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自爆営業カルチャーのセブンイレブン、おでん初日1万個納品がノルマの店も――「自腹で買って川に流す社員もいます」

情報提供
セブンイレブンジャパン評価2024
B:不良企業予備軍
(仕事2.0、生活3.0、対価2.8)

井阪CEO&永松社長による各種「働き方改革」によって、確かに鈴木敏文時代よりもユルくはなったが、だてにブラック企業大賞を受賞していない。その信賞必罰の人事処遇にひもづいたノルマ必達の仕掛けは今も健在で、ベテラン社員たちの思考回路は漆黒のセブン色に染めあげられている。その中心は、「催事」と呼ばれる、恵方巻・中元・おでん・歳暮・クリスマスケーキ・おせち等の、季節イベントものに課された納品数ノルマだ。

Digest
  • オーナーの娘がコネ入社する一般職
  • 新卒3年中途2年超の直営店研修で疑似オーナー体験
  • 自分で5~10万円分を買う、川に流す…
  • 単純作業部署に左遷、地方に飛ばされる
  • もみ消されるホットライン通報
  • 契約にないこともやる代わりにノルマに協力してもらう
  • 商品開発による文化創出
  • 「勝手に発注した」というクレームで鬱に
  • イマイチなシェアサイクル、赤字のセブンミール
  • 抜き打ちではない店舗監査
  • 年1回100人程度が動く立候補制度
  • 3年で3~4割辞める

「自腹で買わないとやっていけないカルチャーがあるのは確かで、OFC(店舗経営相談員)にとっては、催事ノルマの数字が、人事評価・昇進・異動のすべてといってよいです。私も、催事ごとに5~10万円分を買ったことが何度もあります。自爆のおでんを余らせて、近くを流れる一級河川におでんを流していた社員もいました」(元社員、以下同)

こうした自爆営業カルチャーは、総合職で入社すると全員がまずブチ込まれる「直営店研修」から厳しく叩き込まれる。


セブンの採用データ
採用情報や公式開示資料では一般職の存在が隠されている

オーナーの娘がコネ入社する一般職

セブン開示資料によると、2022年度、新卒・中途あわせて150人を採用。かつては新卒だけで平均300人規模の採用を続けてきたが、「ホワイト化して、労働環境がぬるくなって、辞める人が少なくなった」という。中途採用も13人だけと少ない。残り137人が新卒である。

「コンビニが好き、セブンでバイト経験があってセブンの商品が好き、あとは、食品メーカーに落ちて、とか。商品部やマーケに興味がある人が多いですが、全員がまずはOFC(オペレーションフィールドカウンセラー=店舗経営相談員)配属となって店舗の現場を学びます」

ブラックセブン
セブンの豊富な商品ラインナップは、OFCに課せられた押し込み販売ノルマによって実現しており、その内情はかなりブラック。いまだ「おでん初日1万個納品ノルマ」を課されている大型店が今なお実在するという。

給与相場が高くないこと、ブラック企業大賞を受賞した件もあり、知名度は日本一とも言える超有名企業でありながら、就職における人気企業ランキング上位に名を連ねることは、まずない。

「出身大学でいうと、日東駒専がボリュームゾーン。明治、法政、早稲田、東洋、日大あたりを、よく聞きます」

出身大学による差別はなく、実力主義だ。井阪CEOは青山大学法学部卒、永松社長は東京経済大学経済学部卒である。

現場主義なので、総合職は、全員がまずOFCとして採用される。内勤専門の一般職(ほぼ女性)も実在しているが、その採用は公表されていない(つまり裏口)。女性中心の一般職がコネ入社していることが、以下5つのデータの原因となっている。

①採用に占める女性比率が40%と高い
②短大専門卒と高卒の初任給がなぜか記されている(採用している証拠)
③正社員の男女賃金格差が、男性100に対し76.7%
④勤務地限定で働く社員の比率が、男性0.9%に対して、女性28.6%
⑤時間外勤務手当が、女性100に対して男性206.8%
(いずれも2024年2月期)

「一般職は、会計スタッフが中心で、オーナーの娘などをコネ入社させるケースがあります。各ゾーンに設置された地区事務所で、加盟店への会計サポートを担当します。1つのゾーン(約1千店を統括)に20人くらいいると思います」

