『報ステ』トヨタ報道がデタラメな件
トヨタの闇
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「世界のリコール王」トヨタ問題で、英国の保守系高級紙「The Times」の取材を受けた。私はトヨタのリコール車に乗っていた当事者で、リコール問題を調査報道し、本も出版し、近年のトヨタ本のなかでは一番売れているのだから、識者として適任だ。『トヨタの闇』を読んだ米国大使館政治部からも話を聞きたいという連絡がきているが、トヨタの完全支配下に置かれている国内メディアは恐れをなして何も言ってこない。
トヨタのリコール問題の本質は、どのメディアも伝えていない。なぜなら自分の問題だからだ。ほとんどのテレビは「リコールが○台」「米議会が公聴会の開催を決めた」など短く事実関係を伝えるだけ。当日2番目のニュースとして長めに伝えた2月2日の『報道ステーション』は、特に意味不明でデタラメな内容だった。
いわく、今回のトラブル部品(ペダル)は現地の部品メーカーが作ったものだが、80年代の日米自動車摩擦で対米輸出を減らすために米国現地生産を半ば強制された結果だ、というVTR。米国の政治圧力の結果、米国のダメ部品メーカーから仕入れたから問題が起きたのであって、「ケイレツ」取引を重視したかったトヨタ様は、政治の被害者なのだ、といわんばかり。トヨタのCM欲しいのは分かるが、完全な嘘っぱちだ。
なぜなら、トヨタは国内では既に、2004年と2005年に188万台超のリコールを出して、国内販売台数を超えていたからだ。国内でも起きたことが海外でも起きただけ。国内の部品メーカーに作らせようが米国現地メーカーに作らせようが、設計はトヨタがやって下請けに作らせるだけなのだから、企業の国籍は関係がない。
トヨタは調達部門が生産管理部門と並んで出世コースであり、調達の社員が下請け部品メーカーに入り浸って、「これもっとコストダウンできるでしょ?」と徹底的にいじめ抜いて、素材の指定までする。今回のペダルも、設計したトヨタに責任がある。一部のペダルに不良品が混じっている訳ではなく、そもそもの設計が間違っていて全車改修なのだから。
つまり、国内でもリコール王だったトヨタが、その体質のまま、相似形で世界のリコール王になっただけ。本来ならば、グローバル展開を急激に進める前に、品質管理などを徹底し、過去のリコール車の改修を終え、準備が整ったところで世界1000万台を目指すべきだった。なにしろ、リコール台数ナンバー1企業だ。
しかし、トヨタを止める者はいなかった。ここに、今回の問題の本質がある。ジャーナリズムも、国交省も、政治家も、全部グルの共犯だった。1000億円の広告宣伝費で口止めされたマスコミ、愛知万博などイベントで協賛を得たい官僚、政治資金と選挙の票が欲しい政治家。政官業のパーフェクトな癒着だ。
私が乗っていたリコール対象車(ハイラックスサーフ)は33万台販売されていて、どれだけ改修を終えたのかを尋ねると、国交省は、非公開だ、たぶん9割くらい、と言った。情報公開法で資料を出させたら、たった5割だった。まだ16万台も、ハンドルがきかなくなる恐れがある欠陥車が公道を走っていたわけだ。一方、ホンダ車のデータを見ると、改修実施率9割と優秀だった。
本来、欠陥車を撒き散らした状態のまま海外展開するなど、100年早い。マスコミがちゃんと報道していれば、国民の眼も株主の眼もあるから、トヨタも考え直しただろう。だが、こうした事実を報道したのは、弊社だけだった。今となっては、単純にリコール台数の推移データを報道することすらできない。これまで共犯で隠してきたから、いまさら出せないのだ。
行政も、メーカー別の経年リコール台数すら非公表だった。国交省は消費者の命を軽視し、トヨタのほうばかりを向き、トヨタに都合の悪い情報は隠していた。国交省がしっかりウェブ上に改修率やリコール台数を開示していれば、トヨタもまずは欠陥車が出にくい体制を作ってからグローバル展開をしよう、と思いとどまったかもしれない。
