アサヒビール 居心地よい“スーパードライ教”信者たち
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![]() 【対価偏重型】 (仕事3.0、生活3.3、対価4.0) |
- Digest
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- 賃上げを「検討」する基準作り
- 3点セット
- 「会社を好きなのが当たり前」
- 72%が『スーパードライ』
- 年4ヶ月分が生活給で固定のボーナス
- 首都圏で11万円超の家賃補助
- 歪んだ人口ピラミッドの影響
- 業務用担当営業マン、「毎日飲むのが当り前」の1日
- 打たれ強い人が向いている
- 女性の配属は配慮される
賃上げを「検討」する基準作り
つまり、賃上げ要求の額ではなく、賃上げを「検討」し始める段階に進む条件を議論しているのである。ようは、既に賃金は十分に高いとの認識が労働組合側にあり、現状維持で十分にハッピー、賃上げを検討しないのが前提だが、もしも物価が上がったりしたら、賃上げも検討してもらえればなお嬉しい――という超安定志向の労使協調路線。経営者が労働者から内部昇格する日本企業らしさがにじみ出ている。
同じ労使協調型のメーカーでも、グローバル競争が激しい自動車業界では、トヨタが初の営業赤字転落のなかで、労組が果敢にベア4千円を要求するなど、少なくとも表向きはシビアに戦う姿勢を見せている。いまだ、要求する前段階の基準作りをしているのんきなビール業界は、牧歌的である。
3点セット
ビール業界は、国内主要4社でシェアを分け合う。酒税が価格の4割超を占め、卸値の価格競争もほとんどない。取引先が大手なのか中小なのかによって卸値に差をつけると、「差別対価」だとして問題となる。「これを破ると国からの免許剥奪となりかねないので、社内では徹底しています」(社員)
となると、製品そのものではなく、周辺のサービス合戦になりがちだ。飲食店がどのメーカーのビールを採用するかは、サービス次第となる。「かつては3点セットと言われていました」(社員)。①生ビールのサーバーとグラス類、②10万円も当たり前の業務用冷蔵庫、③お店の看板、の無償提供である。
これは新聞購読契約の高額景品付きセールスと同様、公正な競争に反するということで、昨今は、ビール業界内で話し合い、自主規制するようになった。
そんなとき、先導役となるのがキリンビールである。かつてのトップ企業としての矜持か、今でもまとめ役となる。また、社内ルールも徹底しており、グレーゾーンを攻めず、スマートに戦うという。
逆に、社風として現場の自由がきくのがサントリーで、冷蔵庫提供について業界で自主ルールを決めても、裏でこっそり冷蔵庫を提供してしまうようなカルチャーがある。アサヒはキリンと同様、コンプライアンスについては徹底している社風だ。
「会社を好きなのが当たり前」
規制業種全般にいえることだが、ビール業界も戦後日本企業型の年功序列・終身雇用を守っており、離職率は低い。5年で1割程度しか辞めない。社員によれば、原因は大きく2つ。
1つは、会社が好きな人が多いこと。全従業員を対象にした外部調査会社による「企業風土診断アンケート」によると、「会社の好き度合い」が、異常に高い結果が出たという。「スーパードライ教の信者ではないですが、みんな会社を好きなのが当たり前、みたいになっている」(社員)。
もう1つは、つぶしがきかないこと。他の業界が欲しがるような市場性の高いスキルが身につきにくいのである。「酒のことだけ知っていれば仕事ができてしまうため、“業界バカ”になりがち。スキルを身につけて独立、といった独立志向を持っている人は、ほとんどいません。私の周りで言えば、独立志向を持ったデキる人がいましたが、入社後の早い段階でコンサル会社などに転職して行った人がいました」(社員)。つまり、安定志向のサラリーマンにとっては、なかなか居心地がよい会社なのだ。
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アサヒビールの現場組織
アサヒビールのキャリアパスと報酬
「新卒一括採用・終身雇用」主義のため、アサヒビールの人口ピラミッドは業績の影響をモロに受け、歪んだまま修正がきかない
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読者コメント
(追加)、いつまでも酒税逃れのまがい物、発泡酒や第3ビールを作っているなら メーカーの意識の低さや それで満足顔の日本人の味覚音痴は 世界中から とうに笑いものになっているほどです
(追加)、いつまでも酒税逃れのまがい物、発泡酒や第3ビールを作っているなら メーカーの意識の低さや それで満足顔の日本人の味覚音痴は 世界中から とうに笑いものになっているほどです
今のところアサヒは安泰気分でしょうが サッポロとともに ポストスーパードライ、エビスで悩んでいるのが実情です。次の一手が未だにありません。
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