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人財を潰す予備校「東進」 今度は若手校舎長の自殺が発覚、会社は「病死」と隠ぺい――「人生を破壊する組織」の実態を元社員が証言

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「東進」校舎長時代に使用していたパンフを手に取材に答えるインタビュイー。「東進は校舎を毎日開校しなければならず、要求される大量の業務を全てやりこなすためには休みを削って出るしかありません」と証言。
 千葉県内にある東進衛星予備校の若手校舎長(30歳前後)K氏が、2012年6月に自殺していたことがわかった。社内会議では「病死」と社員らに嘘を報告し隠ぺいされていたが、元同僚は、過酷な労働環境が原因と証言。「私が知る20校程度の範囲ですが、2012年以降で、4人が病気で倒れ、2人がお亡くなりになりました。追い詰められて辞めた人は10人を超え、離婚した人も3人は知っています」。東進では2014年にも30代前半の校舎長が過労死と思われる亡くなり方をしており、ブラックな労働実態は放置されたままだ。ナガセは企業理念で「独立自尊の社会・世界に貢献する人財を育成する」とうたうが、実際には「東進」事業を通して“人財”を潰している。「このままでは私も過労死して原因も隠ぺいされる」と危機感を抱き退職した元社員が、実情を語った。
Digest
  • ワタミか東進か――生徒からも言われる
  • 山中で自殺、社員には病死と伝える
  • 倒れる社員が相次ぐ、過労死前の危険信号
  • フランチャイジーの仙台進学プラザは取材拒否
  • 「ブラック企業そのものだよ」
ナガセによる恫喝訴訟(SLAPP)をきっかけに、東進グループの社員・元社員からの内部告発が相次ぎ、これまで隠されてきた東進の恥部が続々と明らかになってきた。ナガセが訴訟の対象としてきたのは、2011年に西日本の東進衛星予備校で若手校舎長が精神疾患で倒れ退職に至った件であるが、今回の自殺は東関東(千葉)の東進衛星予備校で発生。前回報道の突然死は東北(宮城)の東進衛星予備校での話である。全国の「東進」で問題が噴出している実態が明らかとなった。

ワタミか東進か――生徒からも言われる

「東進から抜けるには、辞めるか死ぬか、どっちかだよね」「投身と書いて東進だな」――社内では、そういうジョークが交わされていました。ちょうど、ワタミがブラック企業として問題になっていたので、「ワタミか東進か、ですよね」と複数の生徒から言われたほどです。生徒はよく見ていますから。面談室に入って、私が上司に詰められてキツそうな顔で出て来るので、「あー、イビられてる」と分かるんです。

新年度継続契約の時期に目標に達していない校舎の責任者は、毎日2時間以上の叱責・罵倒が続き、退勤時間を大きく過ぎた深夜まで及ぶことも常でした。

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ある月の勤怠管理表。休日が1カ月で1日しかない。

目標数値が達成できていないペナルティーとして、多くの社員が休日返上の出勤を命じられ、サービス残業となりました。勤務報告書は休んだことにして提出しなければならず、気力・体力を消耗させられ、毎年病に倒れる社員が出ていました。

左記写真の勤務報告書の赤字の部分は、自己防衛のために自分で別に出社記録を取っていたものを記したものです。これが実際の労働時間で、この月は1日しか休みがありません。いざとなったら出せるよう、記録していました。自分自身の身は自分で守らねば、自分も死んでしまうという恐怖が、常にありました。

自殺したKさんも、私と同じ課長のもとで、休みなく働かされていました。だから、Kさんも私と同じような感じで追い込まれたんだろうな、と思うんです。

「そんなこともできないなら辞めちまえ!」などと部下を罵倒するタイプで、部下はみんな同じようにいびられ、パワハラを受けています。部下を潰し、使い捨てて行くいわゆる“クラッシャー上司”なんです。

目標数字に達していない場合、実際には存在しない申し込みをでっちあげて、売上計上する手法を「カラアゲ」と社内では呼んでいましたが、決算期である3月末になると、課長からの指示によって、多くの部下が手を染めざるを得ませんでした。