結果、トヨタは慢心した。少しくらいリコール出したって、マスコミはカネの力で簡単にコントロールできるし、本社に家宅捜索に入っても報道しないでおいてくれる。裁量次第でどうにでもなるリコールなど、国交省に圧力かければ「自主改修」に格下げできる。そもそも三菱ふそうのリコール隠し問題以降、突然、リコール台数が増えた(トヨタは2003年→2004年で倍増)が、法律自体は何も変わっていない。リコールの基準など、国交省の胸先三寸なのだ。
政治家は一番簡単で、政治献金で押さえられる。「国民政治協会」を通して自民党へ流し込み、民主党にはトヨタの現役社員(古本氏)や、トヨタ出身議員が中枢(直島氏)にいる。トヨタには、全能感があった。
だが、それはあくまで国内での話。米国の消費者や政治家を同じようにコントロールできると思ったら大間違いだ。日本でうまく行っていた「政官業」癒着によるトヨタ方式は、日本の戦後の高度成長を支えたが、消費者・生活者を犠牲にするものだった。
そのモデルは、あくまで日本でしか通用しない仕組みであって、それをグローバル展開できると勘違いしたところに、今回の問題の本質がある。つまり、今回のリコール事件は「日本の戦後モデル崩壊の象徴」ともいえる。
トヨタは今後数年間、規模を縮小し、まずは国内で品質管理体制を磐石にしてから再挑戦するほかないだろう。まずは足元の国内で、車種別に、どれだけ未改修の欠陥車が市場に出回っているかを情報公開し、注意と改修を呼びかけることに広告宣伝費を使えば、消費者の信用を取り戻せるはずだ。
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トヨタ本執筆者によるトヨタ問題の考察。「国内でもリコール王だったトヨタが、その体質のまま、相似形で世界のリコール王になっただけ」「米国の消費者や政治家を同じようにコントロールできると思ったら大間違い」
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読者コメント
結局アメリカのマスコミ連中が騒いだのに乗っかっただけですか。
ここの皆さんが賞賛するロスアンジェルス・タイムズによる苦情のうちには、
飲酒と麻薬吸引で危険運転致死罪などで告発されている人物のも含まれているんですが。
結局電子制御スロットルと急加速の因果関係が証明されるどころか、
操作ミスやら意図的詐取が目的の申請やらが発覚する始末。
恥を知れと言ったスミス夫人なんかどうするんですかね。
トヨタが全くの無謬とは言いませんが、間違った報道して訂正もしないのはいかがでしょうか。
それとも捏造したABCや意図的に情報を選択したロスアンジェルス・タイムズは
トヨタに捜査されない優秀なメディアとでも言うんでしょうかね。
薄っぺらい知識で得意満面でトヨタ叩きしてた連中こそ恥を知るべきですね。
自分の姿勢に対して。
私は、他のブログにもコメントした。
今回のトヨタ車問題とトップの対応。私のような無能な者にも異常に思えた。
アメリカで大騒ぎになる前に、今日の結果は想像できた。
この騒ぎで、一番に思ったことは、その下請けの(中小)企業へのしわ寄せと他の
自動車・他の輸出産業への影響である。
これは、今後、じわじわ・・・っと出てくるでしょう。
それにしても、トヨタの無神経さはひどかった。
16~17日??だったか、1分近いテレビCM。その中で「謝罪」の言葉はなかった。
せめて「字幕」ででも良いから謙虚な対応が欲しかった。
私が、このこと(トヨタの対応)を他のブログにコメントした翌日(19日?)、テレビでの謝罪・お詫び(CM?)が流れた。また、新聞の一面を使ってのお詫び広告がでた。
しかし、それからが信じられないこと・・・翌、20日にはテレビCMはもとより、
前日、謝罪広告を出した新聞紙面(同じページ)に、もうトヨタ車の大広告を掲載。
私には、その神経が解らない
わたしは、豊田市(私自身は挙母市と呼びたいですが。)に住んでいます。カンバントラックにはいつも、泣かされています。かれらは、公共財産である道路を、倉庫代わりに使い事故を誘発しています。あげく、近隣自治会を黙らせるために、年に二回自治会の役員を豪勢な宴会に招待していますよ。私の父も招かれて行きましたが、意図が見え透いていますから、すぐ帰ってきたそうです。
