1日付人事。理由の開示はない。
 加賀電子はパワハラを会社ぐるみで容認したことで貴重な戦力を流出させてしまい、株主にも損害を与えたことになる。本来、チェック機能を働かせるべき社外取締役や監査役は〝お飾りの穀潰し〟で、機能していない。

同社は、このパワハラ容認の姿勢を示した戦犯の1人・俊成常務を、2025年1月1日付で「常務執行役員EMS事業部長」の地位にあえて復帰させ、コーポレートガバナンスが機能しない「古い昭和の組織」であることを改めて示した。

エピソード3:賭け麻雀強制参加で120万円被害の深圳

深圳拠点組織図
中国・深圳の組織体制図

Cさん=30代後半~40歳前後(当時):2017年~2022年、中国・深圳の「港加賀電子(深圳)有限公司」の営業部長。現地の序列は、上から岡部剛男(現地法人董事長、つまり会長)―須田達也(2022年4月に現地総経理、つまり社長に就任)―Cさん(営業部長)ほか5人の日本人出向者で、計7名体制であった(右記組織図の通り、いずれも当時)。

私が辞めるに至ったのは、直接的には須田(現地法人社長、以下敬称略)によるパワハラが原因ですが、須田がそのような人物となった背景には、岡部の影響が大きかったと思います。

岡部との賭けマージャン証拠
資金流はウィーチャットペイに記録される

岡部は、麻雀をしたことがない私に、賭け麻雀の参加を強要し、その回数は計126回、被害総額は日本円にして約120万円にのぼりました。

これは金銭のやり取りをウィーチャットペイ(右記)で行っていたため、全て記録が残っています。顧客接待の麻雀ではなく社内の内輪の賭博でした。(※AさんとBさんも麻雀強要被害に遭っている

岡部写真
岡部剛男(上席執行役員)=同社EMS事業部紹介IR資料より

私はそれまで麻雀をやったことがなく、一切興味もなかった為、ルールすら知りませんでした。これまで、この岡部としか麻雀をしたことがないのです。ずぶの素人ですから当然、負けます。会長の立場を利用した強要以外の、なにものでもありませんでした。時間もお金も、本当に、盗られていました。

その岡部のもとで育った須田(総経理=社長)が、私の直属の上司でした。麻雀以外のパワハラは、すべてこの須田によるものです。辞めるきっかけになった事件は、以下のとおりです。

接待費用を全額自費で払え事件

その日、私は営業先に直行で、外出していました。須田は出社していました。私宛ての来客が16時に予定されており、香港の重要サプライヤー(原材料メーカー)のキーパーソンでした。夜は、懇親会(接待)が予定されていました。

加賀電子が全社としても重要視しているサプライヤー様が自ら、コロナ終盤の状況下に、わざわざ香港から中国側へ渡ってきて来社して頂くので、当社総経理も紹介します(それまで須田は面識なし、テレビ会議での接点もなし)、という段取りをつけていたのです。重要な取引先、お客さんでした。

お客さんとの打合せ自体は業務上、必要なものでした。コロナ禍では需給逼迫で納期調整も多く、先方には、柔軟に対応して頂いていることに大変な感謝もありました。

須田パワハラ1追記
須田総経理とのやりとり(WeChat)※「名古屋との打合せ内容はメールで送っておりません」というのは前日に行われた加賀電子名古屋営業所との社内ビデオ会議で、別件の話である。

ところが、打ち合せに同席する予定の須田が「打合せはいらない」と突然、言い出しました。当時の心持ちはわかりません。単に虫の居所が悪かったのか、何か別件で落ち込んでいたのか。

「打ち合せに出なくていい」「帰れ」「夜の接待への参加をしたいのなら、参加を許すが自費にて参加するように。ちなみにその自費というのは顧客分、当社分を合わせたその会食費用の全額を自分で支払え」と言われました。私宛にお客さんが来ているのに、意味がわかりません。

前日に、納期や生産について部長・本部長と社内で事前会議をしていました。来客者についての事前情報の共有として、その内容を、私が当日の昼前には会社に戻るので報告します、と伝えたところ、「そんな時間ありません」「キャンセルしろ」と一方的に指示を出してきました。

総経理である自分へ前日の報告がない状態で来客を受けるのは準備として失礼、という理屈なのかもしれませんが、来客まで4時間もあります。当日になって来社をキャンセルするほうがよほど失礼だと思います。

須田パワハラ2
上記の続き。「お前、俺のコメントは無視か?」「うるせ、はやくよこせ」など社会人として不適格な発言が多い。「このやりとりを最後に、退職しました。このやりとりは、誰がどうみても異常です」(Cさん)。打ち合せにも接待にも参加することなく、Cさんは退職した。

このウィーチャット画像が、その際のものです(右記)。見ての通り、社会人として会話が成立しないのです。

これが初めてではなく、繰り返しこういうことが起こっていました。岡部も、過去に、下の人間だった須田を含めた我々に、このようなことを何度かしています。下の人間から自分が呼ばれていた会議に「出ない」と直前に言い出すことは、何度もありました。

限界だ、と思いました。私は、本件を即時、岡部(董事長)に加え本社の担当役員である俊成(取締役事業部長)にも全て報告の上、改善されないのならば退職する意向を伝えました。

としなり写真
俊成伴伯(取締役EMS事業部長=当時)、同社統合レポート2023より

そして、帰国して本体の担当取締役2名(俊成、筧)に直訴しましたが、残念ながら会社ぐるみでパワハラを容認する姿勢がはっきりとわかったため、退職届を提出するに至りました。

取締役2人からはパワハラ問題などそっちのけで、ただただ慰留だけされました。今後も改善される見込みはなく、私自身はパワハラによるストレスで心も体もガタガタでした。

もちろん、この1件だけで退職を決めたのではありません。岡部会長―須田社長のラインで日常的に行われてきたことが積み重なって重い負担となり、多数の同僚たちも被害に遭って潰されるのを見て、最終的にこの事件が起きたことで、見切りをつけることにしたのです。

「お前はここにいる意味あるのか?いらねーんだよ」

たとえば、それまでに、以下のようなことがありました。パワハラ事例を4つほど挙げます。

この先は会員限定です。

会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。

  • ・本文文字数:残り2,862字/全文5,546字

筧新太郎・専務取締役。コンプライアンス委員長ながら「パワハラ防止法」に基づく調査すらしない業務放棄ぶりだった。

公式SNSはこちら

はてなブックマークコメント

もっと見る
閉じる

facebookコメント

読者コメント

※. コメントは会員ユーザのみ受け付けております。
もっと見る
閉じる
※注意事項

記者からの追加情報

本企画趣旨に賛同いただき、取材協力いただけるかたは、こちらよりご連絡下さい(永久会員ID進呈)
新着記事のEメールお知らせはこちらよりご登録ください。