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フージャース恫喝訴訟 マンション建設反対住民を沈黙させる

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こうした公的な意見表明もフージャースによる裁判で撤去することになり、ウェブサイトすら閉鎖となった。典型的なSLAPPと言える。
 千葉県船橋市のマンション建設計画をめぐり、不動産会社「フージャースコーポレーション」が、反対運動に活発な住民3人だけに対し、通行妨害などで計2千万円の損害賠償訴訟(8事件)を東京地裁に起こしたのは07年9月(うち2事件は09年2月追加提訴)だった。裁判コストを強制された住民3人の心身の疲労は深く、09年9月1日、判決を待たずして、裁判所外での和解により、同社の要求を呑んで、反対運動ののぼりも撤去、反対運動のウェブサイトも撤去するという、憲法21条に抵触するような和解条項をのまざるを得ない状況に追い込まれた。
Digest
  • 裁判外100回近くの話し合い
  • 車両通行妨害で提訴
  • 社員が顧客を装って隠し録音、訴訟でっち上げ
  • 不思議な証拠映像
  • 住民運動を分断
  • 被告の1人が入院、和解に追い込まれる

SLAPP=Strategic Lawsuit Against Public Participation:大企業、労組、宗教団体など組織や資金などで被告より比較優位にある原告が、反対意見や批判を封じ込めるために起こす民事訴訟のこと。本件でフージャースが近隣住民の反対運動に裁判コストを負わせて公的意見表明を封じた手法はSLAPP訴訟の定義にぴったり合致する。しかも今年7月になって、8件のうち1件は、客に偽装した自社社員を「おとり」に使った「自作自演」だったことを、同社が法廷で自ら認めた。ただでさえ反社会性が強いSLAPPだが「でっち上げ」までして裁判を起こす悪質な例は珍しい。(訴状、変更申立書、和解条項は記事末尾にてPDFダウンロード可)

【Digest】
◇裁判外100回近くの話し合い
◇工事車両通行妨害で提訴
◇社員が顧客を装って隠し録音、訴訟でっち上げ
◇不思議な証拠映像
◇住民運動を分断
◇被告の1人が入院、和解に追い込まれる

裁判外100回近くの話し合い

訴訟の発端になったマンションは、不動産会社「フージャースコーポレーション」(本社:東京都千代田区。廣岡哲也社長)の「デュオヒルズ津田沼前原」(同市前原東五丁目。地上13階建て。107戸)。09年5月末にマンションは完成し、分譲が始まっている。

このマンション(右記)の建設計画を地元の住民が知ったのは06年7月だった。周囲は農村の面影を残すなだらかな丘陵地帯で、低層の住宅やアパートが並んでいる。用途地域は「第1種住居地域」に指定されている。建設地5060平方mも、元は京成電鉄沿いの畑だった。

同社が計画を公開した当初、地元住民はいくつかの懸念を抱いた。低層の住宅地に13階建ての高層マンションが建つことで、日照や風害、圧迫感など環境問題が発生するのではないか。マンションが建つことで生活排水が増え、雨天時に浸水が起きるのではないか。建設予定地前の市道は幅が4-5mしかないうえ、地元の子どもの通学や、通勤の自動車で、朝夕は混雑する。大型ダンプや資材運搬トラックが行き来することで事故が起きないか。

計画内容の見直し(建設そのものへの反対論は少数。6〜7階建てなら仕方がない、とする住民もいた)を求める住民側は「二宮学区の住環境を守る会」を結成し、多い時は約70人が参加していた。

「フージャース」社と工事施行会社「松井建設」をまじえた話し合いは「大小合わせると100回近くに及んだ」と住民側はいう。

06年9月ごろから周辺住民は「マンション建設反対」を表明する黄色いのぼり旗や看板をそれぞれの自宅や空き地など私有地内に立て始めた。06年11月には「開発行為(工事)を許可しないよう」求める船橋市役所へのデモが行われ、住民運動は激しさを増した。

06年12月、同市から開発許可が降り、工事が始まる。これ以降、フージャースと住民の間でたびたび紛争になったのは、ダンプや資材トラックの通行だった。「4トン積み車両で搬入してほしい」という住民側と「10トン車でないと工事が間に合わない」というフージャース側の主張がかみ合わなかったのだ。

こうして、大型トラックが幹線道路から市道に入って来ると住民側が工事現場近くの路上で抗議をする、というパターンの小競り合いが繰り返された。

車両通行妨害で提訴

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訴状。このように、ある日突然「被告」にされてしまうことに、住民はまず戸惑う。

フージャースが「共同して工事車両の通行を妨害した」という理由で1回目に住民3人を提訴した事件6件は、07年4月から7月にかけて起きた「大型トラックが通行→住民側が抗議」中の出来事に絞られている。同社は、この6件の出来事で、後述する住民3人が工事車両の通行を妨害したために工事が遅れ損害が発生した、などと主張、1000万円の損害を補償するよう、3人に求めている。

同社が訴訟の被告にした住民は、約70人の「守る会」のうちの3人に絞られている。印刷会社を営む青木修さん(62)・憲子さん(60)夫妻と、整体師の城間由岐子さん(57)だけだ。いずれも建設現場近くに住んでいる。

記者はフージャース社が「証拠」として法廷に提出したビデオ録画(フージャース社員が撮影)を全部再生して見たが、現場でのトラック運転手や社員たちへの抗議には青木夫妻や城間さん以外の住民(訴状で名前も特定されている)も加わっている場面がいくつもあるのに、3人以外は被告から外されている。

なぜ3人だけが被告にされたのだろうか。

青木さん夫妻と城間さんは「守る会」の中でも運動に熱心な3人である(同会は代表者を置いていない)。

城間さんは他のマンション建設反対運動住民グループとのネットワークに参加している。青木夫妻は、マンションの下見に来た客が必ず通るマンション入り口の向かいに私有地を持っていて、そこに建設反対の大看板や黄色ののぼり旗を多数掲げている。トラックが通る道沿いに住宅を持っているので、抗議に出てくる回数も多い。

フージャース社には「マンション建設を妨げる一番厄介な住民」と映ったようだ。訴状の中で同社は3人を「守る会の中でも率先して『過激な実力行使』を行う者たちであり、意志を通じて、妨害行動を共にしている」と記述している。

社員が顧客を装って隠し録音、訴訟でっち上げ

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顧客が「でっちあげ」であったことを準備書面で認めたフージャース

「訴訟のでっち上げ」をフージャース社が認めたのは、同社が09年2月24日に青木夫妻を被告にして1000万円の損害賠償を求めて追加提訴した2件のうち1件である

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フージャース側が出してきた証拠映像には、不可解な点が多い

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emiladamas2015/02/22 18:50

「デュオヒルズ津田沼前原」

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taanaka2013/05/13 09:06

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