さらに私の父が農業委員のときは、もっと何か有ったようですが、くわしくは話してくれませんでした。
わたしの家は昔からこの地で農業を営んできました。あの会社が来てからいい事なんてわたしの記憶ではないです。
トヨタが派遣切りを先頭切って行った時この会社の本性が見えた。奥田氏が政治に口出ししている時から、この企業は、堕落したと思っていたが、派遣切りの時につくづく守銭奴企業になったと思った。これは、製造業の最も基本となる、設計、製造の根幹に目が向かず金儲けに目がいき、設計、製造部門のプライドが犠牲になっている。10年以上前にタイミングベルトが走行中に切れて危ない思いをした。その辺りからトヨタ車に疑いを持ちだした。この件もリコールになった。かなり時間かけて根が腐っているので簡単には立ち直れないだろう。三菱自動車の教訓は、他人事でしか無かったのだろう。
コメントが一様な様もどうかと・・・
取材や判断は伝聞に頼るものではないと思います。
マスコミは結局は第三者による伝聞。
其れを確かめるの自分の経験と人との関わり。
最終的に自己判断を下す様にしなければ流れに乗せられるだけ
何事もそうですが最後は経営者に帰結しますね。今回の章男氏の会見はみていて鳩山氏と同じ「弱さ」を感じました。奥田氏あたりからトヨタはおかしくなってきた印象があります。
SONYや日立もぱっとしないし日本の大企業の崩壊は案外早くくるかもしれません。
設計ミスで言わせていただけば、カローラフィルダーのフロントガラスの枠のリム、これ異常に幅が広い。メーカー側は、事故が起きたとき、少しでもボディーが強固であれば、車内に居る人の生存率が高まるとのこと。それは、もっともなことと思う。しかし、もっとしっかり考えなければならないことは、未然に事故を防ぐということではないか。そちらの方を優先するコンセプトで設計していただきたいものである。リームの幅が広すぎて、視界が非常に悪い。特に上り坂を登っていて、三叉路、四叉路の交差点に差し掛かったとき、左右から出てくる車や人などが、幅広のビームのお陰で、視界に入らないことがしばしばである。ほんとうに怖ろしい車である。そのことをメーカーに伝えても、相手にされなかった。昨日の社長の会見とはかなり矛盾した対応と感じてしまった。
トヨタ手抜き80点主義。ホンダやマツダなどは100点以上で車を作っている。
アメリカ(デリカシー足りない)と日本の消費者(貧しいからトヨタ程度で受けていた)、トヨタにとっては馬鹿な消費者だからこそカモドル箱。それが収益大のアメリカ、シェア大の日本という、トヨタという不誠実企業の不味い車を買う馬鹿国民・駄目国民。
カンバン方式という、余裕なき生産方式が、日本を疲弊させた一因。それもアメリカは知らず、日本では意味も教えず、教科書に載せるという愚。
頭が良くないトヨタのせいで非合理が蔓延。
誠実かつインテリジェンスを重視した合理的で当たり前の産業行為により、幸福に貢献するのが企業の役目。
トヨタのような前近代的・非合理的・後進的な企業は、世界からノーと退場を宣告されているのです。
トヨタの闇を読ませていただきました。2007年11月に出た本でやや情報が古くなっているとは言えこの国の動きを理解するのに必須の本だと思いました。またこのエントリーとあわせて読むとよりトヨタの真の闇が見えてきたと感じます。特に愛知県11区の古本氏や経済産業大臣がトヨタ出身というのはなんとも薄ら寒い気持ちになりました。むしろ政治との深い関わりにこそトヨタの真の闇を見たという気持ちにさせてもらいました。思えば社会的に大きな問題となった秋葉原殺傷事件の加藤容疑者も当時ネット上ではトヨタの期間工だっただの話題になりました。しかし自公連立政権から民主党政権になっても肝心のことについては何一つぶれず、どの産業よりもいちはやく景気回復したのが自動車産業であったと思うとやりきれない思いになります。長文失礼しました。
