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「労働市場最適化」で膿を吐き出し、再生せよ

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希望退職者の結果(レナウン)

レナウンの希望退職募集は300人の枠に286人と発表された。特別加算金は約13億円だというから、1人あたりわずか455万円に過ぎない。アパレルは報酬水準の低い業界で、レナウンは平均年収565万円(42歳、2008年2月時点)。対象はおそらく50歳前後が中心だから、まあ基本給40万円ほどとして、12~15ヶ月分くらいが割増ということになる。これは、全く少ないほうだ。

レナウンの希望退職

株主・経営側からすると、単体の従業員891人なのに、286人も削減できるというのはすばらしい。その他に嘱託93人もばっさり斬るという。来月末には皆さん、退職だそうだ。

驚くべきは、社員約900人の会社で400人もいきなりいなくなっても業務が回ってしまうということだ。いかに不要な人材が社内にウヨウヨしていたか、膿が溜まっていたかを物語る。

業績が少し良かった頃は、どんなに余剰人員がいることが分かっていても日本の判例法理では削減できないから、2008年2月期に80億円の純損失になって、これでリストラができる環境が整ったということだろう。ここ数ヶ月は、あらゆる海外通貨に対する急激な円高で、基本的に輸入モノが多いアパレル業界などはボロ儲けのはずなのだが、貴重なリストラのチャンスを逃すわけにはいかない、ということか。

日本企業は、大企業ほど、膿がたまっている。この不況は、まさに膿を吐き出し、再生につなげるチャンスだ。なのに、リストラに名乗りを上げるのは、日本IBMやソニーといった、既に過去のリストラで膿が少なくなっている会社ばかり。膿まみれ、メタボ体質のトヨタやホンダなどは、まだ我慢している。これは企業の健康によろしくない。


最近、ファイザーのリストラについて書いたが、入社2年目から60歳まで応募可能で、最大72ヶ月という手厚い割増金がつくものだった。受付の電話はパンクし、15分で〆切ったという。

ファイザーのリストラ

ファイザーの場合、全世界で1割削減の方針から降りてきたものだが、外資の日本法人は、日本の実情など何も知らない海外の本社から、トップダウンで「ヘッドカウントを減らせ」という命令を受けるのが普通だ。なぜか頭数を減らすことが至上命題なので、サンのように、新卒社員に年収2年分を与えて辞めさせるという、訳の分からないことも平気でやってしまう。

サンマイクロシステムズのリストラ

日本では若手の正社員は人材価値が高い(安い給与で給与以上に働く、非正規はスキルアップしていないから採用対象にならない)のだが、海外の本社はそんなことは何も知らない。そして、日本の雇われ社長は、所詮は子会社のトップなので、素直にやらないと自分がリストラされてしまう境遇にある。

ファイザーの割増退職金は、最大60ヶ月の割増金を出したソニーや、それと同等と言われる松下と同じクラスで、「人に優しい」会社といえる。もはや国内系か外資かは関係がなくなった。


リストラについていえば、資本の内容よりも、むしろ、企業カルチャーやその時々の財務内容が影響すると見てよいだろう。

たとえば日本IBMは、かつて(90年代)、ガースナーが世界的に4割の社員を減らした際に、日本で行われた最初のリストラは、非常に条件が良かった。私が営業マンから聞いた話では、30歳でも1千万円ほどを貰い、喜んで転職していった人が続出したという。より年齢が高ければ、さらに良い条件だったはずだ。

だが、リストラを繰り返すうちに、もはやその体力はなくなり、10年で渋~い会社になった。「1000人リストラ」が進行中の現在、割増退職金はせいぜい14ヶ月などで、50歳でも1千万円前後にしかならない(ファイザーは35歳でも1500万ほどになる)。これは企業カルチャーの変節と財務内容の悪化という、双方が影響している。

企業カルチャーが正体を現したのが、三洋電機と富士通だ。両社は、割増退職金を払いたくないことが見え見えの、嫌がらせで依願退職に追い込むひどいリストラを断行した。

→タコ部屋方式の富士通

→ヤクザ研修方式の三洋電機

リストラのやり方を見ると、会社の体質が良く分かるので絶好のチャンスである。


連合は「雇用維持」をバカの1つ覚えのように言った上に春闘で賃上げ要求(ベア)を求めるというKYぶりで「80年代かよ」とツッコミたくなる利権体質だ。

雇用を守ることが優しい会社であるかのようなマスコミ報道も目立つ。不況で仕事が減っているのに、デキない中高年に無理やり仕事を作ってあげて雇用を維持することが「本当の優しさ」である訳がないだろう。

そんなことをしたら、社内の空気は淀み、若手はポストにありつけずにキャリアアップのチャンスを失い、会社全体のモチベーションが下がり、業績は高コスト体質のまま悪化、会社ごと沈没して全員解雇だ。「会社の泥舟化」である。

実際、2000年初頭に日本で初めてワークシェアリングを導入しようとした三洋電機は、結局、本格的に実施することもなく、さらに成果主義による抜擢制度も大失敗に終わり、京セラや松下に分割、売却された。悪平等主義が社員のモチベーションを下げていたことは否めない。

→幹部候補生制度が破たん

つまり、日本には「同一賃金同一労働」の法体系がないため、1社だけがワークシェアをやっても、正社員全員の1人あたり取り分(給与)が下がるだけなので、モチベーションが下がり、有能な人材が国内の他社に流出する。

非正規雇用者も含めた、「企業内同一賃金同一労働」を国全体で法制化し(重い罰則付き)、正社員全体の報酬水準を下げ、かつ、同時に解雇規制と給与カット規制を緩和するしかないのだ。それが労働市場の最適化であり、労働生産性の維持向上につながる。

その場合、現在、普通以上に成果をあげている正社員の給与が下がることはない。現在の非正規の人に回る原資となる資金は、貰いすぎの中高年から捻出されるためである。したがって企業の生産性や国際競争力が落ちることはなく、国全体が「泥舟化」することもない。

現在の連合や社民が言っていること(=非正規を正社員にしろ、正社員の雇用は守り賃金も上げろ…)を実行してしまうと、国ごと「泥舟化」してしまうのだが、あの人たちは、それが全く分かっていないのがイタい。経営と労働、双方の現場が見えていない。

私は産業記者、経営コンサル、企業ミシュランの取材で、両方の現場を見てきたが、あの不毛な論議はそろそろやめて、国の競争力とフェアな労働市場を両立させる道を考えたらどうか。

しばらくの間、厳しい経済環境のなかで少々の膿は出されていくだろう。だが残念ながら、2009年も、延々とこのままの膠着状態が続きそうである。

→参考:→雇用が安定している会社、えげつないリストラを平気でやる会社

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fubar_foo2011/07/11 17:00

...うーん

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