Baa優良企業予備軍 【生活犠牲型】
(仕事4.5、生活2.0、対価4.8)
|
百貨店や新聞と同様、構造的に長期衰退プロセスに突入したテレビ業界。「やりがいがない」「社内に元気がない」といった声が多いなか、数字で明確に出てきたのが6月下旬に発表された日テレの有価証券報告書だ。社員の平均年収が1年で83万円も下がり、今期はさらに加速度的に下がる見通し。複数の社員によると、社内では番組制作費や人件費の急激なコストカットでモチベーションが急降下している。「未来のビジョンを示すことなく、いきなり内定者の給与を騙し討ちで下げるなど、えげつないやり方をする経営に対して不信感が高まっています」(社員)
【Digest】
◇2008年入社から給与を突然2~3割カット
◇「賃金面で破たんします」
◇既存社員の待遇も、業績連動で急降下
◇仕事はハケンにやらせて年収2千万の異常世界
◇2008年入社から給与を突然2~3割カット
この内定者のだまし討ち給与カットとは、2008年入社の新入社員から給与制度をガラリと変え、突然2~3割の年収がカットされたことを示す。各種手当も軒並みカットされ、アナウンサー手当や宿直手当なども全廃された。たとえば2007年入社の夏目三久と2008年入社の小熊美香では全く同じ仕事をして3割も報酬が違うということだ。
|
「日本テレビの人事労務制度変更の重大な不利益変更について」
|
|
民放労組の上部団体にあたる民放労連は「明日は我が身」と危機感を持ったようで、2008年3月16日付の「日本テレビの人事労務制度変更の重大な不利益変更について」と題する抗議声明を出した(右記)。
この声明によると、年俸制の導入と所定労働時間の延長を組み込んだ「新総合職」制度の導入によって、「08年度入社の新入社員に適用される賃金・労働条件は所定就業時間が1時間単純に延長されるだけでなく、賃金でも組合試算によると年収の7割~8割に減収されている」という。
「今後、1年入社が遅いだけで年収が300万くらい低い人も出てくる。これまで3年目で1200万だった人が900万になる、といったレベルですが」(社員)
日テレ労組は今春、新総合職の待遇改善を求めたが、会社側の回答は、夏休み付与日数(3日)を、従来の総合職並みの4日間に、1日増やしただけ。そもそも人件費のカットを最大の目的として導入した苦肉の策なので、会社側がコストアップになる要求を受け入れるはずがなかった。
◇「賃金面で破たんします」
この労使の交渉過程では、なかなか面白い議論をしている(以下、2009年4月22日の経営側との団交より抜粋)。
会社=あと30年もすれば全て同じ新総合職の社員となります。両方で採用していれば混在となりますが、今は新総合職でしか採用していません。
組合=総合職制度に関しては、この状況においてどのように会社は考えていますか。
会社=はっきり言うと、このままでは持ちません。賃金面で破たんします。
組合=人件費が圧迫しているということですか。
会社=もちろんです。
この後、組合は失敗例として他局の話を持ち出す。他局とは、もちろんTBS(
→企業ミシュラン「TBS」参照)のことである。会社側も熟知のうえだが、白々しい対話が続く。
会社=組合は昨年や今年入ってきた人が、他局よりも劣っていると思うのですか。
組合=昨年、正直今年は知らずに入ってきている人もいますが、悪い条件で優秀な人を連れてくるのが難しいのは、他局の例からも分かります。某局のタイムテーブルを見て新しいソフトが無いのは、給与を70%程度に抑えて良い若手がいないためだと聞いています。
会社=他局より人材が劣っていることが証明されたらそうします。人は育てていくものです。いつから某局はそうなっているのですか。
組合=6年ほど前からです。
会社=低迷の理由をそこに持っていくのはどうかと思います。職種別社員や年契約社員からも良いアイデアは出ています。賃金と能力が比例するものだとは思いません。自分達が新人のときと08年を比べて下さい。それは空論です。