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トヨタ・アドハラで見えた会社側の立場、候補者の立場

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記事後半は『PRESIDENT』4/14発売号『ライバル対決!「年収と出世の階段」全図解』原文。
 『プレジデント』4月14日発売号の『ライバル対決!「年収と出世の階段」全図解』を書いた。文字通り同じ業界でのライバル2社を取り上げ、図解・比較するもの。当初、自動車業界は、なぜか「日産VSホンダ」だったため、トップのトヨタを入れるべきと提案すると「トヨタにだけは玄関取材を」と編集長の指示があり、取材に赴くことに。広報取材など99年以来のことで、実に9年ぶりだ。話を聞き、キャンディデイト(応募者)とは180度異なる会社側の考え方を再確認した。
Digest
  • アドハラの本質
  • 自動車産業にスーパースターは不要
  • デキない8割の人たちをどうモチベートするかが大事
  • 40代半ば、同期で600万の開き
  • アカデミックエリート優遇の傾向

アドハラの本質

玄関取材ほど実りないものはない。出てくるのは公式発表、大本営発表ばかりで、本当の話はしてもらえない。給与についても、立場上、答えられない。特にネガティブな話はご法度だし、出世競争の話も予想どおり「人事秘です」と言われた。だから私は、いつも広報を通さずに社員を取材している。

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上:トヨタ自動車東京本社。
下:1Fエントランス。大学別の事実上の選考会をやっていた。まだ3月28日なので、倫理憲章違反の疑いが強い。

では、なぜ広報取材が必要なのかというと、「人事秘」がマスコミに出て、トヨタ社内で問題視された場合に、抗議を受けるプレジデント社側としては「丁寧な取材に基づいた記事だ、実際、正式に広報部にも趣旨を説明して取材に行き、確認したでしょう」と言えるからだ。

さらに、どうしてトヨタに限って玄関取材が必要なのかというと、強力な広告主(日本一の年1千億円超)で、かつその立場を利用するからだ。記事が載った同じ号でもトヨタの広告が出ているのだから、気を遣うのも仕方がない。だが、余計な取材時間をとられる私から見たら、これは「アドハラ」(アドバタイズメント・ハラスメント)ともいうべきものだ。

もちろん、トヨタは「そのような圧力はかけない」と否定する(玄関取材時も否定した)。ではなぜ長坂嘉昭編集長がトヨタだけに行ってくるよう言わねばならないのか、説明がつかない。過去の経験や事例から類推して、「やはりこの内容だと、人事秘データだし、行っておいたほうが無難だろう、後で何されるか分からない」と判断したわけである。

 『 松下が『宝島』に圧力 警察天下り受け入れの特集6ページがボツに』も同じ構造だが、こういった見えない圧力によって自主規制に追い込むことこそが、ホンモノの圧力、言論弾圧の本質なのだ。

自動車産業にスーパースターは不要

玄関取材で広報担当者が言った話を書いておこう。人事部門に在籍経験もある基幹職2等級のベテランで、かなり社内事情に熟知している様子だった。

給与テーブルがいくらかは、人事秘ですので、出しておりません。報いてあげられる人の数が限られているので、多めに貰えない人をモチベートすることを考えると、公表すべきかは、微妙なところです。自動車産業というのは、スーパースターがいて、その人の力で引っ張れる産業ではない。チームでやらないと。部品点数が多いので、販売も製造も力を合わせてやらないと。

デキない8割の人たちをどうモチベートするかが大事

 どの会社でもそうですが、デキる人は2割で、8:2とすると、デキない8の人たちをモチベートして仕事をさせることを考えるのが大事なんです。実際、多めに貰えている人について考えても、お金のことを考えたら、ほかにもっと高い給与の仕事はたくさんありますから、公表するメリットは少ないでしょう。

これが会社の立場からの論理だ。人は立場によって考え方が変わる。これが現在、社員になるか考えている候補者の立場からは、正確な事実を事前に知らせて当然だろう、報酬や出世の仕組みが分からないのでは人生設計できないではないか、となる。自分がデキる2割に入るのか、デキない8割に入るのかは入社前は分からないにせよ、いずれにせよ、相場をつかんでおく必要があるのだ。

そこに、この記事の付加価値がある。以下が、掲載記事の原文である。アドハラをしてでも出したくないトヨタの「人事秘」情報が満載である。

【トヨタvs ホンダ】

 トヨタとホンダを比べると、トヨタのほうが、選抜が厳しく、ホンダはぬるい。 トヨタ社内で、社員のほぼ全員が意識している用語がある。「特選」「一選」「二選」「三選」「四選」、そして四選にも漏れてしまった社員が臨む、確率的には絶望的に近い「復活枠」。

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出世の仕組みと報酬水準の図解。
上:トヨタ自動車
下:本田技研工業

これらはつまり、同期入社組で昇格する順番であり、要するに、昇格対象者は、入社年次で上下4年だけ、ということを差す。チャンスは年に一度で

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出世の仕組みと報酬水準の図解。上:シティバンク下:みずほ銀行

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回答42008/04/25 10:39
回答32008/04/25 10:34
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20年後の自動車業界2008/04/16 20:41
読者2008/04/16 19:55
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