フージャース恫喝訴訟 マンション建設反対住民を沈黙させる
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こうした公的な意見表明もフージャースによる裁判で撤去することになり、ウェブサイトすら閉鎖となった。典型的なSLAPPと言える。 |
- Digest
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- 裁判外100回近くの話し合い
- 車両通行妨害で提訴
- 社員が顧客を装って隠し録音、訴訟でっち上げ
- 不思議な証拠映像
- 住民運動を分断
- 被告の1人が入院、和解に追い込まれる
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【Digest】
◇裁判外100回近くの話し合い
◇工事車両通行妨害で提訴
◇社員が顧客を装って隠し録音、訴訟でっち上げ
◇不思議な証拠映像
◇住民運動を分断
◇被告の1人が入院、和解に追い込まれる
裁判外100回近くの話し合い
訴訟の発端になったマンションは、不動産会社「フージャースコーポレーション」(本社:東京都千代田区。廣岡哲也社長)の「デュオヒルズ津田沼前原」(同市前原東五丁目。地上13階建て。107戸)。09年5月末にマンションは完成し、分譲が始まっている。

このマンション(右記)の建設計画を地元の住民が知ったのは06年7月だった。周囲は農村の面影を残すなだらかな丘陵地帯で、低層の住宅やアパートが並んでいる。用途地域は「第1種住居地域」に指定されている。建設地5060平方mも、元は京成電鉄沿いの畑だった。
同社が計画を公開した当初、地元住民はいくつかの懸念を抱いた。低層の住宅地に13階建ての高層マンションが建つことで、日照や風害、圧迫感など環境問題が発生するのではないか。マンションが建つことで生活排水が増え、雨天時に浸水が起きるのではないか。建設予定地前の市道は幅が4-5mしかないうえ、地元の子どもの通学や、通勤の自動車で、朝夕は混雑する。大型ダンプや資材運搬トラックが行き来することで事故が起きないか。

計画内容の見直し(建設そのものへの反対論は少数。6〜7階建てなら仕方がない、とする住民もいた)を求める住民側は「二宮学区の住環境を守る会」を結成し、多い時は約70人が参加していた。
「フージャース」社と工事施行会社「松井建設」をまじえた話し合いは「大小合わせると100回近くに及んだ」と住民側はいう。
06年9月ごろから周辺住民は「マンション建設反対」を表明する黄色いのぼり旗や看板をそれぞれの自宅や空き地など私有地内に立て始めた。06年11月には「開発行為(工事)を許可しないよう」求める船橋市役所へのデモが行われ、住民運動は激しさを増した。
06年12月、同市から開発許可が降り、工事が始まる。これ以降、フージャースと住民の間でたびたび紛争になったのは、ダンプや資材トラックの通行だった。「4トン積み車両で搬入してほしい」という住民側と「10トン車でないと工事が間に合わない」というフージャース側の主張がかみ合わなかったのだ。
こうして、大型トラックが幹線道路から市道に入って来ると住民側が工事現場近くの路上で抗議をする、というパターンの小競り合いが繰り返された。
車両通行妨害で提訴
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訴状。このように、ある日突然「被告」にされてしまうことに、住民はまず戸惑う。![]() |
フージャースが「共同して工事車両の通行を妨害した」という理由で1回目に住民3人を提訴した事件6件は、07年4月から7月にかけて起きた「大型トラックが通行→住民側が抗議」中の出来事に絞られている。同社は、この6件の出来事で、後述する住民3人が工事車両の通行を妨害したために工事が遅れ損害が発生した、などと主張、1000万円の損害を補償するよう、3人に求めている。
同社が訴訟の被告にした住民は、約70人の「守る会」のうちの3人に絞られている。印刷会社を営む青木修さん(62)・憲子さん(60)夫妻と、整体師の城間由岐子さん(57)だけだ。いずれも建設現場近くに住んでいる。
記者はフージャース社が「証拠」として法廷に提出したビデオ録画(フージャース社員が撮影)を全部再生して見たが、現場でのトラック運転手や社員たちへの抗議には青木夫妻や城間さん以外の住民(訴状で名前も特定されている)も加わっている場面がいくつもあるのに、3人以外は被告から外されている。
