口封じのための念書。「私、北川朋広の進退につきましては、一切お任せいたします。又、黒薮との関係は一切絶ちます。5月1日に黒薮に連絡いたします」と書いてある。
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朝日の販売店「ASA宮崎大塚」元店主が、現役だった去年4月、ある念書を書かされていた。それは「黒薮との関係は一切断ちます」というものだった。言論機関による口封じとしてはオリコンや読売新聞社によるSLAPPが有名だが、朝日新聞社も念書というかたちで、記者の情報源に対して口封じを行っていたのだ。情報源を遮断し、新聞の偽装部数問題が公になる事態を防ごうという意図に違いなかった。
【Digest】
◇悪質な口封じ
◇紙面では内部告発を奨励
◇ジャーナリズムの臭いがしない
◇朝日人にとっての言論の自由
◇広報室は本当に必要なのか?
わたしの手元に新聞社の体質を象徴する一通の念書がある。これは内部告発の口封じ、あるいは言論弾圧の証拠でもある。
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私 北川朋広の進退につきましては、一切、お任せいたします。
又、黒薮との関係は一切絶ちます。五月一日に黒薮に連絡します。
朝日新聞西部本社
成富販売局長様
上原販売一部長様
平成二十年四月三十日 北川朋広
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念書を作成したのは、当時、「ASA宮崎大塚」(宮崎市)の店主で、経営に行き詰まっていた北川朋広さんである。この念書と並行して、北川さんはもう一通の念書を作成している。それは未納になっている新聞代金の支払いを履行することを誓った上で、朝日新聞社に対して、「約束を履行できない場合は、廃業することを誓います」と述べたものだ。
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朝日新聞の「押し紙」。朝日新聞の販売会社の店舗で撮影。自社の販売会社の「押し紙」であるから、「知らなかった」とは言えないはず。
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もちろんこれら2通の念書は、朝日の販売局員の指示に従って作成された可能性が高い。みずからを不利な状況に追い込む内容の念書を、販売店主がみずから作成するはずがないからだ。事実、北川さんは、念書を書かざるを得ない状況に追い込まれたと話している。
新聞社は公正や社会正義を基調としたジャーナリズムの上に成り立っている。実際、記者の中には少数ではあるが、真っ当な報道活動を展開している人もいる。
その一方で、新聞社は金銭欲を剥き出しにして利益を追求する企業としての側面も備えている。北川さんが作成を強いられた念書は、その一面を反映する典型例にほかならない。
◇悪質な口封じ
初めて北川さんがわたしにコンタクトを取ってきたのは、2007年の暮れだった。自店の経営が悪化して、誰に相談すべきか悩んだ末に、ウエブサイト・新聞販売黒書で公開しているわたしの電話にアクセスしたのである。
販売店主は法的には経営者なので、労働相談の窓口を見つけるのはなかなか難しい。弁護士に相談するにしても、複雑な新聞の商取引を理解できる弁護士は限られている。そこで相談先として、新聞販売黒書の主催者であるわたしを選んだのだ。
北川さんと朝日の関係を過去にさかのぼると、新聞社の「2つの顔」が浮かびあがってくる。表向きはジャーナリズムの看板を掲げているが、中身は利己主義を剥き出して利潤を追求する企業である.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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ASA宮崎大塚の部数内訳。「発証部数」は、読者に発行した領収証数。「S部数」はサービス紙。 |
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朝日新聞社に対する筆者の質問状(上)と、朝日新聞社からの回答書(下)。 |
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