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倒壊か解体騒音か、隣の姉歯物件が「迷惑としこりの元凶」に

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元1級建築士・姉歯秀次被告が最初に耐震強度偽装に手を染めた分譲マンション「ゼファー月島」。
 東京・月島(中央区)にある、元1級建築士・姉歯秀次被告が最初に耐震強度偽装に手を染めた「初の姉歯物件」の分譲マンション「ゼファー月島」が、近隣住民にとって「迷惑としこりの元凶」となっている。解体費用2億円は公的資金で、新築費用も自治体と不動産会社ゼファーが負担するため、住民は自己負担なしで自宅が「築10年」から「新築」となる。一方、解体工事業者も行政も基準値を上回る騒音を出す可能性を認めており、静閑な住宅街に住む近隣住民は「一体どれくらいの騒音が出るのか」「なぜ補強工事ではダメなのか」と不安と反発が広がっている。

◇偽装を見抜けずダブルミス
 木村さん(仮名、男性)が、自宅兼仕事場のすぐそばにあるマンションが「姉歯物件」であることを知ったのは昨年夏ごろである。住民が次々に退去し、そのたびに退去を知らせるチラシが、マンションの管理組合から近隣の家に投げ込まれるようになったからだ。

 このマンションは総合不動産会社「ゼファー」(本社・東京都中央区)が分譲した「ゼファー月島」。1997年5月に同区が建築確認し、98年5月に完成した。鉄筋コンクリート造・8階建ての建物に、ワンルームとファミリー向けの部屋が計20戸ある。

月島名物「もんじゃ焼き」に加えて、この元1級建築士・姉歯秀次被告が最初に耐震強度偽装に手を染めた「初の姉歯物件」が、あまりありがたくない「有名なもの」となってしまった。

 マンション住民・所有者がつくる「ゼファー月島管理組合」の志村孝美理事長(中央区議/共産)に木村さんが聞いた話によると、このマンションが「姉歯物件」だと知ったのは05年12月。ところがこの時点で、中央区役所は「再計算の結果、耐震性に問題なし」と国土交通省に誤った報告をした。
 
 97年の建築時に偽装を見抜けなかったことも合わせるとダブルミスを犯したことになる。結局、06年6月に「建築基準法の最低規準の43%」という建築強度がわかる。

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古い木造家屋の隣家と壁を接するように建つ「ゼファー月島」。
 ここでマンション住民に選択肢は2つあった。マンションを「解体」して更地から建て直すか、現況の建物を解体せず「補強」してそのまま使うか、である。が、同管理組合は、木村さんも含め近隣住民の意見を聞かないまま、マンション住民・所有者だけで同年12月には「解体」を決めた。

 志村理事長は06年12月30日付で近隣住宅に「解体を決めたことを知らせるチラシを配った」と主張しているが、少なくとも木村さんの家には入っていなかったという。また、07年11月の説明会の段階でも、「補強ではなく解体」を知らない住民がかなり残っていた。

 そのため、説明会では「補強で済むことなのに、住民のエゴじゃないか」という強い不満の声が出た。マンション住民側は「偽装発覚当時から隣接の町内会役員に相談している」と説明しているが、その役員は「絶対にそんなこと聞いてない」と否定している。

◇解体工事で会話困難の騒音も
 同マンションは「第1種住居専用地域」にある。周囲は下町の面影を色濃く残す、戦前に建てられた木造瓦葺きの長屋家屋が並ぶ。自動車の往来もほとんどない、静かな住宅街である。

 しかも、住宅密集地に建てられたため、マンションと隣家の壁の間隔は、狭いところで40センチ、広いところでも70センチ程度しかない。ここで鉄筋コンクリートを破砕する解体工事が始まった場合、工事の騒音がそのまま隣接する家の中に飛び込む可能性が高い。戦前の木造家屋は壁が薄いので、後述する先例のように、屋内でも会話ができない恐れすらある。

 住民は高齢者や自営業者が多く、工事が行われる時間帯(交渉の結果、マンション側が譲歩して午前9時から午後4時になった)にも自宅にいる世帯が多い。サラリーマン家庭でも、妻や小さな子供が家に残っている。

 木村さんのように、自宅を仕事場に原稿執筆や電話取材などの作業をする職種にすれば、騒音で業務に支障が出ることはまず間違いない。

 解体工事を担当する「渡辺解体興業」(本社・東京都江東区)の説明によれば、

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「ゼファー月島」(タイル張りの建物)と隣家の間隔は、広いところで70センチ、狭いところでは40センチを切る。遮音パネルを貼るのも難しいところが出そうだ。

「ゼフォー月島」補強工事のプラン図面。緑と黄色は、建物の外側につける強化のための梁と柱。この補強案は、壁の強化(赤い部分)のために窓を塞ぐところが何個所かあるために住民がボツにした。

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