一般職は、採用されたゾーンの外に転勤がないし、外勤営業職と比べ残業は少なく、高卒も可。勤務地限定で働く社員の割合が男性の30倍もいるのは、総合職は全国転勤アリ、一般職はナシ、だからだ。

性別格差の一因になっているのは間違いないが、会社は分かっていながらも、「男女の賃金差異の説明」で一切、一般職会計スタッフの存在に触れていない。こうした意図的な隠ぺいは、株主や労働市場に対する誠実な姿勢とはいえない。

新卒3年中途2年超の直営店研修で疑似オーナー体験

「セブンの特徴は、最初に、しっかりオーナー体験をさせること。最短でも、新卒で3年間、中途で2年間は、直営店で働いて、店長としてオーナーシップを身に着けさせてから、OFC(店舗経営相談員)にします。この長さは、ローソン・ファミマの2倍くらい。オーナーの立場が分からないと、OFCとして、よい相談相手になれないからです」

2023年4月入社者127人の配属先は、関東75人、関西41人、東海3人、九州3人…といった具合で、部署は「OFC研修」128人となっていた(会社四季報2025より)。まずは関東と関西の都市部にある直営店で研修をOJTで3年間受ける、というのが例年の流れだ。

具体的には、ある年では、以下の流れだった。期間は、それぞれの段階をクリアできていないと、どんどん延びていく。以下は最短の場合である。

①初期の基本研修: 3週間~1か月
 ②ゾーンに配属され、トレーニー(副店長の下):2か月
 ③別の店舗で副店長:1年間
 ④赤字店舗や人手不足の店舗、大型店等で店長:1年間

この間は、店の近くで指定された借り上げアパートに住む。自分で住む家は選べない。24時間、トラブル発生時には駆け付けられる距離に住む。この直営店での研修中に、セブンの基本が叩き込まれる。それは一言でいえば、ノルマ必達意識。つまり数字に対する意識の強さ、である。

最初の3年ほどの直営店研修で「何としても数字を達成させるマインド」を身に着け、卒業後(入社3~4年目)は、平均7店舗を担当するオペレーションフィールドコンサルタント(OFC)として配属され、オーナーに買ってもらう立場に転じる。同じく目標は高く、常に前年比増の目標をノルマとして課され、必達を求められる。

夫婦経営73%
セブンイレブンは夫婦経営が72.5%(公式サイトより)

セブンのオーナーは家族経営が9割超で、内訳は夫婦72.5%、親子16.4%、兄弟姉妹10.0%。町の商店街の「酒屋」が衣替えしたパターンも多い。つまり、企業として多店舗・多角経営しているわけではなく、個人事業主や有限会社として細々と1店を経営する、という形態が中心だ。

ガツガツと売上を上げて稼ごうというより、とりあえず食えればOK、という人も多い。その意識でやられたら、セブン本部の業績も伸ばせないし、世界一のコンビニブランドにはなっていない。のんびりやられたら末端顧客の期待にも応えられない。だからOFCが尻をたたいて働かせ、発注させ、欠品のない魅力的な店舗にして、店舗と本部の売上を伸ばす。

自分で5~10万円分を買う、川に流す…

とはいえ、セブンイレブンで売っているものは、どの店も同じ商品で、客層は立地でほぼ決まっている。数字で差がつくのは「催事」と呼ばれる、季節モノやイベント商品になる。

「たとえば、おでん・中元・歳暮・クリスマスケーキ・おせち・恵方巻・父の日や母の日のギフト品、といったものです。おでんの初日納品は、目標が1万個に設定されている店舗も実在します」

「おでん結果」掲載用
「おでん結果」。担当OFCごと、店ごと、日ごとに「納品」「販売」データを一覧表で出して、ノルマ未達者は「なんでできてないの?」「明日どれだけ発注してもらうの?」と詰められる。

この営業成績を、一覧表にして、毎週、競わせる。どの店に、何個を納品し、何個を販売したか。それにしても「初日に1万個」は多すぎるように思えるが、右記の実際の管理表を見ても、実績ベースで週に4千個台、3千個台を納品している店も確かにある。ゾーン内(約1千店舗)でトップを争うような大型店ならば、初日1万個は十分ありうる数字である。

販売価格が1個120円くらいで粗利3割だから、1万個の仕入れで90万円ほどにもなる。売れ残ったらオーナーの負担は重い。

しかも、例年、まだ夏の暑い盛りである「8月下旬」から、おでんの販売を始める。これは、

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