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セブンイレブン 元社員が語る、最賃1500円で「オーナーのうまみがなくなり解約が殺到する」根拠――自走で年収660万円の店が108万円の赤字に

情報提供
セブンイレブンCタイプ契約書
『フランチャイズ(Cタイプ)契約の要点と概説』

政府が6月13日に閣議決定した「骨太方針」では、「減税政策よりも賃上げこそが成長戦略の要」と掲げ、「2020年代に最低賃金を全国平均で時給1500円」とする目標を盛り込んだ(→経済財政運営と改革の基本方針2025)。昨年の総裁選出馬の際から石破氏が主張していたもので、公明党も積極的に賛成していることから、その進捗は、石破首相の政策実現能力を測るバロメーターとなる。

Digest
  • 自公と立民が公約に掲げる
  • 零細コンビニオーナーの経営基盤を直撃
  • 「自走体制で月収150万円」の現状(Aタイプ)
  • 2大初期費用(固定資産)=土地建物、店舗設備
  • ROIは15.0%
  • 最大の運転資金(変動費)=アルバイト人件費
  • 朝帯のワンオペも可能――人件費調整がオーナーの実力
  • 56万円/月ものコスト増に
  • 悩ましい「廃棄ロス」コスト
  • Cタイプは社会主義的
  • 平均的な日販のCタイプはオーナーが働かないと…
  • 「アメとムチ」によるドミナント戦略
  • Cタイプ標準オーナーは最賃1500円で年収950万→517万に
  • 「オーナーのプロ経営者化」を進められるか
  • 歪んだ利益配分を組み替えられるか

自公と立民が公約に掲げる

最賃1500円に
2029年(あと4年)までに最賃1500円

最大野党の立憲民主党も「1500円以上」を公約に掲げていることから、参院選(7月20日投票)で議席を減らすことが想定されている与党が、仮に大負けして(50議席未満)自公で過半数を割り込んだとしても、自・公・立憲の連立政権ができれば、共通の政策として進められる。むしろ、大義名分として利用されてもおかしくない。

最賃は、毎年7月末ごろに、厚労省の中央最低賃金審議会が目安を発し、10月1日から改定。2024年は過去最大の引き上げ幅となり、全国加重平均1004円→1054円(4.98%増)だった。「2020年代に1500円」実現のためには今後5年で445円(名目)の引き上げが必要で、年平均7.3%増ペース(※2025年は1130円以上)。物価が同じペースで上がることは考えにくいため、国策で実質賃金を引き上げる効果を期待でき、「賃金と物価の好循環」を促すうえで、やらない理由はない。

一方で、国民民主党・参政党・日本維新の会は最賃1500円のような数値目標を掲げておらず(国民民主党は全国一律1150円を主張)、急激な上昇には消極的。これら3つの野党が選挙で大幅に躍進し、連立政権入りすると、国会でブレーキがかかる。なお、れいわ・共産・社民は最賃1500円に賛成の立場なので反対勢力にはならない。

参院選直後となる2025年7月末の審議会は、「骨太方針」の内容を受けて決まるため(最終的な決定権者は厚労大臣)、「7.3%アップ」に達しなければ、経済界の反対に屈していきなり挫折したことになり、石破首相のリーダーシップ欠如が改めて認識されることになる。

零細コンビニオーナーの経営基盤を直撃

最賃についてもっとも身近なところで接点があるのは、学生や外国人留学生を含む、スーパーやコンビニのパート労働者たちだ。最大手・セブンイレブンによるフランチャイズシステムは、最賃1500円に上がっても問題なく回るのか――。

元社員に具体的な現場の数字を提供してもらい、現状の実際の経営数値を前提に試算したところ、いずれも自走(オーナー自身がシフトに入らずスタッフに任せる)オペレーションの場合では、土地建物を自前で用意するAタイプ契約ではオーナー利益半減、初期投資がかからないCタイプ契約では赤字転落という結果になった。

本部(セブン&アイ)は財務に余裕のある超大手企業であるが、直営店は全国に150店だけで、2万1552店あるセブンのコンビニ店舗のうち99%超は、零細オーナーによる経営の集合体。複数店経営はかつてよりは増えたものの、オーナー全体の3~4割にとどまるという(正式には非開示)。主力はオーナー1人による1店舗経営であり、急激な変化に弱い。

コンビニはフランチャイズ(FC)システムをとっており、FCオーナーが各店を経営している。モノもサービスも看板も本部にお任せで、本部の社員によるコンサルティング(経営相談)を受け、本部とリスクをシェアしながら経営している。ただし、人件費のコントロールはオーナーの裁量に任されており、そのほとんどが、最賃の影響をもろに受けるアルバイトスタッフで構成されている。

「セブンは、本部の社員がオーナーの疑似体験を最初に3年間、直営店で経験します。どうやって利益を出すのか、現場でオーナーマインドを植え付けられるのです。土日に休むという概念はなくなりますし、数字に対する意識が強まります。その後のOFC(オペレーション・フィールド・カウンセラー=店舗相談員)業務でも、売上・利益をどう出すかを日々、考えます」(OFC職の元社員、以下同)

この本部社員(OFC)が5~7店舗あたりに1人の割合で担当としてつき、オーナーの経営指導にあたる。OFCは、経営の改善指導をするうえで、月次の費用内訳をはじめ、日々、決算書の数字を見ているので、コスト構造を詳しく知る立場にある。

「担当しているオーナーの経営状況を見ると、オーナーの収入もわかります。店によっては、自分よりオーナーのほうがはるかに儲かっていて夢があるから、OFC自身がやる気をなくす、ということも実際、あります。ただ、現状の契約のまま1500円に引き上げられたら、経営自体が成立しない店が続出しますし、『オーナーのうまみ』がなくなるので、解約が殺到して、フランチャイズが成り立たなくなると思います」

以下、実際の店舗の、直近の売上と支出構成から、具体的に検証した。土地・建物を自前で用意するAタイプと、店舗の貸与を受けるCタイプ、それぞれについて、いずれもオーナーの手がほとんどかからない、自走できている店舗である。

「自走体制で月収150万円」の現状(Aタイプ)

まずはAタイプ。セブンの1日あたり売上高(日販)は、平均69万2千円(2025年2月期)。その数字に近い、平均的な店舗のデータを取り寄せてもらった。以下が、平均日販が約65万円だったセブン店舗の、ある月のコスト構造である。月次の変動費でもっとも大きい支出項目は、やはりアルバイトに支払う「人件費」で、次が売れ残り生鮮品の「廃棄ロス」だった。

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Aタイプの月次収益

AタイプとCタイプの店舗推移(2025年2月期まで)

累進税率のように抜かれていくロイヤリティ

Cタイプ(土地建物は本部が用意)の月次収支

加盟条件(Cタイプ)。基本的にオーナー夫婦がシフトに入ることを想定している。

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