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日本テレビ 「泥舟」の老害船長×士気下がる乗組員たち(2)

情報提供
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ここまで高い給与にもかかわらず不満だらけの会社も珍しい
 日テレは2008年度中間決算で赤字転落となった昨秋以降、制作費や人件費のカットを加速させてきた。番組制作費は、1141億円(2008年3月期実績)あったものを、2010年3月期は1000億円に減らす方針が打ち出されており、社内はカット、カットで不満が渦巻いている。コストカットの影響の一端が出たのが、報道番組「真相報道バンキシャ!」だった。2008年11月放送の番組内で、虚偽の証言をそのまま放送し、岐阜県庁の裏金づくりが続いていると誤報した責任をとって、今年3月、久保伸太郎社長が辞任した件である。
Digest
  • 「社長のしっぽ切り」で再発防止策なし
  • 縁故、情実、人質採用
  • ゼネラリストを育てる、会社員を探す
  • 制作費126億円もカット!
  • 関係会社救済のための現物支給
  • 残業は書類上、月250時間までに抑える
  • 泥船の船頭に代わりが見当たらない

「社長のしっぽ切り」で再発防止策なし

虚偽証言を見抜けなかったのは、取材にあたった制作会社から派遣されたディレクターで、記者経験はなかった。日テレの社員は現場で取材することさえなく、VTRを見ても見抜けなかった。安い下請け制作会社を使うことでコストカットを図った結果だ。バンキシャのような、低コストで高視聴率な番組はもっとも都合がよく、したがって社長が辞めたのに、番組自体は打ち切りにならずに、いまだ続いているから驚きだ。

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2ちゃんねるレベルの書き込みに熱心な日テレの社員たち(「労組から会社へのメッセージ」より)

中堅社員が解説する。「ぜんぜんまた起こると思いますよ。テレビの報道局は、TBSは400人くらいいて多いですが、他の民放は社員200人くらいで回してる。だから、番組にはプロデューサーくらいしか社員がいない。一方で、上場企業としてコンプライアンスを守るために社員は休みをとらされるので、代休消化のためプロデューサーが週3日しか出社しない、というおかしな事態も起きている」

確かに名簿を見ると、報道局には226人しか在籍していない。これで、放送時間でいうと1日あたり3時間半ほどのニュース枠を埋めている。「バンキシャ!」は報道局の担当だが、制作局や情報エンタメ局が作る番組は、さらに外部社員が多い。たとえば「おもいっきりテレビ」はスタッフ約200人中、正社員はわずか2~3人だけだという。映像取材部のカメラマンは、もちろん全て外注だ。

「正社員1,200人弱に対して、8,000人の周辺の人がいると言われています」(社員)。訓練された記者を現場に行かせるだけの人員をかかえていない(1人あたりの人件費が高すぎる)ため、安かろう悪かろうの、記者経験もない制作会社の人を使い、その結果、虚偽を見抜けず社会に迷惑をかけている構図だ。

しかも、これまでは、ほとんど消化しないのが当り前の「代休」が買い上げられ給与に加算されていたが、昨今はコスト削減のために代休を少なくとも書類上はとるよう指示されるようになり、ますます社員が現場に行けなくなっている。制作費カット、人件費カットの流れのなかで、ますます事件は起こりやすくなっているといえる。

「構造的な問題なので、人(頭数)を増やさないと問題は解決しない。今回の話は、放送業界のなかでは社長が辞めるような話じゃない。こんなの、よくあることだから。それが、たまたま重大なテーマでバレちゃっただけです。制作会社は、チェックするのは日テレの仕事だと思っているし、日テレは社員が少ないから人を割けない。だからポテンヒットになっちゃう」(社員)。表に出ない虚偽報道は日常的に行われているというのだから、あまりに危うい現場である。

辞めた久保社長も、社長とは名ばかりの、読売新聞から連れてこられた「雇われ社長」だった。氏家齊一郎議長が、社内では「氏家天皇」と呼ばれ、圧倒的な実権を握っているのは社内外で周知の事実だ。次に事件が起きても、現社長の細川知正氏が辞めさせられるだけだ。本当の責任者である氏家天皇を守るために家臣が詰め腹を切らされるという、時代錯誤がまかりとおっている。

トカゲの尻尾を切るのみで、現在も本質的な再発防止策は、何も打たれていない。報酬が半分から3分の1と言われる制作会社のスタッフに虚偽を見抜く技量を求めるのは酷だ。人件費の配分を変え、1人あたりの人件費を減らすか中高年の無駄に高い人件費を減らして、現場社員(社内)の頭数を増やす、といった解決策しか論理的にはありえないが、正社員過剰保護の日本の法制度下では、社員の理解なくしては配分の変更が難しい。

 だが、既得権を持つ既存正社員がカットを受け入れることはまず考えられない。民放労連の声明でも、実際に番組を作っている制作会社や外部からの派遣ディレクターとの数倍に及ぶ賃金格差を棚に上げ、「私たちは、視聴者の期待に応える充実した放送を支えるために放送局内で二重三重の賃金格差を生む賃金形態があってはならないと主張し続けてきた」と、利己主義丸出しのコメントを述べている。若手に人件費を配分するなど、もってのほかというところだ。

縁故、情実、人質採用

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日テレの組織図(2009年2月現在)

「テレビ局が花形だと思って入ってくる人は、たいしたことない人。将来性がない業界ですから」(社員)

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