「エコナで痩せる」信憑性揺らぐ実験データ
エコナを審議中の食品安全委員会新開発食品・添加物合同専門調査会。「ラットはやせていませんね」とサラリと報告されている。 |
- Digest
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- 発がん実験のラットはやせていなかった
- 花王は人での効果を変化率だけで宣伝
- 実験する前から体重、腹回りや内臓脂肪の量に違いが
- 長期試験でも、内臓脂肪に差はでない
発がん実験のラットはやせていなかった
発がん促進作用が問題となり、現在、安全性を再審議中の花王の健康油「エコナ」。食品安全委員会では、新開発食品と添加物の合同専門調査会で審議が続行中で、この間に行われた発がん促進作用を調べた実験の詳細が検討されている。
その審議会を傍聴していて、あることに気づいた。いずれの動物実験でも、エコナの主成分であるジアシルグリセロール(DAG)を食べさせたラットのグループと、普通の油のトリアシルグリセロール(TAG)を食べさせたラットのグループで、体重に差が出ていないのである。中にはDAGグループのラットの方が、体重が増えている実験もある。
専門委員会では、実験を行った研究担当者の人が直々に専門参考人として出席しているのだが、その研究者も「DAG油は痩せるといわれておるのですが、この試験では体重に差はありませんでした」などと、説明している。
食品安全委員会では、審議できるのは安全性だけで、効果・効能の有効性については議論してはいけない、というお約束になっている。そのため体重の変化については、それ以上議論されることはない。
確かに、これらの実験自体の目的は発がん促進作用を調べることなので、体重の変化は二次的な指標にすぎない。途中で死んでしまうラットも数多く出てくる、かなり過酷な実験なので、それだけの結果からエコナの効能がウソだとは言えない。
野生ラットを使った発ガン促進作用を調べた実験。ただ油を混ぜたえさを与えただけのラットの間でもDAGのラットが一番体重が多かった。 |
しかし実験の中には、対照群といって、発ガンが起こらないことを前提としたグループもある。そうしたグループのラットは、ただTAGかDAGの油を摂取させるだけなのだが、そこでもDAG油のラットが一番太ってしまっている。
そこで、花王が、エコナの開発に際して有効性の確認のために行った動物実験では、どういう結果が出ているのか調べてみた。国立健康・栄養研究所のホームページ掲載されている実験結果では、ラットにDAG油もしくはTAG油を混ぜたエサを4週間食べさせたものだが、飼育後3週間目および4週目で、両グループに体重の差はでていない。ただ体脂肪率だけは、3および4週目ともDAG群で有意に低下したというくらいだ。
実験中のラットはずっと成長を続けているので、成長中の体重の変化は、成人の体重変化とは違って、明らかな結果が出にくいのかもしれない。
トクホとして許可される際には、人間を使った臨床試験のデータの提出が義務づけられている。ラットは痩せていなくても、人間では効果が出ていればOKなのだ。
だが、発がん促進に関するときも問題になったのだが、花王の自社試験データなどは、比較する対照である普通の油(TAG)をさせたグループでも、ガンやその前症状が多数発生しているなど、エコナの有害性ができるだけ出にくいような実験になっていることが指摘されている。
そこで花王のホームページをチェックしてみた。
エコナの痩身効果を宣伝するためのグラフ。効果を最大限に見せるために減少率のデータしか載せていない。効果を過大評価させてしまう。 |
花王は人での効果を変化率だけで宣伝
花王のホームページでは、DAG油とTAG油を人が摂取した場合の、体重、BMI、ウエスト周囲長、内臓脂肪、皮下脂肪など変化がグラフで示されている。
これを見ると、いずれもエコナのDAG油を摂取したグループの方が、下がっているように見える。体重、BMI、ウエスト周囲、内臓脂肪などは、グループ間の差は、統計的にも有意差がでている。つまり偶然に、たまたま差がついたのではないだろうと判断されるということだ。
ただ、このグラフは変化率しか示されていない
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エコナとリセッタの実験前のグループ間の差を比べたもの。エコナの実験での不自然さがわかる。論文を元に著者作成
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