高裁は逆転勝訴だってさ…「東進いいがかり訴訟」判決の意味
東進ハイスクール運営のナガセが言い掛かりとしか思えない名誉棄損訴訟を仕掛けてきて(2016年1月)、さらに2016年11月の地裁判決ではそれを容認するトンデモ判決(見出しを削除し、40万払え)が出て呆れていたのだが、2017年6月8日の高裁判決ですべて取り消されて逆転勝訴し、ナガセの要求は全面的に棄却された。(高裁判決の報告記事)
正直、裁判は時間の無駄で興味がない。これまで大渕愛子事件をはじめ4件やってきたが、裁判官に、知識が不足し過ぎていたり、常識がなさすぎる人物が多すぎるのに、無能な裁判官が淘汰される仕組みが機能していないため、まともに相手にするのもバカバカしい。
今回は、たまたまこの分野で常識を持ち合わせた裁判官(村田渉裁判長)が高裁で裁判長の椅子に座っていたというだけで、別の人物だったら、地裁判決を踏襲していたかもしれない。当たる確率が高いロシアンルーレットみたいなものである。
ジャーナリズムは権力を監視するのが第一の使命であり、裁判所は権力そのもの。だから、裁判所の判断は、ジャーナリズムと一致している必要は全くない。参考程度に冷めた目で流しておけばよい。したがって高裁判決もどちらでもよかったのだが、まあ国家権力の間違った判断で40万円とられなくてよかった、くらいのものだ。
フランチャイズ本部の影響力が争点
経緯を簡単にいうと、本裁判の対象となったのはこの記事で、事実関係の争いはなく、見出しが東進全体について言っていることに読めるから名誉棄損だ、賠償金3千万払え、というのがナガセの主張で、こちらからしたら、どうみても言い掛かりだった。
しかし、フランチャイズビジネスにおける本部の支配力について全く無知だった地裁の裁判長が、トンデモ判決を出した。地裁の原克也裁判長は、基本的な経済や経営の知識がなかった。それでも裁判官は終身雇用なのだから、ずいぶん気楽な仕事だ。このレベルのミスをやらかしてもクビにならないのなら、緊張感を持って真面目に働くわけがない。
高裁では特に新しい論点や証拠がでたわけでもなく、証人調べや陳述書すらもなく、たった一回で結審だったので、高裁としては判決に迷う箇所など何もなかったのだろう。
仮に、もし地裁判決が踏襲され、最高裁で確定してしまったら、今後、報道各社には、とんでもない制約が課されることになっていた。なにしろ、たとえばセブンイレブンの店舗で労務問題が発生したときに、いちいち見出しに「FC運営会社が」などと入れなければならないことになる。セブンはほとんどがFC企業による運営だからだ。
左記朝日記事の例でいうと、見出しは「セブンイレブン、病欠のバイトに「罰」不当に減給」となっているが、これは無能な東京地裁の原克也裁判長によれば、名誉棄損になってしまうから見出しを削除して多額の賠償金を払わねばならないのだという。
なぜなら、労務管理はFC企業の責任なのに、これではまるでセブンイレブン本部を含む全国のセブンイレブンが不当なことをしているかのように誤読させ、セブン本体の名誉を毀損するからだ、という。もう何を言ってるのかわからない。バカすぎて話にならないだろう。フランチャイズシステムの意味を何も理解していないのだ。それを本気で、判決として、東京地裁で出しているのである。普通の会社ならこんな奴はクビだ。
地裁の裁判官があまりにも無知だったので、高裁には、やむをえず、たくさんの事例を追加で提出した(下記補充書)。これらは、証拠でもなんでもない、普通のマスコミ報道記事だ。こんなことまでしてあげないと分からないくらい、裁判長というのはレベルが低いのである。
■控訴理由補充書
本部の社会的責任に言及
高裁では、裁判長がフランチャイズビジネスにおけるフランチャイザーの権限や責任について理解し、そのうえで、本部の社会的責任を優先という、ごく常識的な見解を示した。
■高裁判決
言い掛かり訴訟を仕掛けて墓穴を掘っている永瀬昭幸社長 |
10倍返し報道が絶対的に必要
この判決について、SLAPP被害経験が豊富な黒藪さんが「報道で反撃したのが、すべての勝因でしょう」と分析してくれたが、全くその通りだ。
報道を続けたから、どんどん情報が集まった。善意ある内部告発者が協力してくれた。その結果、地裁に証拠として出した、「363時間分の仕事を260時間の人員でやれ」といった本部による研修文書も入手できた。高裁判決では、その内容を、わざわざ引用して事実認定している(判決文参照)。高裁の裁判長がフランチャイズビジネスにおけるフランチャイザーの責任について理解する助けになっただろう。
(※法曹家は経営について驚くほど無知であり、一切、学ぶ機会がないキャリアパスとなっているので、高校生に教えるつもりで材料を集め、手取り足取り教えてあげる必要がある、というのが今回の教訓だ)
裁判中だから記事掲載を控えるというのは、絶対にやってはならないことがわかるだろう。これは、証拠を集めるという理由だけでなく、裁判を起こせば報道を止められると誤解させて次のSLAPPを誘発させるという、二重の理由からダメなのだ。文春が、おそらくは〝弁護士ブロック〟によって、裁判中はユニクロ記事をストップしていたが、あれは絶対にいけない。悪しき前例を作ってしまう。むしろ逆に、集中砲火的な報道が必要なのである。
今回、弊社側についてもらった小園恵介弁護士(瑞慶山総合法律事務所)には、当初よりその方針で合意のうえ、進めてもらった。
実際、今回のような言い掛かりとしか思えない理由で、記事削除と3千万円の賠償金を請求してくるブラック企業・ナガセ(永瀬昭幸社長)と、その顧問であるブラック弁護士・小原健氏については、かなりの暗部を抱えていることが容易に想像できたため、記者の皆さんと東進内部在籍者の皆さんの協力を得て調査報道を連発し、10倍返し、20倍返しをしていった。
■東進ナガセ関連記事
主なものは、以下の通りだ。
・「東進ビジネススクール」が二重価格表示
・東進ハイスクールが組織ぐるみで著作権侵害
・「東進」ナガセが組織的な労基法違反で学生バイト搾取
・ナガセ元社員が、毎週強制サービス出勤のブラック企業ぶりを証言
・東進「東大現役合格実績」はやっぱりインチキだった
なぜこんな違法行為で成り立っているような会社が上場を維持しているのか、不思議なくらいである。
今回の判決を、東進内部の情報提供者(現場社員)に報告したところ、総じて、以下のようなコメントが多かった。代表的なものを掲載する。
弊社は弁護士費用や機会費用をはじめ、ナガセのSLAPPによって、莫大な損失を強いられた。反訴で損害賠償を請求してはいるが、ナガセは高裁に断罪されてもなお謝罪する気配すらなく、最高裁に上告して争うのだという。
永瀬昭幸というどうしようもない男の化けの皮を剥がして社会にさらすためにも、徹底的に報道を続けなければならない。うちとしては完全に赤字だが、これはジャーナリズムの使命として完遂する義務がある。
東進グループによる被害者を減らすためにも、ナガセに反省させるためにも、二度とこのような言い掛かり訴訟ができないよう、この会社には、すべての膿を吐き出させる必要がある。FC企業「モアアンドモア」社の倒産とナガセによる支援に関しては、特に深い闇を抱えていることがわかってきている。
善意ある方々からの、さらなる情報提供をお願いしたい。
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