さらにロスアンジェルス・タイムズは、トヨタを監督する立場のNHTSA(道路交通部門の警察)の対応のまずさ、事故のたびにトヨタ車の安全宣言をしながら安全性の検証に必要なテストを実施した形跡が無いこと、さらに踏み込んでNHTSAとトヨタとの不透明な関係にも言及しています。
日本でも、トヨタと国交省、電通、経団連や自民党といった表の関係は、貴著の「トヨタの闇」などの暴露本やネット上で取り沙汰されていますが、トヨタと検察・警察とのただならぬ関係を、アメリカメディアのように事実に基づき正面から掘り下げて伝えたものは目にしたことがありません。これこそ、いわゆる“トヨタの闇”の核心ではないでしょうか。
ネット検索でもわかる歴代検事総長や警察幹部の天下り先(のほんの一部)を一見しただけで、いかにも不自然に思えます。そう言えば2004年に起きたトヨタ車事故に関するリコール隠し疑惑捜査も、熊本県警は書類送検したものの、2007年、熊本地検により不起訴となりました。これだけを見ても、トヨタに関する日本人の知識はすでにアメリカに大きく遅れを取っているように思えます。
(終わり)
しかしロスアンジェルス・タイムズは、万が一アクセルペダルが湿気などで粘着したとしても実験によりペダルの角度はわずかに踏み込まれた状態でしか固定されることがないため、事故の多くの場合、ペダルを完全に踏み切ったフルスロットル状態でエンジンが長時間制御不能となっている点を説明できないこと、そしてこの事実を、なんと当のトヨタ幹部もアメリカ当局のヒアリングでは率直に認めていること、を暴露しています。さらに、トヨタがCTSの部品を採用する以前から、すでに急加速によるトヨタ車事故が多発していた事実を指摘しています。
こういった調子で、まず過去の客観的データを示し、これに基づき論理明快に矛盾を突きつけ事実に主張を語らせていく彼らのやり方は、実に説得力があります。日本の扇情的で幼稚なイメージ報道に比べ、まるで淡々とアメリカ合理主義の真髄を見せつけられるかのようです。
2001年から2002年にかけて、トヨタは多くの車種のエンジン制御系を、従来技術の機械制御系から、マイクロプロセッサに依存した電子制御系にがらりと変更しました(おそらく燃費向上と製造コスト削減のため)。ロスアンジェルス・タイムズによると、この期を境にトヨタ車の急加速に関する苦情件数が一気に7倍以上に急増しています。アメリカ中でとうに知られているのに、日本のマスコミが日本国民にいまだひた隠している重大事実の一つです。
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トヨタは、急加速による事故の言い訳がもはやフロアマットのせいでは済まないと見るや、次にアメリカCTS製のアクセルペダルが踏み込んだまま粘着して元に戻らない可能性をやり玉に挙げました。そして日本のマスコミはこれを根拠に、今回のリコールが米国製トヨタに限定された問題で、トヨタバッシング・ジャパンバッシングを狙ったアメリカの陰謀であるかのように吹聴し始めました。
アメリカも、トヨタ車の問題が表面化するまで10年近くの年月を費やしています。
現実は、多くのアメリカ人の尊い命の犠牲と血のにじむような努力により、ようやく真実に光が当たり始めたわけですが、日本と同様多くのマスコミがもみ消しを図る中、事実解明に多大な貢献をしたのがロスアンジェルス・タイムズです。リコール問題を論じる前に、ぜひ過去の一連の記事の一読をお勧めします。
とくに昨年8月サンディエゴ郊外で起こった非番のカリフォルニア州高速警察隊員と彼の家族の悲惨な死亡事故を扱った記事は、客観的データと詳細な取材にあふれ、アメリカ議会を動かすきっかけにもなった力作です。ちなみに亡くなった警官は周囲から運転のプロ中のプロと認められており、事故当時の様子は同乗していた家族により携帯電話で警察へ中継・録音されていました。
すばらしい。
まさにこれぞジャーナリズム。
権力にひるむことなく、言うべきことは毅然として言う。
このレベルの記事が連発されるなら、また購読しようかな。
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