電子版「いい会社はどこにある?」完成(1025ページ)
ダイヤモンド社公式:電子書籍限定オールカラー【コンプリート版】定価:3520円(本体3200円+税10%) |
先月(5月半ば)、やっと電子版が完成したのでお知らせしたい。リリース自体は昨年8月なのだが、画像サイズが小さいまま拡大できなかったり、文字が歪んでいたり、画像内の矢印がズレていたり、いろいろ細かいところが直らないまま、完了までに9か月も過ぎてしまった。分厚い辞典的な本だと、そもそも重くて持ち運び不便で場所をとるし、特に、検索機能がなければ利便性が悪い。850ページもあると、書いた自分でさえ、どこの章だったかな?とピンポイントで思い出せないことがある。だから電子版は早期に出したかった。
■「いい会社」はどこにある?【コンプリート版】――電子書籍限定オールカラー&完全検索対応版
この本の反響としては、
学生のキャリア教育関係者/就職活動・転職活動当時者/その上司や親/企業の人事部社員/採用エージェント(人材紹介会社、ヘッドハンター)/コンサル会社、研究者/ファンドマネージャ
と幅広いものとなった。特に、人事部員とエージェントで本書を手に取っていない人はさすがにマズいと思う。他では入手できない情報ばかりであり、類書が皆無だからだ。
なお、以下リストに、一部内容について語った動画版がある。→PIVOT『いい会社』再生リスト
なぜ紙版が税込み1980円というボランティア価格なのかという質問はよく受けたが、ダイヤモンド社の提案を受け、私もそれでいいと思った。10代20代の人たちに、より手軽に手に取ってもらい、読んでほしかったからだ。私はもともと政治家志向であり、本書のなかでは、現状の事実を伝えるだけでなく「なぜそうなってしまっているのか?」という背景説明をたくさんしている。そこから理解してもらいたい。
電子版でできること
電子版が紙と違うのは、以下修正でプロ仕様となっていることである。
①図表の画像内も含め、完全キーワード検索対応にした
②図表をオールカラー化し、視覚的に見やすくした
③図表をPCモニターに最適化して拡大表示できるようにした(横長4:3)
元図は横長サイズのパワポで作っているので、それを紙版に収めようとすると、見開きになってしまって見ずらかったり、1頁に収めようとすると縦長になって元図と見やすさが変わってしまったり、紙版の限界があって悩ましかった(内容自体は同じ)。だから、紙版で縦長の画像も、電子版では横長に戻している(下記)。
さらに、電子版の特徴として、分冊版を出している。仕事編、生活編、対価編の3つである。もともと3~4冊分の情報量なので、入り口として、まずは気になるところだけ読んで貰えるようにしている。
検索用キーワードの埋め込み
そもそも私自身が、自分で電子版と紙版の両方を使い分けている。つまり、良いと思った本は両方買って繰り返し読み直す。紙本は、余白にコメントや図表を書きながら著者と議論しながら読み、自分が書き込んだページだけスマホで撮影してデジタル保存する。
紙本は引っ越しなどで処分するか、契約しているトランクルーム行きになるから、やはり電子本がないと困る。「あのへんに書いてあったな」という記憶からキーワード検索ができないと困る。だから、画像内のキーワード検索もできるよう、【図表検索用】のキーワードコーナーを追加した。電子書籍の仕様として、こうしないと図表内のキーワードがヒットしないのだから仕方がない。(PDFではできるのに…)
紙より安売りすると書店が潰れる問題を解消
紙よりも電子版の価格を安く設定してキンドル版を買うよう誘導するアマゾンの戦略に乗ったら、消費者は同じ内容なら安い方を買う人が多いのだから、紙本は売れなくなり、書店を潰すことに自分が加担してしまう。それは著者として絶対にやらない、と決めている。本来、国会議員が仕事をすべき問題だが、何も有効な手を打てていない。
そこで電子版は、デジタルの強みを活かして検索やカラー化(コストは白黒と変わらない)、拡大縮小自由など、電子版ならではの付加価値を加えることによって価格を紙よりも引き上げ、電子本スタンドへの卸値には下限を設ける条文を入れ(キンドルに赤字で売られたらどうしようもないが普通はやらない)、紙よりも安く売られないような契約を結んでいる。とはいえ、「初回70%オフ」などの独自キャンペーンは各電子本スタンドの自由だから仕方ない。
さて、今回、はじめて電子版を作ってみて、なんだこりゃ?と思った点を書き留めておきたい。
電子版の問題①:ゲラチェックができない
今回、はじめて電子版を出したわけだが、驚いたのは、紙の本では当然のようにできる「ゲラチェック」の機能が、電子版にはないということだった。電子版が、どのようにPCで表示されるのか、リリース前にプレビュー画面で確認することができないのだ。つまり、ぶっつけ本番リリースで、後から改善&修正していきます、というβ版方式である。
そういう仕組みなら仕方がない、ということで、昨年8月にまずリリースした。だが、画像を大幅に直した結果、画像サイズが小さすぎてPCモニター画面全体に拡大できなかったり、画像サイズが横長に作り直せていなかったり、画像のなかのフォントが横長に潰されていたり、電子版だけ画像内の誤植が発生したりと、本来、ゲラチェックの段階で修正すべき作業を、本番リリースされた後にやらなければならなかった。