なぜ3人だけが被告にされたのだろうか。
青木さん夫妻と城間さんは「守る会」の中でも運動に熱心な3人である(同会は代表者を置いていない)。
城間さんは他のマンション建設反対運動住民グループとのネットワークに参加している。青木夫妻は、マンションの下見に来た客が必ず通るマンション入り口の向かいに私有地を持っていて、そこに建設反対の大看板や黄色ののぼり旗を多数掲げている。トラックが通る道沿いに住宅を持っているので、抗議に出てくる回数も多い。
フージャース社には「マンション建設を妨げる一番厄介な住民」と映ったようだ。訴状の中で同社は3人を「守る会の中でも率先して『過激な実力行使』を行う者たちであり、意志を通じて、妨害行動を共にしている」と記述している。
社員が顧客を装って隠し録音、訴訟でっち上げ
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顧客が「でっちあげ」であったことを準備書面で認めたフージャース![]() |
「訴訟のでっち上げ」をフージャース社が認めたのは、同社が09年2月24日に青木夫妻を被告にして1000万円の損害賠償を求めて追加提訴した2件のうち1件である
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フージャース側が出してきた証拠映像には、不可解な点が多い
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「デュオヒルズ津田沼前原」
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読者コメント
美しい景観を取り戻すのに、かような方法があったのですね!頭のいい人は考えることが違いますなあ。
私も工事妨害までは行わなかったけど、市を巻き込んで似た反対運動は行いました。
逆訴訟を起こす気が無いと言うのは・・・
そういう苦痛も込での十分な和解金を払っているんだと思います。
裁判に至っていない和解に関しては、1千万超え和解金もザラなもなのです。
でっちあげで訴訟するなんて、これだけの弱みというか大失敗をフージャースはしたのに、なぜ住民は屈服したのかね?ここを突けば裁判に勝てるのにね。弁護士がやる気なかったんだろうね。気の毒に。弁護士にも騙されたかな。
「気分悪い」は主観の範囲内で法廷では争えません。この看板、どこも法律違反じゃないって記事に書いてあるね。もしそうなら、憲法の許す「表現の自由」を行使しているだけで、違法性、不法性とも問えない。気分悪くても法廷じゃ負けるよ。なぜそれを争わなかったのかな。
気分が悪いさん、あなたフージャースの社員?「ここの住民の程度」をそこまでしっているなんて臭いよ。こんなところうろうろしてないではやく本業に戻ったら。しょせん淘汰される企業は淘汰されます。
それより、なぜ住民が有印公文書偽造(でっち上げの訴訟だったんだから)で刑事告訴しないのか不思議です。民事で反訴したって十分賠償取れるし、少なくとも本訴で巻き返して相手を負けさせるくらい裁判官の心証は悪化していたはず。弁護士の作戦がまずくて腰砕けになったのかもしれませんね。
もし記事が言うとおり、でっち上げの訴訟だったなら、それは目に見えないだけで立て看板なんか問題にならないくらいの醜悪さでマンション業者としては下の下です。
社員が顧客を装うなんて駄目でしょ。フージャスコーポレーションには法令順守という単語を知らないようですね。
画像を見ただけで具合が悪くなるなら、交渉の現場に居合わせたら即死ですね。F社の対応はマンション建設のイロハから間違っています。成田空港も裸足で逃げ出す強引さ、陰湿さ。が、何しろたかがマンション。行動決死隊を組織し全国民の注目を浴びるわけでもなく、日々の暮らしの中での消耗戦。写真は、既成運動体の手を借りずに住民一人一人が自分の意志で立ち上がり、抗議したことの片鱗かと思いますが、これも自己投影かな。
画像を見ると、余りの幼稚じみた反対運動に幻滅します。
その土地を買った時に、一生涯近くにマンションを建てない契約でも結んだんでしょうか?
企業も企業では有りますが、この地域住民のモラルの低さのありようって言ったら・・・
あんな下品な反対看板がぶら下がる道を歩く子供達がどう感じるとか考えないのでしょうか?
