「押し紙」排除キャンペーンのための、横断幕とのぼり。街宣活動で使用される。
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「押し紙」問題を追求してきたフリージャーナリストの黒薮哲哉氏が10月20日、読売新聞西部本社の江崎法務室長から恫喝されたとして、220万円の賠償を求め、福岡地裁に提訴した。メールで送付されてきた催告書の中で、江崎氏が、回答書は著作物だなどと、まったく根拠のない理屈を振りかざして、刑事告訴などをほのめかした、というのがその理由だ。黒薮氏は、読売側から2つの裁判を仕掛けられており、今回の提訴は「反撃」の開始とも言える。提訴に際して、黒薮氏が手記を寄せた。
【Digest】
◇恫喝文書による取材妨害
◇問題の回答書
◇著作権法で何を守りたいのか?
◇ 「思想又は感情を創作的に表現した」箇所は?
◇回答書は争点から外す
◇“仮裁判”で敗訴
◇根拠のない主張に基づいて
1通の書面がわたしの手元にある。弁護団(江上武幸弁護士ら10名)を通じて福岡地裁へ送付してもらった訴状のコピーだ。内容は恫喝めいた文書によって受けた被害の賠償を求めるものである。請求額は、220万円。被告は、読売新聞西部本社と、同社の江崎徹志法務室長である。
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「押し紙」報道に対する圧力は強くなる一方だ。「押し紙」が新聞社の財源を支えているからだ。

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訴状を読む江崎氏の心中を想像すると、わたしは昨年の12月の暮れ、いきなりメールで催告書を送付され、その内容に戸惑った自分を思いだした。送付した人物は江崎氏その人だった。通常、初対面の人にメールを送る時は、本題に入る前に自己紹介するのが常識だが、江崎氏は、
黒薮哲哉殿
催告書を添付しました。
と、簡潔きわまりないメールに催告書を添付していた。どこのだれとも分からない人物から、わたしは催告書を頂戴したのである。本当に読売の社員なのか否かも分からない。しかも、この文書はわたしに対して驚くべき要求を突きつけていたのだ。
詳細については後述するが、催告書を読み進むにつれ、わたしは恫喝文書の一種ではないかという疑いを抱いた。そこで自分が主宰するWebサイト「新聞販売黒書」に催告書の全文を掲載した。この掲載が、後日、江崎氏がわたしに対して提起する著作権裁判へと発展する。
◇恫喝文書による取材妨害
メディアを通じて何かを伝えることを職業にしている新聞人が、言論とは別の手段を最上段に振りかざして一個人を攻撃するのは憂うべき事態である。プロとしてのプライドがあるのか、疑いたくなる。
現在、わたしは読売と江崎氏から2つの裁判を仕掛けられている。このうちのひとつは、新聞販売黒書の記事で名誉を毀損されたとして、2230万円を請求する高額訴訟である。もうひとつが本稿で取り上げる著作権裁判である。
さらにわたしはこれまでも新聞関係者から何度か、恫喝文書を受け取ったことがある。たとえば1997年の10月に、FAXで次のような書面が送られてきた。(この文書は、拙著『新聞ジャーナリズムの「正義」を問う』に収録している。)
黒薮殿
お前のようなのはジャーナリストではない。
つまらぬことはするな。
いつでも堂々と相手をしてやる。
うちの会長・社長に迷惑を及ぼしたら覚悟はできているだろうな。
依頼人 平成の仕置人
当時、わたしは新聞業界の不正経理問題を取材していた。かなりあちこちに探りを入れていたこともあって恨みをかっていたのか、自宅に無言電話が頻繁にかかってきた。留守番電話に延々と奇声や雑音を録音されたこともある。嫌がらせはさらにエスカレートして、
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江崎氏に宛てた12月24日付けのメール。「著作物」の定義について質問したが、回答はなかった。
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福岡地裁へ提出した訴状。
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