3.定年に関係なく稼げる職種とスキル ♯【雇用安定性にギャップがなく納得性が高い】
❐雇用―対価軸『いい会社はどこにある?』
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「60代70代でも食える仕事 食えない仕事マップ」 |
組織に所属しようがしまいが、年齢に関係なく働けて、自分が引退したいときに引退するのが理想的な仕事人生であろう。《60歳が定年、65歳までは雇用義務、70歳までは努力義務で働けるように》――高年齢者雇用安定法より――というのは、社会の安定のために政府が勝手に決めたルールに過ぎないのであって、本来、そんなものに個人が縛られて生きる必要はない。
- Digest
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- 人間にしかできない仕事
- 定年後の雇用と「会社の看板」の関係
- 「80代で現役の司法書士」は珍しくない
- 技術進化・グローバル化に耐えうるか
人間にしかできない仕事
だが、20歳から80歳まで60年間もあって100歳まで生きるとなると、時代は確実に移り変わるし、テクノロジーや市場ニーズも変化していくので、そう簡単ではない。
前著『10年後に食える仕事食えない仕事 AIロボット化で変わる職のカタチ』(東洋経済新報社)を熱心に読んでいただいた労組役員のかたの依頼で講演※を行ったのであるが、そこで重要なテーマとなったのが、『テクノロジー失業』問題だった。
※「UAゼンセン」=全国168万人の組合員を擁する日本最大の産業別労組で、そのなかの流通部門(105万人)のリーダー向けプログラムとして行った。出席者は主に、伊勢丹・マルイ・イオン・オートバックス…など単組の専従者のかたたちであった。詳しくは「デジタル化で流通・小売業の職場はどう変わるのか――EC化率50%時代の『職人プレミアム』な仕事」参照
いわく、《IT化・自動化を進めると、同じ仕事量を、より少人数の社員で回せるようになって、企業利益は増え、給与の原資は増やせる。だが、それは社員が頑張ったからではなく、経営陣がIT投資した結果なので、増えた利益を社員の報酬に振り向ける理屈は成り立たないのではないか。そして、IT化・機械化で人間は減らせるので、雇用を失う人も出てくるのではないか。雇用を維持しながら社員の給料を上げたい労組としては、いったいどうすればよいのか?》――という、切実なものだった。
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第3章対価軸の構成:本稿は書籍『いい会社はどこにある?』元原稿《一部アップデート版》です |
だからといってIT化に反対していたら仕事の効率が上がらず(労働生産性が上がらず)、競合他社に負け、国際競争に負け、会社ごと潰れてしまう。そこは労組も理解している。IT化、すなわち、流通業でいえば、EC化(ElectricCommerce=電子商取引、ネット販売)は、不可避だ。リアル店舗での対人スキルと、ネット販売のサイト運営スキルや物流・ITスキルは、全く必要となる能力が違うし、必要な人間の絶対数は減っていく。
雇用を守る使命を持った労組としては、どうすべきなのか。
1つの明確な答えは、《人間にしかできない仕事、人間ならではの付加価値を出せる仕事》への、積極的なスキルシフトである。リアル百貨店や小売店で、お客さんが人間にぜひやってほしいと思う仕事は何なのか。
カリスマ店員までいかなくても、たとえばローラアシュレイというブランドなら、全身ローラアシュレイの店員がいるから、ファンの女性がわざわざ店に足を運び、感化されて、新商品などのブランドに特化した専門的な知識をもとに説明を受け、商品を買って帰る。ユニクロも、店員は全身ユニクロを着て、歩くマネキンとなり客の購買意欲を高める。そういう、《ブランドハピネス》を自ら体現し、店の雰囲気を作れることが、人間に求められる。
「ECと違って、店頭での買い物には、エンターテインメントの要素があると思います。家族みんなで行って、ウインドーショッピングをして。だから店員は、楽しく買い物ができる雰囲気作りのために、常に笑顔で『いらっしゃいませ』と声を張り上げ、『活気出し』をし、こまめに商品整理をして並べ、見た目をきれいに保ちます」(ユニクロ店長)
機械に、活気は出せない。ブランドハピネスも、醸し出せない。これは飲み屋も同じ。「居酒屋は、雰囲気を求めてやってくる客が多いんです。アルコールを飲みにきてるから。そこが普通の飯屋とは違います。店員と会話したい、というニーズがある」(『笑笑』などで勤務したモンテローザ元店長)。売上につながるコミュニケーション力が人間にあれば、雇用は盤石である。機械化したら売上が減ってしまうので、やる理由がない。
もう1つは、
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