ナガセは3月末の決算数字を無理やり作るために、エリアカウンセラー(AC)を通して、加盟校に強いプレッシャーをかける。3月末は10日間、全国のAC全員が吉祥寺の本社に集められ、1人が1日150本もの電話をして、加盟校に追い込みをかけるのだという。「朝10時~夜10時まで拘束され、そこは報道番組で見る『オレオレ詐欺のアジト』みたいになります。ここまでやる予備校は他にないでしょう。昼ごはんもろくに食えず、晩御飯も23時まで食えない。売上が目標に達していないと、『今日中に出せ』と上司から詰められます」(ナガセ元社員)

これは、東芝の粉飾決算問題で発生した「チャレンジ」と同じ構図で、不正の温床となっている。“カラアゲ”は、既報の通り、他の衛星予備校でも行われている。

「エリアカウンセラーはある裏技を教えた。入塾の見通しがない生徒や親に頼みこんでいったん契約してもらい、4月になったら、すぐに解約してもらうのだ。ほかのFC校でもやっている、とエリアカウンセラーは言った。決算用の数字をつくるためのあこぎな方法だとAさんは不快に思った。しかし、ナガセにはさからえない。契約してすぐに解約する。そういうのが、多いときで5件くらいあった。」(『私が就活難の末に入った東進衛星予備校も“某居酒屋チェーン”のような過酷さでした』より)

 こうしたナガセ側・FC側の数々の証言からは、ナガセの決算数字がゲタを履かされたものであること、そしてナガセのコンプラ意識が低いこと、がわかる。

山中で自殺、社員には病死と伝える

自殺発覚の経緯を、私の知る範囲で、詳しくお話しします。生前のKさんは、ひょうひょうとしていて、ひょうきんな感じで、数学の能力が高く、生徒に教えるのもうまい人でした。以下は、亡くなったKさん本人および同僚からの聞き取り、そして私自身の体験によるものです。

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Kさんが勤務していた東進衛星予備校。看板を撤去した痕が残っている(グーグルストリートビューの2011年当時)。

Kさんは2011年3月の東日本大震災当時は、宮城県内の東進衛星予備校で勤務していました。津波が来て1階が水浸しとなるなか、避難して難を逃れました。数日間、仙台駅前にある本部と連絡がとれませんでしたが、同僚2人で自転車を借りて仙台までやって来て、無事を伝えたそうです。

被災して再開どころではないため、1カ月ほど、茨城の校舎の手伝いにやってきて、それからいったん東北に戻り、秋頃から、茨城県内にある生徒数150人ほどの大きな東進衛星予備校で数カ月ほど校舎長のサポート業務を行ったあと、千葉県内にある小さな東進衛星予備校2つの校舎長への異動となって、直後に亡くなったのです。2012年6月のことでした。

会社の集合研修があって、全課の社員が1か所に集まったのですが、「Kさんがいない」と気づいた。同僚が上司と一緒にKさんの家に行きましたが、会えなかった。この上司というのが、東進部門20校ほどを率いる課長です。

翌週の部門ごとの定例会議で、各部門の部門長から「K君が病死した」という発表が、それぞれ行われたそうです。「亡くなった原因は病気です。実家は東北地方で、会社で葬儀や香典は済ませてあるので、皆さんはしないで下さい」という内容でした。「有志で香典をあげられないか?」と我々が言うと、「会社で全部やったから」と断られました。

いかにも不自然だったので、同じビル内で働いていてKさんを知っていた社員たちは、口々に「おかしいよね」「真相がわからない」と、当時はみんな言っていました。私も、Kさんが亡くなる一週間前に牛丼を食べて元気にしていたのを見ていますし、病気だと言われても、納得できませんでした。

病気で休みがちだったということもなく、持病があるという話もありません。直前まで休みなく働いていましたから、すごく気持ち悪い事件でした。

真相がわかったのは、およそ1年後です

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「人が死んでいるのに、その原因を直そうとしない会社の態度はおかしい」と語るインタビュイー。

上:仙台進学プラザの子会社、イー・エス・ティの校舎一覧。ナガセとのフランチャイズ契約に基づいて運営する東進衛星予備校は、大きく4つあるうちの1部門という位置づけ。下:現在は3県で18校の東進衛星予備校を運営。別途、思学舎ブランドも展開。

2016年5月19日開催の第23回東進衛星予備校全国大会の様子。内容は、表彰と成功事例発表、そして永瀬社長の独演会。帝国ホテルで行われ、景品や懇親会の食事なども豪華絢爛。衛星予備校事業で、よほど儲かっている様子だ。

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2016/07/29 23:35
2016/07/24 23:35
 2016/07/23 23:05
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