しかも、1回修正するのに、なぜか何週間もかかるのだ。紙版のゲラチェックは2~3日で終わるのに、電子版になると2~3週間。しかも、後述のように、キンドルで「同期」ボタンを押しても更新されないという決定的な欠陥があり、ちゃんと修正できたのか、確認ができない。なぜ同期されないのかも不明だから、ぜんぜん修正作業が進まない。
これは、出版社とグラフィック子会社や請け負い先の業者サイドの問題なのか、アマゾンキンドル部門ほか電子スタンド側の問題なのか、よくわからないが、とにかく進行がノロい。理由もわからない。このあたり、出版社は、やはり紙のプロなのであって電子版のノウハウ蓄積がないのだな、と実感した。スピード感がない。
電子版奥付 |
電子版の問題②:購入者に更新通知なし
ゲラチェックを本番環境で行う以上、更新が5回10回と頻繁にならざるを得ないので、既に購入済みのユーザーには、更新アリの通知と、過去の更新履歴の表示が必須であるはずだが、キンドルに聞いたところ、更新履歴も最終更新日も、一切、確認できないという。紙版であれば、初刷〇月〇日発行、第2刷〇月〇日発行…と奥付に記載され、自分が今みているバージョンが第〇刷だ、ということが分かる(現在は、第7刷である)。
紙で850ページもあると(電子では1025ページ)、誤字脱字の修正や画像のミスは避けられず、発見次第、修正していくわけである(→更新履歴)。だから、自分が持っている本がいつの段階のものかは、知る必要がある。
ところが、電子版は「初版の発行日」しか記録されない(右上画像のとおり)。実際には、そのあと5回10回と更新され、画像なんか、大きさからフォントから全く変わっているのに、購入済みユーザーは、更新されたことに気づけない仕組みになっており、「同期」ボタンを押しても最新版に更新されないのだ。これは自分で何度も確認したが、自動更新もしないし、同期しても更新されないから、いつまでも古いバージョンで、見ずらい、ダメ画像のままだった。
1回だけ「更新アリ」という表示が出て、更新を促され、更新できたことがあるが、9割がたはない。その場合、いったん端末から削除したうえで再ダウンロードする、というアクションが必要になる。でも、そもそも更新版が出ていることに気づく仕組みがないから、いつまでも間違った情報を見ることになり、消費者に不利益を与え続けてしまう。キンドルのプラットフォームは完全な欠陥品だ、と言い切ることができる。
いったいこれはどういう基準で運用されているのか。アマゾンのキンドル担当者に聞くと、「1月10日に最終更新されています」ということだけは、時間がかかった末に分かった。だが、「それは購入済みである私は、どこから確認できますか?」と聞いても、なんと「確認する手段はありません」(!?)というのだ。
購入履歴の「デジタルコンテンツ」コーナーから購入日だけは確認できるが、新しいバージョンが出た場合に最終更新日を確認する機能はない、という。どうせ海外でぜんぶ運用しているから、日本では何もできないし、仕組みもよく分かっていないのだろう。「グローバル大企業病」である。
あとは、「そういう仕様になっていて改善の予定もないです、更新を通知する基準も公開していません、それがアマゾンのポリシーです」という無責任なお役所答弁の一点張りで、実にずさんな顧客対応だった。なにがカスタマーオブセッションだ?(→AWSカスタマーオブセッションの嘘)という、体験的実例である。なんと、現在の仕様では、いったん削除して再ダウンロードしないと最新版にならない。毎回、電子本を読むたびにいったん削除する人はいない。そもそも最新版が出ていることに気づく仕組みがない。欠陥が放置されている。
「更新アリ」を必須で表示して更新するかどうか判断させるか、または「同期」ボタンを押したら自動的に更新がかかるか、どちらかにしたうえで、どこかの画面で更新履歴の日付を確認できるようにする——というのが電子版の正しい改善である。紙でやっていることを電子版でやらないとは、「間違いが発見されたらすぐ修正できる」という電子版の強みを打ち消しており、愚かとしか言いようがない。キンドルは市場独占支配力を持ってしまったために独占の弊害で改善に投資しなくなった。
以下は社会的損失なので早期に改善が必要である。
・電子版で更新の有無すらわからないと、誤字脱字や事実関係の間違いに読者が気づくことができず、虚偽の事実が訂正されないことから、読者の利益を損なうこと
・更新の有無が表示されないことで、修正されるべき表現や図表が修正されず、深刻な事実関係の間違いがある場合は、名誉棄損訴訟で負けて莫大な損害賠償金をとられるリスクがあり、アマゾンに責任が生じるだけでなく、著者のブランドも毀損すること
電子版製作を請け負ってくれる人募集
いずれにせよ、電子版と紙版はそれぞれに良い点・悪い点があるので、補完し合う関係にあり、両方とも必要だ。よって、過去に紙版しか出していないまま絶版になっている本は、電子版に移植して買えるようにしたいと思っている。紙で10万部刷った「10年後に食える仕事食えない仕事」、文庫版含め累計5万部の「トヨタの闇」、「35歳までに読むキャリアの教科書」などだ。
どなたか、キンドル版はじめ電子化の作業を請け負っていただける会社(または個人事業主、副業としてでもOK)にお願いしたいので、ご連絡をお待ちしている。→連絡フォーム
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