所詮目くそ鼻くそですね。
社会人さん色々と情報ありがとう。土地の扱いと言うのは難しいのですね。 「市街化区域外指定」と「市街化区域」について注意して見ていきたいと思います。
はあ〜さん、農業主体の地域でも、ある日突然「市街化区域外指定」が「市街化区域」に突然変更されたりますから行政情報に注意してください。船橋だってかつては農村だったのです。
じゃあどうするか?行政には「用途地域見直し」という権限があります。地元の首長(市町村長)をマンション反対派を当選させて用途地域を変えてしまうのがいいですね。でも再開発でもうける地元の商店街や不動産業者、孫請けの地元工務店なんかは全員反対します。
商業地域は古い木造商家が並んでいることが多いです。これを何軒かまとめて再開発して超高層マンション(30-50階建て前後)を建てるというパターンが最近東京じゃ多いです。人口の都心回帰現象ってのはこれですね。
「商業地域」は建ぺい率や容積率規制が緩いので、ペンシルビルがぼこぼこ建てられます。つまり「商業地域」の指定は「オフィス街にするから、この地区の住宅環境は悪くていいから」という行政の意思表示です。でも「工業地域」よりマシですけどね。
迷惑料の相場は(業者にもよりますが)直近で20-25万円、一軒離れると10万円くらいです(電波障害対策工事料などを除く)。みなさんこのくらいの金額でもゲンナマを前にすると簡単に屈服します。業者はそれも読んでます。でも一生その物件の隣で日陰で住むと、自分の家の不動産価値も下落するし、数十万円の損害ではありません。
私もこの種の反対運動に係わったことがあります。
特に商業地域では住民には日照権も何もありません。しかし業者によっては企業のイメージを壊さないためにか住民の思いを汲んで気持ちが納まるように保証金(見舞金?)を出しているところもあります。
住民は僅かな見舞金で仕方なく住環境の悪化を我慢しています。法律が変わらない限り我慢するしかありません。
社会人さん、詳しい説明ありがとう。家は農業を主体にしている所に住んでいるから都市部でこんな問題が起きるなんてビックリですね。都市部は都市部で問題があるんですね。
つまり、下記2規制はプロのマンション業者なら当然調べ尽くしてから物件を設計するので、行政にいくら「マンション建設を止めてくれ」と陳情やデモをかけても無駄です。市役所や県庁は紛争調停の強制力はありません。強制的にヤメさせるには民事訴訟で「不法性」(違法性じゃなくて)を立証するしかないです。
建築基準法を守らずに行政の「解体命令」まで出たのが例の「姉歯事件」で、実際にマンションが何件も取り壊されましたね。建築基準法違反のマンションがあるなら、あれくらいの社会的大問題になります。
ということは、上記二点の規制をクリアした建築物が建つのを行政はストップできないということです。千葉県は宅地開発による人口増と住民税収入アップで成り立っている県なので、マンション規制に消極的です。
建築基準法は香港の九龍城みたいな「違法建築」を排除するための「最低線」を決めた法律なので、建築士の資格持った人間が設計した建物ならまずこれをクリアするよう設計します。
もうひとつの規制は行政による「用途地域指定」です。記事を読むと、この問題マンションが建った場所は第一種住居地域ですから、容積率や建ぺい率は一番厳しいはずです。おそらくそれもクリアした図面を引いてから審査申請しているはずです。
行政が建設の許可を出してしまった以上あとは裁判で話し合うしかないのですか?これもまた大変な問題なんですね。
建築基準法をクリアしている建物の建築申請が出たら、行政は建築許可を止める理由がないんです。止めると逆に市役所が訴訟起こされるから、建築基準法合格はどんどん許可します。
なお、船橋市はこの問題物件完成後に「高さ規制条例」を可決したんで、この問題マンションは滑り込みセーフだったのです。
法的な問題や民生上の対応で行政の関与は如何なものだったのでしょうかね?
社員をおとりに使って証拠をでっち上げさせてまで地域住民に訴訟を起こすこの会社の業績は、138億円の最終赤字転落(2009年3月期)で、今期も赤字の見通し(会社四季報より)。大株主は廣岡社長の資産管理会社と社長自身。アーバン、ジョイント等新興カタカナ系デベロッパーによく見られるパターンである。
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