新銀行東京SLAPP 「法の抜け穴」解説&新銀行東京の言い分
![]() |
09年3月6日に東京・東銀座で開かれた「横山さんのお話を聞く会」。横山剛さんの話し方は金融マンらしく理性的だった。事実と感想を厳密に分けて話し、取材者として聞いていて信頼性を感じる。 |
- Digest
-
- 新銀行東京裁判の解説
- 「不法行為の共同行為者」を訴えない矛盾
- SLAPPに利用されやすい「法の抜け穴」
- 総合企画部マネージャーインタビュー「恫喝目的ない」
- インタビュー2回目「論点は守秘義務契約だ」
|
新銀行東京裁判の解説
まず「新銀行東京裁判」とはどんな訴訟なのか、中身を解説しておこう。
新銀行東京は、資本金・資本準備金1187億円のうち1000億円を東京都が出資しているほか、株式の約84%を東京都が保有する事実上の「都営銀行」だ。元々は、03年の東京都知事選挙での石原知事の選挙公約である「資金調達に悩む中小企業を救済する」ことを目的に、05年4月に設置された。ところが、07年12月末で5635社=融資先の43%が赤字や債務超過状態にあることがわかっている(同年3月11日付MSN産経新聞)。
提訴の要求や原因など、新銀行東京側の言い分を記した「訴状」を見ると、同行が横山さんを訴えた原因(訴因)に挙げ「証拠」として法廷に提出ている記事は四つある。
(2)08年6月28日付「週刊現代」(講談社)
(3)08年7月12日付「週刊現代」(同)
(4)08年7月18日付「週刊朝日」(朝日新聞出版社)
![]() |
「横山さんのお話を聞く会」はごく内輪の懇談会の予定だったが、蓋を開けて見ると40人以上の記者が集まり、民放テレビがカメラを回した。![]() |
このうち横山さんがマスメディアに実名で証言したのは(1)(2)(3)である。これらの報道によって「(新銀行東京の)社会的評価及び信用は著しく低下しており、その損害額は金1000万円を下らない」と訴状で新銀行東京は主張する(4の記事について横山さんは『取材を受けていない。ニュースソースではない』と関係を否定している)。
(1)(2)(3)の報道内容について概略をまとめると、こういうことだ。報道当時、新銀行東京の累積赤字は1016億円という膨大な額に膨らんでいた(08年3月末当時の見通し。前掲MSN産経新聞)。これは後述する同行の資本金とほぼ同額であり、金融機関としては「危険水域」の状態だ。
この経営状態で同行に出資する企業はなく、同行の自己資本比率を国内規準である4%を割り込ませないために、400億円の追加出資(=つまり都民の税金)を投入することが必要、と東京都は主張。都議会やマスコミでの議論が沸騰する中、08年3月都議会で400億円の追加出資が可決された。
その直後、というタイミングで「横山証言」はマスメディアに出てきた(なお3で横山さんは、金融庁の検査の前に新銀行東京から出たシュレッダーのゴミが通常より増えたことを証言している。筆者のジャーナリスト青木理氏は、その証言をもとに、内部資料の破棄ではないのかという疑いを記事全体で提示した)。
この「横山証言」は、東京都や新銀行東京・現経営陣にとって不利な内容を多分に含んでいた。この累積赤字を生んだ原因は「先代の経営陣の責任」というのが東京都と新銀行東京・現経営陣の主張だ(旧経営陣に対する民事訴訟提訴の意思があることを同行は表明している)。つまり「同行の経営悪化は東京都や現経営陣のせいではない」という立場を取っている。ところが、横山さんの証言はそれを全否定していた
この先は会員限定です。
会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。
- ・本文文字数:残り12,398字/全文13,970字
新銀行東京が横山氏による守秘義務違反の証拠として法廷に提出した「週刊朝日」2008年7月18日号。都会議員による融資の口利きを報じている。横山さんの名前はどこにも出てこない。横山さんも「取材を受けていない」と関係を否定している。週刊朝日も横山さんがニュースソースであることを否定している。
新銀行東京が証拠として法廷に提出したテレビ朝日「サンデープロジェクト」の画面写真。横山さんは「証言内容の信憑性を高めるために実名で証言した」と話している。いわば善意の内部告発者である。
Twitterコメント
はてなブックマークコメント
facebookコメント
読者コメント
※. コメントは会員ユーザのみ受け付けております。記者からの追加情報
会員登録をご希望の方は ここでご登録下さい
新着のお知らせをメールで受けたい方は ここでご登録下さい (無料)
企画「納税者の眼」トップページへ